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第三章「焼き味噌団子」
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「まあ、では、お七さんの一件には、その生田庄之助という御旗本が絡んでおりますの?」
源太郎にお酒を注ぎながら、多恵は尋ねた。
「いや、絡んでいるかどうかは分からん。ただ、お七が正仙院に身を寄せていたひと月の間は関係があったようだ」
「でも、秋山様は関係しているのではと?」
「あいつの勘だが、その勘も馬鹿にはならん」
源太郎はぐっと杯を空け、酒の肴の浅蜊の蒸し焼きに箸を伸ばす。
「お七さん、その生田様という方を好いていらっしゃったのね」
多恵が、ぼそりと呟いた。
「なぜそう分かる?」
多恵は小首を傾げ、しばし考えたあと、口を開いた。
「女の〝勘〟ですわ。あら、もうお酒が。もう少し召し上がりますか?」
源太郎は、浅蜊の蒸し焼きを見る。
まだ半分は残っている。
酒なしで食べるには、ちと勿体ない。
「頼む」
源太郎の言葉に、多恵は勝手へと下がって行った。
源太郎は浅蜊を口に運ぶ。
磯の香が口の中に広がる。
咬むと肉汁がどろっと出てきて、美味かった。
が、じゃりという音に口が止まった。
「女の〝勘〟か。女は……、よく分からん」
口の中に苦味が広がった。
源太郎にお酒を注ぎながら、多恵は尋ねた。
「いや、絡んでいるかどうかは分からん。ただ、お七が正仙院に身を寄せていたひと月の間は関係があったようだ」
「でも、秋山様は関係しているのではと?」
「あいつの勘だが、その勘も馬鹿にはならん」
源太郎はぐっと杯を空け、酒の肴の浅蜊の蒸し焼きに箸を伸ばす。
「お七さん、その生田様という方を好いていらっしゃったのね」
多恵が、ぼそりと呟いた。
「なぜそう分かる?」
多恵は小首を傾げ、しばし考えたあと、口を開いた。
「女の〝勘〟ですわ。あら、もうお酒が。もう少し召し上がりますか?」
源太郎は、浅蜊の蒸し焼きを見る。
まだ半分は残っている。
酒なしで食べるには、ちと勿体ない。
「頼む」
源太郎の言葉に、多恵は勝手へと下がって行った。
源太郎は浅蜊を口に運ぶ。
磯の香が口の中に広がる。
咬むと肉汁がどろっと出てきて、美味かった。
が、じゃりという音に口が止まった。
「女の〝勘〟か。女は……、よく分からん」
口の中に苦味が広がった。
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