翡翠堂の店主

結城 鈴

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 土曜日。朝から霧雨が降っていて、将典と、将典の車で、実家に帰ることになった。
今日の将典は、チャコールグレーのスーツに、銀杏色のネクタイを締めて、パリッとしている。髪もきちんとセットされ、なんともカッコ良かった。
ナビに住所を入力していると、途中で将典が、あれ?と声を上げた。
「どうしたの?」
「これ、俺の家と近いかも。」
「え?じゃぁ、僕が将典さんの最寄り駅まで行った方がよかったですね。そこから歩きの距離です。」
「だね。近くにマンションあるでしょ?あそこに部屋を借りてます。」
「ほんとに近くだ。」
将典に無駄足を踏ませてしまい、申し訳ない気持ちになる。
今度の時は、自分が電車で将典の最寄まで行かなくては。
「なんかすみません、。わざわざ来てもらったのに。」
「いいよ。実家近いなら、話しの流れで実家に帰ることになっても、俺の部屋に遊びにこられるね。」
ラッキー、と将典は前向きだ。
「父は翡翠堂で生まれたので、成人するまではここに住んでたみたいです。だから、結婚しても、行き来しやすいようにって、沿線に家を買ったようで。」
「そうなんだ。親思いだね。」
「いえ。いずれは同居をと考えていたようですが、その前に二人とも亡くなってしまったので。」
「長男なんだよね?」
やっぱり責任感が違うなぁと、将典はため息する。
「親の介護問題って、今は社会問題だからね。」
「・・・将典さんのご両親は?」
「親父が、一年くらい前に脳梗塞で倒れて、麻痺があって。
母が、施設利用しながら兄嫁と介護してるよ。」
「そうだったんですか・・・。お嫁さん、お子さんもいるのに、大変そう。」
「うん。だから、利用できるものは何でも利用してって、金銭面の支援はしてる。俺にできるのはそれくらいだから。」
それをしてるんだから、十分だと思うのに、将典は少し申し訳なさそうにしている。
「それより手土産どうしようか。」
「僕に手土産は要求しないだろうけど。将典さんどうします?」
「うーん。甘いものでいいならケーキかな。駅前の。」
「あぁ。父も母も喜びます。あそこのチーズケーキ大好きだから。」
「じゃぁホール買いしよう!決まりね!」
滑らかに車を走らせて、まずはケーキ屋に向かうようだった。
途中ケーキ屋に寄り道し、花田家に向かう。将典は、機嫌よさげに運転していた。
「将典さんって、運転好きですよね。普段電車通勤なのにもったいないって思ってたけど。」
「うん?維持費?」
「うん。駐車場代すごかったから。」
将典は、一時停止を止まって、住宅街の方にナビを頼りに進みながら、まぁこの辺の相場だから仕方ない。とぼやいた。
「庭をつぶすのは忍びないけど、駐車場は欲しいなって思ってるよ。」
「ですよね。その分、少しでもローンの返済に回したいですよね。」
「うん。」
庭は諦めて、軽量鉄骨の現代風な三階建ての家。一階には翡翠堂と、駐車場。ぼんやり想像しているうちに、車は家についた。家の駐車場に入れて、ケーキを持って車を降りる。
「ただいまー!」
インターホンを押して呼びかける。ほどなく玄関が開いた。
「未知ーお帰りなさい!樺山さんこんにちは。」
玄関口に、両親と妹の未来まで集まってきている。
「ちょっと。上がれないよ。」
「お邪魔します。」
後から、将典がひょこっと顔を出す。
「樺山さん、よく来てくれました。どうぞどうぞ。」
父が中へと誘導する。
「未来、これ樺山さんから。切り分けて?僕も食べたいから。」
「はーい。」
未来にケーキを渡し、中へと入っていく。LDKのソファーへと促され、なんとなく将典と並んで座っていると、お兄ちゃんはお茶入れて、と未来の声がした。仕方なしに立ち上がると、将典がクスクスと笑った。
「賑やかでいいですね。」
「そうですね。女の子はいた方がいいですよ。」
父が、将典にそう答えるのを聞きながら、お湯を沸かす。
「なら、やっぱり僕が家を出るよ。未来が後継いだらいいじゃない。」
やかんを母に任せて、ソファーへと戻る。
「お前、このうちはいらないのか?」
「未来にあげるよ。僕は、将典さんと暮らす。」
とん、と将典が肘でわき腹をつついた。
「お兄ちゃんの彼氏、イケメン過ぎて目の保養だわ。」
言いながら、未来がケーキを乗せた皿を運んでくる。テーブルに並べて、ちら、と将典を見た。
「お兄ちゃんずるい。」
「か、彼氏なのか!?」
父が、聞き捨てならないと声を上ずらせる。
「違うの?」
と、未来が満面の笑みで聞いてくる。
「えっとー・・・。今のところ、とても親しいお友達?」
言って上目遣いに将典を見る。将典は、正解と笑った。
「今の・・・ところ?」
「えっ?まさかお父さん偏見あるの?」
未来が決めつけた物言いで、父を攻める。
「いや・・・いやいや、まて。未知?樺山さんとそういう関係なのか?」
「一緒に住むのよ?わかってあげなきゃ。ねー?」
と母に向かって同意を求める妹。
「孫の顔も見てみたかったけど、しょうがないわよね。」
母もやたらとおおらかな返事をする。
どうやら、この場で父を丸め込む作戦を、女性二人で練っていた節がある。これは利用させてもらった方がいいのでは?
