幽霊、笑った

hiro75

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 おみねは、雨音を聞きながら夜具の中で何度も寝返りを打った。

 眠れなかった。

 あることが、彼女の心を捉えて放さない。

 それは、幽霊であり、鏡であり、若様である。

 ―― 若様は、あの風呂敷の中身を見るだろうか?

    もしあの鏡だと知れば、どう思うだろうか?

    いや、それは若様が、あの子だとしたらという話だ。

    まだ、若様があの子と決まったわけではない。

    でも、あの幽霊の話は、あの子でないと………………

 あの子とは、おみねの子をいった。

 おみねには、十七で産んだ息子がいた。

 訳あって手放したが、若様は自分の息子ではないかという思いが、おみねの心を捉えて放さなかった。

 おみねも、若様と同じ幽霊話を持っていたのである。

 ―― そうだよ、あの幽霊話は、あたしの子でなきゃできないよ。

    そうだよ、若様は、あたしの子に違いないんだよ。

    ああ、なんでこんなところで………………

 とてん! 

 とてん!

 雨垂れが、軒先の石を打つ。

 おみねの心にも、冷たい雨垂れの音が響き渡った。
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