超ショートストーリー または、随筆など

怖がられて悲しいライオン

　ある時、ライオンは思った。
「いろんな動物に怖がられて悲しい」
　ライオンは、みなに怖がられていた。たまにライオンを怖がらないものもいた。そういったものは、たいていこう言った。
「かっこいい」
　ライオンは、かっこいいと言われるのも、あまり好きではなかった。
　どちらかと言えばかわいいと言われたかった。

　ライオンは、みなに怖がられないように、たてがみを剃った。これで少しは怖くなくなるに違いないと考えた。
　ライオンは、「ガウォー」となくのをやめた。かわりに「二ャー」となくようにした。これで少しは怖くなくなるに違いないと考えた。

　それでもライオンは、やはりライオンで、みなに怖がられていた。
　ライオンは、みなに怖がられるのを悲しみながらも、寿命で死んでいった。

　さて、そのライオンの子供も、やさしいライオンで、みなに怖がられるのが嫌だった。父と同じように、たてがみを剃った。そして二ャーとないた。

　でも、やはりみなは、怖かった。

　いつしか、そのライオンも寿命で死んでいった。

　そのライオンの、さらに子供も、みなに怖がられるのが嫌だった。だから、父や祖父と同じく、たてがみを剃り、二ャーとないた。でも、やはり無駄だった。

　なん世代もの時がたった。ライオンの子供の子供のなん世代もあとの子供も、やはり、たてがみを剃り、二ャーとないていた。
　そうしたら、いつしか、そのライオンは、怖がられるようなことはなくなっていた。
　そのライオンは、みなから、こう呼ばれていた。
「ネコ」と。