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おみねは、喜助と一緒になった。
まるで、男と一緒になるために息子を捨てたようで、居た堪れなかった。
寂しさを忘れるため、そして清太郎への懺悔のつもりで、一生懸命働いた。
そのうち、「鶴久屋」に笑顔のいい女中がいると、おみねは評判になった。
夫の喜助も、板場を任せてもらえるようになった。
おみねが三十五になった年だ。
「鶴久屋」の主人が隠居することになった。
子どものいなかった彼は、自分の子どものように可愛がっていた喜助とおみねに店を譲った。
店の女房となったおみねは、それまで以上に一生懸命働いた。
それから五年間、景気がいいときも悪いときも、必死で働き続けてきた。
清太郎のことは、どうなったか分からない。
ただ、あの鏡は一年もしないうちにおみねの許に返された。
理由は分からなかったが、このとき初めて、おみねは親の気持ちを知った。
―― 辛いんだ。
子どもを手放さなきゃならない親は辛いんだ。
おとっつぁんやおっかさんも、辛かったんだ。
なのに、あたしは自分のことだけ考えて………………
その日、おみねは鏡を抱いて泣いた。
まるで、男と一緒になるために息子を捨てたようで、居た堪れなかった。
寂しさを忘れるため、そして清太郎への懺悔のつもりで、一生懸命働いた。
そのうち、「鶴久屋」に笑顔のいい女中がいると、おみねは評判になった。
夫の喜助も、板場を任せてもらえるようになった。
おみねが三十五になった年だ。
「鶴久屋」の主人が隠居することになった。
子どものいなかった彼は、自分の子どものように可愛がっていた喜助とおみねに店を譲った。
店の女房となったおみねは、それまで以上に一生懸命働いた。
それから五年間、景気がいいときも悪いときも、必死で働き続けてきた。
清太郎のことは、どうなったか分からない。
ただ、あの鏡は一年もしないうちにおみねの許に返された。
理由は分からなかったが、このとき初めて、おみねは親の気持ちを知った。
―― 辛いんだ。
子どもを手放さなきゃならない親は辛いんだ。
おとっつぁんやおっかさんも、辛かったんだ。
なのに、あたしは自分のことだけ考えて………………
その日、おみねは鏡を抱いて泣いた。
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