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カエルの王子様

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「ゲコゲコゲコゲコ、ゲコゲーコ、ゲコゲーコ、ゲコゲコ」
カエルの女の子、イサコは、歌がとても上手なカエルでした。その歌声は、とてもきれいで、他のカエルたちから、ほめたたえられていました。
「ゲコゲコゲコゲコ、ゲコゲーコ、ゲコゲーコ、ゲコゲコ」
イサコは、楽しい時に歌を歌いました。そして、悲しい時に歌を歌いました。よく晴れた日に、歌を歌いました。そして、大雨の日に歌を歌いました。青空が広がる昼に、歌を歌いました。そして、星空が広がる夜に、歌を歌いました。イサコは、歌を歌うことが大好きでした。

イサコは、とある病院の、目の前にある小さな田んぼに住んでいました。イサコの歌声は、病院にいる人間たちにまで聴こえる歌声でした。病院にいる人間たちは、イサコの歌声を、あまり良く思っていませんでした。無理もありません。人間にとって、カエルがゲコゲコと歌っているのは、気持ち良いものとは、けっして言えません。
しかし、病院に入院しているアラタは、カエルの歌が好きでした。
アラタは、小学六年生ぐらいの少年でした。アラタは、生まれつき病弱で、生まれてからというもの、病院ですごすことが、ほとんどでした。アラタは、病院の外に出ることさえ、あまりありませんでした。身体の具合が悪いことが多く、外に出られなかったのです。
アラタにとって、病院ですごすことは、退屈でしかたありませんでした。そんな中、カエルの歌が聞こえてくると、アラタは、楽しい気持ちでいっぱいになりました。生まれてからというもの、退屈つづきでしかたがなく、悲しい気持ちにばかりなっていたアラタは、カエルの歌によってすくわれたのです。カエルの歌が、アラタの人生に光をかざしたのです。
「どんなカエルが、歌っているんだろう? いつか、歌を歌っているカエルに会いたいな」
アラタは、いつも、そんなふうに思っていました。

ある時、アラタは、少しの時間、病院の外に出ることをゆるされました。アラタは、めったに外に出られなかったために、うれしくてしかたがありませんでした。病院の外に出ることをゆるされたと言っても、遠出はできませんでした。あくまでも、病院のまわりを歩いて良いていどでした。それでも、アラタは、うれしかったのです。
「歌を歌っている、カエルに会いたいな」
アラタは、ニコニコしながら、カエルの歌が聞こえてくる、田んぼの方へと、むかいました。
「ゲコゲコゲコゲコ、ゲコゲーコ、ゲコゲーコ、ゲコゲコ」
もちろん、イサコは、今日も歌を歌っていました。
イサコが、歌を歌うことに夢中になっていると、人間の男の子が、近づいてきました。その男の子は、アラタでした。

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