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正式な裁判

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「しかし…発言の真偽を確認するには、正式な裁判を行わなければならない。
正式な裁判は貴族令嬢にとっては耐え難いことであろう。
非道な行為だけでなく日常生活まで白日のもとに晒されてしまうのだから。
私はオリヴィアのために敢えて裁判を通さず、王家の権限で断罪しようと考えているのだ。
どちらにせよ、オリヴィアがシエンナ嬢に卑劣な行いをしていたことは明白なのだ。
わざわざこれ以上オリヴィアを咎める必要はないだろう。
オリヴィアにとってもその方がよいであろう?
これは元婚約者としての情けだ」

正式な裁判を行うなら裁判魔術師に記憶を確認してもらい、再現魔法をかけてもらわなくてはならない。
再現魔法をかけると、被告人のこれまでの人生すべてを記録した媒体が作成され、裁判の証拠として王家に保管されることになる。
生まれたときから今までの人生、トイレやお風呂など日常生活の様子などなにからなにまで他人である裁判魔術師のもとに丸裸になってしまうのだ。
そのため正式な裁判をせず、証拠と証人のみによる簡易裁判が行われることがほとんどだ。
貴族令嬢で正式裁判を希望したものはいない。

「そうですね、さすがに正式な裁判はご令嬢にとっては酷でしょう」
アランが顎に手をあてて小さく頷いている。

ーそうですわね。記憶を確認されたら、真偽に関わらずもう貴族令嬢としてはいられないでしょう。
ー家族以外の方に生活を見せるなどはしたない真似はできませんもの。
ー記憶を確認されるぐらいなら、大人しく罪を認めて罰せられた方がマシだわ。どうせ死ぬわけではないのだから。

会場では正式な裁判と聞いて、否定的な声が上がっている。
私が正式な裁判を拒否すると思ったのだろう。
シエンナも王子の横で余裕そうな顔を浮かべている。

(国外追放でも生きていられるなら、簡易裁判を選んだでしょう。
でも、これまでの証拠と証言では簡易裁判をしたところで私の罪は覆らないでしょう。
この断罪と同じように国外追放されてしまうに違いない。
私はどうせ死ぬ運命なの。
人生を丸裸にされることなんて怖くないわ)

「殿下、お心遣い感謝いたします。ですが、私は正式な裁判を希望します。裁判魔術師を呼んでください」
私は王子の目をまっすぐに見て伝えた。

「なっ」
シエンナが王子の横でわなわなと震えていた。
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