将典を伺うと、肩を震わせて俯きがちに笑っていた。
「将典さん・・・。」
呼ぶと、将典は、目元を拭い、真面目な顔を作った。
「お父さん。未知君を、私にください。」
「は?・・・え?・・・冗談だろう?」
ぽかんとする父を差し置いて、女性二人はキャーキャーと盛り上がっていた。
「一緒に住むことを許してくれますか?」
「いや。住むのは別に・・・。え?本気なのか?」
住むのは別にいいんだ・・・。
突っ込んでいいのかわからず、とりあえずやりとりを見守る。
「本気です。そのご挨拶は、また日を改めてきちんとしますが。今日はとりあえず、あの土地を私に売るという念書をいただきたくて来ました。」
「あ、あぁ・・・。」
父は、将典に気おされたのか、挙動不審になりながら、何とか返事を絞り出した。
 
 せっかく近くまで来たのだからと、将典の家に招待されることになった。
雨の止んだ、昼過ぎ。駐車場に車を停めて、マンションまでを歩く。この辺では比較的大きなマンションだった。その五階に将典の部屋はあるという。エレベーターのエントランスで、将典がふーとため息した。
「どうかしました?」
「いや。念書も書いてもらったし、未知をもらいに行く下準備はできたみたいだし・・・。今日は大収穫だったなって。
それでこれから、俺の部屋に連れ込んじゃうわけでしょう?
もう理性もたないなーと思って。」
「えっ?もしかして、これから?」
「いただきます。」
将典は宣言して、やってきたエレベーターに乗った。ついていきながら、ついにか、と思う。
あ、でも・・・。
「将典さん、アレ、持ってきてないですよ?」
「あります。言ったでしょ?いつでもあわよくば狙ってるって。準備はできてます。」
カーッと顔が熱くなる。
「準備・・・できちゃってるんですか・・・。」
「もちろん。いつ連れ込んでやろうかと、ずっと考えてたから。ご両親にも挨拶済ませたし、もう今日が初夜でいいよね?もう待てない。」
待てない。とはっきり言うからには、待つつもりはないのだろう。少し怖いが・・・。
ポーンと音がして、エレベーターが止まる。降りてみたものの、一歩が踏み出せなかった。その背中を、将典が宥めるように撫でる。
「怖い?」
「うん。・・・少し。」
痛いことをするのだ。怖くないわけがなかった。
「大丈夫。優しく抱くよ。」
将典は、手を引くと、フロアの奥にあるドアへと向かっていった。
中に入ると、玄関は広く、奥へ廊下が伸びていた。左手側に、いくつかの引き戸。その一つを、将典が開けた。トイレだ。
中の棚から、浣腸を取り出すと、手渡される。
「ごめん。すぐ抱きたいから。・・・お風呂の支度してくるね。一緒に入ろう。」
将典はそう言うと、そっと引き戸を閉めて出て行った。覚悟を決めて、渡された浣腸を使う。コツは掴んだつもり。薬液を入れて、我慢できなくなるまで耐えた。徐々におなかが痛くなってくる。でもまだ我慢。もう限界、のところまで我慢して、おなかの中をきれいにする。
「はぁー・・・。」
お風呂一緒も恥ずかしい。恥ずかしいことだらけだ。
から、と引き戸を開けて、廊下に出る。すると、将典が奥のドアを開けてやってきた。部屋着に着替えて、ラフな格好をしている。スーツがあんまり似合っていたので、少しがっかりした。
「まだお腹痛いだろう。おいで、撫でてあげる。」
手を引かれて、リビングに入った。大きなソファーが置いてある。そこに座らされ、隣に将典が座った。シャツをたくし上げられ、将典の温かな手が、直にお腹をさすってくれる。
気持ちよくて、されるがままになっていると、将典が、ふふと笑った。
「そのままリラックスできてるといいなぁ。無理だろうけど。」
「思い出させないで・・・。」
「できるだけ気持ちよくしてあげるから、怖がらないでいいよ。大丈夫。」
