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26.決意
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ノルックが戻ってこない。
「遅い…。」
お茶も飲み干して十分体も温まっている。
ノルックの“すぐ”はどれくらいなのか、今度認識の擦り合わせをしておきたいところだ。
「2人とも、今日はありがとう。もう大丈夫だから、2人も休んで。
ノルックいつ戻ってくるかわからないし、私このままここで待ってるから。」
私のせいでもうだいぶサービス残業をさせてしまっている気がして留めておくのが心苦しい。私はずっと寝てたけど、2人はずっと働き通しだろうし。
「ウチは残りますよ。さすがにミノリサマ1人にできないし。
護衛としてまだ何もできてない上にあの変態ジジィにしてやられたの悔しいんで、来たら返り討ちにしてやりたいっす!」
変態ジジィって、キュリテのことだよね。
ミィミも認識している変態って余程では。
「ありがとう。でも無理しないでね。」
ミィミの身も大事だ。
ピナさんは、ワゴンの片付けもあるので片付けがてらそのまま休んでもらうことにした。
ドアからワゴンを引いて出る姿に、魔法で移動するだけじゃないんだと新鮮に驚いてしまった。
最近ノルックの魔法に慣れすぎてるかも。
「ミノリサマにウチの実力早く見てもらいたいなー。
魔法だけならあのジジィに劣るけど、肉弾戦も含めたらウチだって対等にいけますからね。」
ノルックが認めるくらいだからミィミも凄いのかもしれないけど、目の前で笑ってる姿を見てると正直想像できない。
「ミィミが怪我したりしたら嫌だから、私はそんな時ずっとこない方がいいな。」
思わずポロリと口からこぼれた。
ふとミィミを見るとフレーメン反応した猫みたいな顔してる。
…なんか、変なこと言ったかな…?
「ただいま。」
少しだけ冷えた空気が左肩を撫でた。
左を向くとノルックがいた。
「うわっ、戻る時教えてくださいよ。」
ミィミがノルックから距離を取っている。そんなにビリビリするのかな?
手を伸ばしてノルックに触ってみると、ビリビリはしないけどひんやりと冷たい。
「こんなに冷たくなって、何してたの?!」
早く温めなきゃとかけていた布団を引っ張ってノルックにかけた。
「ほら、ここ座って。」
少しだけ中央に移動して、ノルックをベッドの淵に座らせる。
私の体温で少しはあったかいはず。
「…。」
戸惑いながらも座ってくれた。
少しでも早く温めたくて背中を摩ると、ノルックがまっすぐ伸びた姿勢のまま固まった。
「ぷぷ。モンバード様がめっちゃおとなしい。笑うんだけど。」
「黙れ。」
言葉は冷たいけど、小学生の男の子が恥ずかしがって突っぱねてるみたいで、見たことない姿に少しだけキュンとしてしまった。
ミィミも全く気にせずケラケラ笑ってる。
「で、何してたの?行き先言うって約束したのに言わないし…なかなか戻ってこないから心配したんだよ。」
横から覗き込むと、バツが悪そうな顔をされた。
「キュリテを探しに行ってた。見つけたけど、城のやつらが保護していて手が出せない。」
悔しそうに眉を寄せている。
「ミノリを傷つけたんだ。絶対に息の根止める。」
ノルックの周りでバチバチと音がし出した。ミィミが怯えて更に距離をとる。
キュリテって王宮魔術師とか言ってたから魔力はそれなりにありそうだし、どうせならノルックの代わりに働かせる方で報復したいな。大工業とか、ノルックじゃなくても良さそうだし。
「キュリテのジジィ、城に逃げ込んでるんすか?手ェ出しづらくて厄介っすね。」
ミィミが真面目な顔で考えこんだ。
「お城は、さすがに壊せないもんね…?」
助けに来てくれたノルックが、壁をぶった斬って登場したのはまだ記憶に新しい。
「…城なんて、壊れてもどうってことないけど、そうじゃなくて、ウチら養成所入った時にエライヒトに逆らえないように誓紋刻まれてるんだよね。」
ここ。とこめかみのあたりを指差す。
「陛下を傷つけたらここがぶっとぶの。ほんと最悪。」
背中から毛が逆立つようにゾワゾワした。
思わず真横にいるノルックの横髪をかき上げてみると、うっすらと小さく模様が埋め込まれていた。
「うそ…。」
気付かなかった。ノルックは魔法でなんでも済ませるし、髪を上げることもなかったから。
「これが刻まれたのはミノリに会う前だったしどうせ全員死ぬからどっちでもいいと思ってたけど、今になると動きづらくて面倒だな。」
ノルックが苛立つようにため息を吐いた。ミィミは壁を見つめている。
「ギルス族が、王命に逆らえないというのは、そのせいなの?」
ミィミが特に動揺したりしないことから、ノルックがギルス族というのは周知のよう。
「そう。ギルス族の場合、6歳で魔力診断を受ける時に強制的に刻まれる。」
人をなんだと思ってるのかこの世界は…!
