法隆寺燃ゆ

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第一章「宿命の子どもたち」 後編

第8話

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 十二月十三日、大王の葬礼が執り行われ、その八日後、滑谷岡に埋葬された。

 ここに、先の大王に関する全ての行事が終わり、年明けに山背大兄の即位に向けての重臣会議が執り行われる運びとなった。

 埋葬が終わったその夜、常陸国鹿島ひたちくのくにかしまへ赴くことになった中臣鎌子のため、蘇我入鹿は別れの酒宴を開いた。

 二人は飲んだ。

 鎌子はもともといける性質なので、すいすいと杯を空けていくのだが、下戸の入鹿もこの日は鎌子に負けじと飲んだ。

 そして気付いた時には、夜もすっかり更けていた。

「いや、すっかりお邪魔してしまって」

 鎌子は、玄関先で帰り支度をした。

「とんでもありません、こちらも楽しい時間を過ごせました」

 蝦夷は、油皿を持って見送りに出て来た。

「そこまでお送り致しましょう」

 蝦夷は、鎌子を外へと促した。

 飛鳥の里は、しんと冷えている。

 しかし、いまの二人には心地よい。

「今日は飲みましたね、たらふく飲んだ」

「本当に。私も、こんなに飲んだのは初めてですよ」

 二人の吐く息は白い。

「葬礼も終わって、次は山背大兄の大王への即位式ですね」

「ええ、重臣会議で決まればですが」

 門に向かって歩いていた鎌子の足が止まった。

「中臣殿、どうかなされましたか?」

 入鹿は振り返り、聞いた。

「その重臣会議ですが、兄も、兄の枚夫ひらふも出るのですよね?」

「そうでしょうね」

「蘇我殿、その会議、気を付けられた方が良いと思います」

 鎌子は、彼には珍しく深刻な顔をしている。

 先までの赤らんだ顔は、いまは夜の寒さからか、それともことの深刻さからか、元の顔に戻っていた。

「なぜですか?」

 入鹿の顔も真剣になった。

「兄は……、兄は何かを企んでいるようです」

「何かと言うと?」

「それは……、ただ、最近、兄は大鳥殿の屋敷に赴き、軽様や馬飼うまかい殿(大伴長徳連おおとものながとこのむらじ)と、夜遅くまで何事か相談をしているようで」

「それは興味あるお話ですね。どんな相談をなさっているのかご存知ですか?」

「恐らくは、大后様の件だと思うのですが………………」

「そうですか……」
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