【R-18・BL】こじらせ初恋

君さえいなけりゃ

１*

 まただっ！
 表彰式もインタビューも終わってやっとすべてから解放された古河こが 義経よしつねは急いでホテルの部屋に向かった。
 最近、いつもこうだ。試合が終わると体の熱が冷めないっていうか体が興奮したまま収まらないっていうか…とにかくツラい！
 ホテルの部屋に飛び込みベッドに座った義経はすぐにズボンの前を開いた。熱を持った自身が痛いくらいに下着を押し上げ、早くこの熱を吐き出したいと訴えていて義経は力なく笑った。とにかく早く熱を吐き出そう…焦るのを抑えながら自身を下着から取り出した義経はゆっくり上下にしごき始めた。
「んっ…っ…」
 熱い吐息が漏れる。手元からはくちゅっと水音も響き、それが義経をさらに興奮させていく。
 頭…ぼぉーっとする…。
 熱と快楽に意識が虚ろになるが、手は止まる気配もなく自身を昂らせていく。先刻まで大勢の観客に囲まれて綺麗な光の中で祝福されていたのに、今は独りで自身を慰めていることに義経は罪悪感のようなものに苛まれる。
    まるで自分で自分を汚してるみたい…。
「…っ…は、ぁ…」
    それでも解放を望む自身を追いたてる手は止まることなく、段々と大きくなる水音に合わせて自身の声も抑えられなくなってきた義経は限界が近いと悟り自身をしごく手を早めていく。
「ん、ぁ…ぁ……も…」
    絶頂に高まっていく勢いそのままに義経は手も声も我慢できなくなっていた、その瞬間───。
「ヨシ…？」
「ぇっ…」
    突然、目の前に現れた花巻はなまき 湊和そわの姿に驚いた義経は絶頂に達することなどふっ飛んでしまうほどの衝撃に体は固まってしまった。いつもは一人部屋が多い義経だが、今日はたまたま湊和との相部屋ということを失念していたのだ。オートロックのドアはルームキーを持つ湊和を足止め出来ず、湊和は義経のいるベッドの前まで歩を進めたところで立ち止まった。
    目の前で恥態を晒している義経に湊和が一度息を飲むと、どうにも言い訳が思いつかない義経の目からはとうとう涙が溢れた。
「湊和くっ…ごめ……」
    ぼろぼろと泣きじゃくりながら何に対しての謝罪か分からないが義経は壊れたように謝り続け、湊和はその様子にはぁーっと大きく息を吐いた。
「え…？」
「びっくりしたよ。ヨシ、会場から猛ダッシュで出ていくから具合でも悪いのかと思って…」
    慌てて追いかけて来ちゃったんだ、と続ける湊和は力なく笑うと胸を撫で下ろし目の前の義経を観察するように伺うとゆっくりと義経の隣に腰をおろした。
「大会の高揚感が抜けなくて体が興奮したまま言う事聞かないんだね。僕も義経ぐらいの歳の時同じようになったから分かるよ」
    未だに泣きじゃくる義経を落ち着かせるように頭を撫でると湊和は義経の耳に軽くキスをした。
「ひぁ…!!」
    思わず義経が声を上げると、湊和は耳元でくすりと笑った。
「手伝ってあげるよ、ヨシ…」