全身がカッと熱くなる。
ノルックもミィミも、幼い頃からずっと国に縛られてるなんて…
「ノルック、私、諦めないから。」
ノルックの肩に手をかけて、目を合わせさせた。
「私ノルックやミィミとこれからずっと生きる未来、絶対に諦めないから!」
「遅い…。」
お茶も飲み干して十分体も温まっている。
ノルックの“すぐ”はどれくらいなのか、今度認識の擦り合わせをしておきたいところだ。
「2人とも、今日はありがとう。もう大丈夫だから、2人も休んで。
ノルックいつ戻ってくるかわからないし、私このままここで待ってるから。」
私のせいでもうだいぶサービス残業をさせてしまっている気がして留めておくのが心苦しい。私はずっと寝てたけど、2人はずっと働き通しだろうし。
「ウチは残りますよ。さすがにミノリサマ1人にできないし。
護衛としてまだ何もできてない上にあの変態ジジィにしてやられたの悔しいんで、来たら返り討ちにしてやりたいっす!」
変態ジジィって、キュリテのことだよね。
ミィミも認識している変態って余程では。
「ありがとう。でも無理しないでね。」
ミィミの身も大事だ。
ピナさんは、ワゴンの片付けもあるので片付けがてらそのまま休んでもらうことにした。
ドアからワゴンを引いて出る姿に、魔法で移動するだけじゃないんだと新鮮に驚いてしまった。
最近ノルックの魔法に慣れすぎてるかも。
「ミノリサマにウチの実力早く見てもらいたいなー。
魔法だけならあのジジィに劣るけど、肉弾戦も含めたらウチだって対等にいけますからね。」
ノルックが認めるくらいだからミィミも凄いのかもしれないけど、目の前で笑ってる姿を見てると正直想像できない。
「ミィミが怪我したりしたら嫌だから、私はそんな時ずっとこない方がいいな。」
思わずポロリと口からこぼれた。
ふとミィミを見るとフレーメン反応した猫みたいな顔してる。
…なんか、変なこと言ったかな…?
「ただいま。」
少しだけ冷えた空気が左肩を撫でた。
左を向くとノルックがいた。
「うわっ、戻る時教えてくださいよ。」
ミィミがノルックから距離を取っている。そんなにビリビリするのかな?
手を伸ばしてノルックに触ってみると、ビリビリはしないけどひんやりと冷たい。
「こんなに冷たくなって、何してたの?!」
早く温めなきゃとかけていた布団を引っ張ってノルックにかけた。
「ほら、ここ座って。」
少しだけ中央に移動して、ノルックをベッドの淵に座らせる。
私の体温で少しはあったかいはず。
「…。」
戸惑いながらも座ってくれた。
少しでも早く温めたくて背中を摩ると、ノルックがまっすぐ伸びた姿勢のまま固まった。
「ぷぷ。モンバード様がめっちゃおとなしい。笑うんだけど。」
「黙れ。」
言葉は冷たいけど、小学生の男の子が恥ずかしがって突っぱねてるみたいで、見たことない姿に少しだけキュンとしてしまった。
ミィミも全く気にせずケラケラ笑ってる。
「で、何してたの?行き先言うって約束したのに言わないし…なかなか戻ってこないから心配したんだよ。」
横から覗き込むと、バツが悪そうな顔をされた。
「キュリテを探しに行ってた。見つけたけど、城のやつらが保護していて手が出せない。」
悔しそうに眉を寄せている。
「ミノリを傷つけたんだ。絶対に息の根止める。」
ノルックの周りでバチバチと音がし出した。ミィミが怯えて更に距離をとる。
キュリテって王宮魔術師とか言ってたから魔力はそれなりにありそうだし、どうせならノルックの代わりに働かせる方で報復したいな。大工業とか、ノルックじゃなくても良さそうだし。
「キュリテのジジィ、城に逃げ込んでるんすか?手ェ出しづらくて厄介っすね。」
ミィミが真面目な顔で考えこんだ。
「お城は、さすがに壊せないもんね…?」
助けに来てくれたノルックが、壁をぶった斬って登場したのはまだ記憶に新しい。
「…城なんて、壊れてもどうってことないけど、そうじゃなくて、ウチら養成所入った時にエライヒトに逆らえないように誓紋刻まれてるんだよね。」
ここ。とこめかみのあたりを指差す。
「陛下を傷つけたらここがぶっとぶの。ほんと最悪。」
背中から毛が逆立つようにゾワゾワした。
思わず真横にいるノルックの横髪をかき上げてみると、うっすらと小さく模様が埋め込まれていた。
「うそ…。」
気付かなかった。ノルックは魔法でなんでも済ませるし、髪を上げることもなかったから。
「これが刻まれたのはミノリに会う前だったしどうせ全員死ぬからどっちでもいいと思ってたけど、今になると動きづらくて面倒だな。」
ノルックが苛立つようにため息を吐いた。ミィミは壁を見つめている。
「ギルス族が、王命に逆らえないというのは、そのせいなの?」
ミィミが特に動揺したりしないことから、ノルックがギルス族というのは周知のよう。
「そう。ギルス族の場合、6歳で魔力診断を受ける時に強制的に刻まれる。」
人をなんだと思ってるのかこの世界は…!
全身がカッと熱くなる。
ノルックもミィミも、幼い頃からずっと国に縛られてるなんて…
「ノルック、私、諦めないから。」
ノルックの肩に手をかけて、目を合わせさせた。
「私ノルックやミィミとこれからずっと生きる未来、絶対に諦めないから!」
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