なでなでとお腹をさすられて、奇妙な気持ちになってくる。
これから苦痛を与えるであろう将典が、おなかの痛みを取り去ってくれる。そのことが、なんだか嬉しいような気持ちにさせていた。
そのまましばらく撫でられていると、どこからともなく軽快な電子音のメロディーが流れてきた。お風呂が沸きました、と言っている。
「さて、お風呂入ろうか。トイレはもう大丈夫?」
「うん。」
「未知は頑張り屋さんだなぁ。」
えらいえらいと頭を撫でられる。そのまま、手を引かれて脱衣所へと連れていかれた。
「未知の着替え、用意してあるから、それ洗濯しても大丈夫だよ。」
それ、と着ていたシャツを指される。じゃぁ、とランドリーバスケットに入れた。将典が脱いだと思われるワイシャツが入っていた。
将典の前で、全部脱ぐのは初めてではなかったが、恥ずかしい。
しかもこんなに明るいうちから。恥ずかしくて、鏡に映った自分は耳が真っ赤だった。
「未知、可愛い。さ、入ろうか。」
風呂場の引き戸を開けると、大きなバスタブ。思わず、わーと声が出た。
「広いでしょう。本当はファミリー向けの物件なんだ。子供二人くらいと一緒に入れる設計。」
なるほど、と頷く。
「立て替えたらこれくらいのお風呂欲しいよね。」
将典は上機嫌だ。シャワーでざっと汗を流すと、どぼんと湯船に入った。自分は、シャワーを浴びて、ボディーソープを借り、体を洗う。
「手伝おうか?」
「えっ?」
「背中流してあげるよ。」
将典がおいで、と手招く。湯船に向かって背を向けると、将典はボディーソープの泡をたっぷり手に取って、背中を洗った。その手が下に伸びる。ハッと思った時には、秘部に指が滑っていた。
「あっ。やだ。」
「大人しくしてないと指入っちゃうよ?」
立ってごらん、と立たせられ、後から袋やペニスを洗われた。
ぬるぬるして気持ちいい。将典の手には、慣れることなくいつでも快感があった。シャワーで流される頃には、敏感になってしまっていて、水滴が当たるのにびくびくと腰が引けてしまった。何とか泡を流すと、はいってな、と将典が入れ違いに体を洗いに行く。その様をじーっと見ていると、洗いたい?と問われた。
「背中?」
「未知の中に入るとこ。」
ゴムはするけど、と将典が笑う。
躊躇したが、自分はしてもらって気持ちがよかったし、としてみることにした。浴槽から上がる。
「未知、意外と積極的。」
「だって、気持ちよくしてもらったら、お返ししたいし。」
ボディーソープを手に取り、泡立てていると、将典が嬉しそうに微笑んでいた。期待にか、将典のそこは少しだけ兆している。それを手に取って、将典がしてくれたように、やわやわと撫でしごいた。丹念に洗っていると、将典がふーっと息を吐く。
「未知、もういいよ。ありがとう。」
「きもちい?」
「この場で入れたくなるくらい。」
将典はくすくす笑うと、すっかり立ち上がった性器と体をぬるめのシャワーで流し、バスタブに戻ってきた。足を絡ませて風呂を楽しむ。どちらともなく、キスをした。舌を絡め、はふはふとおぼれそうになりながら息継ぎをし、将典の舌を味わう。
気持ちいい。
キスに夢中になっていると、いつの間にか将典が股間に手を伸ばしていた。捕まえらえて、ひゃんと現実に戻される。
「あ、あんまりいじらないで。」
「どうして?」
「・・・腰が抜けちゃいそう。」
将典はしょうがないなと微笑むと、手を引いてバズタブから引っ張り出し、脱衣所へと連れ出した。頭をわしわしとタオルで拭かれ、バスローブを羽織らされる。なぜかサイズがぴったりだ。
「将典さん、これ、僕の?」
「そうです。ふわふわでしょう?」
柔らかくて着心地がいい。将典もバスローブを羽織り、櫛で髪を整えていた。それが終わると、自分の頭を整えてくれる。
「さてじゃぁ、行きますか。ベッドルーム。」
導かれるまま、ついていく。下着は着けていない。これを脱いだら、また裸だ。
寝室は、グレーとブルーで構成されていた。将典が遮光カーテンを閉める。ベッドに上がるように言われ、広いそこにおずおずと乗りあがった。バスローブだけでは心もとなくて、将典の匂いのする布団に潜り込んでいると、そっと取り上げられて、床に落とされてしまった。
「明かりどうする?」
「あ・・・お任せします。」
「じゃぁ、顔が見えるくらいで、ね。痛がってる顔見たいから。」
大事なバージンだもんね。目に焼き付けておきたい。と、将典が、少しトーンを落とした声音で囁いた。
「未知、大丈夫?後悔・・・しない?」
「そんなの、してみないと分からないです。すごくすごく痛かったら、ちょっとは後悔するかも。」
「じゃぁ、うんと良くしてあげないとね。」
将典が、バスローブをはだける。あらわになった胸の突起に指を這わせた。
「んっ?」
撫でたりさすったりして、立ち上がったそこを、爪の先で引っかかれる。すると、じわっと腰の奥がうずいた。
「んん・・・っ。なんか、変な感じ・・・。」
「腰に響く?」
「うん・・・。」
「欲しがってるのかな。」
弄ってあげようね。と、将典はどこからともなくローションのボトルを取りだした。とろ、と手に取って、手指と秘部を濡らす。もみこむように動いていた指先が、つーっと中に潜った。とたん、背骨を駆け上がる不思議な感覚。
「あー・・・っ。」
「痛い?」
「・・・ぞくぞくするっ。」
半泣きになりながら、シーツをきゅっと握りしめる。痛みも違和感もなく、ただただ気持ちいい。きゅうっとそこが将典の指を食い締めた。
「こら、動かせないだろ。」
「っは・・・だって・・・。」
ヌルヌルする感覚が、たまらなくて、もじもじと腰を振る。
「気持ちいいの?」
「・・・うん・・・。」
ひくん、とペニスが揺れる。指を含まされて萎えなかったのは初めてだった。むしろ、嬉しそうにお腹を濡らしている。
「乳首と一緒に弄るのが好きかな?」
将典が手を伸ばして、乳首に触れた。じわぁっと快感が広がる。また、きゅうんと秘部が収縮した。
「あん・・・。だめ・・・。そこだめ。」
「気持ちよさそう。」
「んんっ。」
中の指が、浅いところを出入りする。そのたびに、感じるところに触れて、ペニスがピクンピクンと反応した。
「あぁぁ・・・っ。」
眉根を寄せて首を振っていると、将典が乳首への愛撫をやめて、ペニスに顔を近づけた。そしてそのまま、濡れた先端をぺろーっと舐めた。
「ひゃぁぁん・・・。」
あまりにも気持ちがよくて、おかしくなりそうだった。
「だめ・・・なんか。イっちゃいそう・・・。」
「おっと。それはダメだな。」
将典は口を放すと、秘部の指を引き抜き、今度は二本含ませた。
「トロトロだね。すんなり入る・・・。やわらかい。未知、えらいね。薬ちゃんと使ってたんだ?自分で指、入れてみたりした?」
「し、しないよっ・・・薬は塗ってたけど・・・。そんなに違うの?」
「全然違う。今日は二本で慣らして・・・気持ちよくなれそうなら、入れるね。」
くぷぷ、と音を立てて、二本の指で中を圧迫する。
「んぁぁぁっ。」
声を上げると、将典がまた、ペニスに口づけた。蜜を吸うように、舌先で弄られ、唇で吸われる。両方の刺激に、声がとめどなく漏れる。イきたいのに、絶頂が近づくと、将典が根元をきつく握るのだ。
「あっやだぁ。もう、もう・・・。」
「痛くない?」
コクコク頷く。そこに、将典の薬指が差し込まれた。ぐっと開かれた感覚に、腰が引ける。
「あ?や・・・だ、入れないって言ったぁ・・・。」
「痛みは?」
「ん・・・前ほどじゃない・・・けど。」
すると、将典は含ませていた指をすべて抜いた。腰を進めると、自身のペニスを、腹の上で揺れているそれに合わせて、ぬるぬるとしごいた。将典のモノがテラテラと光るほど濡れている。熱い。薄い粘膜どうしが擦れる奇妙な感覚に、しかし快感が大きい。
「イっちゃう・・・。」
悲鳴を上げると。将典がまた快感を取り上げた。そして、ゴムを取り出すと、するするとつけて、ローションを塗った。
ひたり、と秘部にあてがわれる。
「未知、息は止めないで、なるたけ力抜いてて?」
できる?と問われ、ふーっと息を吐いて見せる。
「いい子だ。」
グッと、圧がかかる。じり、と先端が潜り始めた。
「熱い・・・。」
「ん。」
広げられてゆく感覚が怖くて、シーツをひっかく。掴んだそれを握りしめていると、そっと将典の手が指を解いた。
「手、俺の腕掴める?」
体の両脇で、自身の体重を支えている腕に、恐る恐る捕まってみる。
「爪、立ててもいいから。あと、声、出して大丈夫だからね。
いくよ?」
頷いたのが早かったか、その激痛はおとずれた。
「っあ!あぁぁぁっ!」
そこが、先端を飲み込んだのだと分かるまで、時間がかかった。ぎり、と将典の腕に爪が食い込む。
「いた・・・いたいっ、あぁ!」
将典は、動かずに、こちらをじっと見ていた。涙目になって、将典を見上げる。
「む、り・・・。いたいぃ。」
「大丈夫。・・・太いとこ入っちゃったからね。大丈夫だよ。もう少しだけ入れさせてね。そしたら、いいとこだから。」
じりじりと将典が腰を進める。あまりにもの激痛に、涙がぽろぽろと溢れた。
「やだ、うごくのやだ・・・。待って、痛い!」
「このへん、かな。」
将典が進めるのをやめる。先端が、前立腺を強く押していた。痛みと、じわっと広がる快感に、わけがわからなくなる。
「ぬいて・・・。」
懇願するが・・・将典は聞かない。
「今動くと痛いから。馴染むの待って。」
馴染む?
言いながら、将典が小刻みに腰を揺らし始めた。
「やだ・・・それやだぁ・・・。」
「痛いねぇ・・・。未知、辛いねぇ・・・。」
もう少しで、絶頂を迎えらえっるはずだったペニスも、すっかり萎えて、力なく垂れさがってしまっている。揺らされるたびに、プルプルと動いて、まるでそこも嫌がっているようだ。
「痛み、徐々に引いてくるから・・・。痛くなくなってくるからね。」
将典が手を取って、胸に置く。ローションを手にして、入口に塗り付けた。ヒヤッとしたが、将典の熱ですぐにわからなくなる。何度かそれを繰り返し、将典は秘部を潤した。ゆっくりと引き抜いて、ペニスにもローションを足す。そしてまた、くぷくぷと中に収めた。そうして、ゆっくりゆっくり、ついに将典のすべてを咥えこんだ。ぱちゅ、と将典の肌とお尻がくっつく。
「ぁ・・・。」
「はい・・・った。」
見上げると、将典が嬉しそうに笑っている。その眉が、辛そうに顰められていた。額には流れ落ちるほどの汗。
「あ・・・、将典さんも・・・痛い・・・の?」
「すごく狭くてキツいから。でも、全部入った。未知、ごめんね。痛い?」
問われたが、激痛は薄れて、ジンジンとした熱さが残っていた。
「痛いけど・・・我慢できそう。」
「けど、動いたら痛いだろうから、今日はこのまま。しばらく抱き合っていたい。」
上に乗れる?と将典が腕を引いた。将典の腿に乗り、結合がより深くなる。
「うぁ・・・。」
「まだすごく痛いの?」
「ううん。痛いけど、熱い。」
ジクジク、そこに心臓があるみたいに、脈打つように痛むのだ。将典の熱が嬉しくはあるが、今は自分を貫いている凶器でしかない。快楽を与えてくれるものではなかった。
「背中に腕を回して・・・。」
言われた通りに、将典にしがみつく。
「痛そうだけど、傷つけてはないから・・・。じき楽になってくるからね。大丈夫だから。」
深々と貫かれて、自分ではどうすることもできない。必死で将典に縋りつき、痛みが楽になるという時を待っていた。しかし、貫かれたそこはなかなか将典に馴染んではくれないようで。
「わ、未知背中、汗すごいね・・・。痛いね。苦しいよね。」
背中に回した腕で、宥めるように撫でてくれる将典もまた、辛そうだ。
「将典さん、ちょっとなら動いてもいいよ・・・。」
「え?」
「つらそう・・・。終われないでしょう?」
痛みを覚悟して告げてみるが。
「終わりたいよね。ごめん・・・もう少し抱き合っていたい。動かないから、ね?」
将典の背中も、汗が伝っている。我慢、しているのだ。
「未知、もっとくっついて、ほら、ドキドキしてるの聞こえるでしょ?」
言われて、胸に耳をつける。トクントクン、と将典の鼓動。
体は辛かったが、その音に妙な安心感を覚えて、ぴったりと寄り添う。将典が、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「はぁー・・・。」
深く深呼吸すると、背中と腰の力が抜けた。徐々に、痛みが和らいでくる。
「あ・・・。痛くなくなってきたかも。」
「よかった。これから、何度でも、未知が気持ちよくなるまで抱くよ。その後もずっとずっと・・・。」
将典が耳元に囁く。くすぐったくて身じろぎした。結合部がぬるりとする。
「未知、動けたら自分で少し動いてみて?こっち弄ってあげるから。」
そっと、ペニスに将典が触れる。
「無理・・・。」
「ん。気持ちよくなれそう?」
くちくちとペニスをしごかれるが、なかなか反応しない。あまりにも、腰の中の存在感が強くて、集中できないのだ。力なく首を横に振ると、仕方ないか、と頭にキスされた。キスはしたくて、ん、と顔を将典の方に向ける。すると、将典が唇をとらえた。深く口づけてくる。口の中は不思議と気持ちがよく、何度も何度もキスをねだった。
「ん。そろそろ抜いてあげようか。」
ころん、とベッドに倒されて、腰を掴まれる。
「そのまま楽にしてて。抜くね。」
ずる、と少しずつ将典が抜け出てゆく。もう少しで全部抜ける、その一番太いところが引っ掛かった。
「いた・・・。」
「ごめん。ちょっと我慢。」
将典はそう言うと、ぬるっと腰を引いた。
「あっ。」
熱を奪われた喪失感に、しばし呆然としてしまう。
「未知?大丈夫?・・・傷にはしてないからね。ごめん、先にイかせて。」
将典はゴムを外すと、自らの手で赤く充血したペニスを数度しごいた。
「っ・・・く。」
お腹の上に、吐き出される白濁。ふわ、と将典の匂いがして、あぁ終わったんだなと思った。ところが、将典はそれをタオルで拭うと、身をかがめて、自分のペニスを口に含んだ。
「あっ、え?」
「イかせてあげたい。」
将典は、労わるようにそこを丹念に愛撫した。やがて、ゆっくりとそこが芯を持ち、固くなってゆく。先端を舐め転がされ、鈴口に舌を差し込まれる。柔らかく何度も吸われ、ついに射精感が募った。
「あ、イケそう・・・で、る。まさのりさん・・・まさのりさん・・・だめ、だめ・・・。」
ちゅうっときつく吸われて、ついに放つことができた。放埓の余韻に、深くため息をつく。
「はぁ・・・。」
「気持ちよくイケた?」
「・・・うん。ありがとう。」
将典が、微笑む。
「未知、ありがとう。抱かせてくれて。・・・後悔、してる?」
ううん。と首を横に振る。
「痛かったけど・・・。繋がるって大事の意味なんとなく分かった。将典さんのものになれたって・・・。」
「うん。・・・大事にするから。」
将典の目が少し潤んでいた。それを見て、なんだか自分も泣きそうになる。
「うん。」
「未知。愛してる。」
「・・・僕も。」
体はあちこち痛んだが、胸のなかはほわりと温かかった。
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