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Special ② (聖奈さん♡)
CROSS OVER こぼれ話集
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【その① 由麗と桜花】
ーー未南と篠田が初めてIrisに呼ばれる少し前。
「ここに居る皆さんに大切な話があります」
数人を部屋へ呼び出した桜花上司は、何やらIrisに新しい技術者をスカウトする重要な計画を進めているとかでいつもよりもかなりピリピリしていた。そこで聞かされたのは、新しい拘束台を製作した二人が直々に講習会を行ってくれるということ、そして…。
「由麗くん、君に重要な役割を与えます。講習会の時に指名しますので拘束台に乗って下さい。大事なお客様ですのでくれぐれも粗相の無い様にお願いしますね。…いいですか、く・れ・ぐ・れ・も失礼の無いように。スカウト出来るかどうかの瀬戸際なので」
…ハイかYESで答えろと言わんばかりの圧だ。
やたらと敬語だし笑顔が怖すぎるし口が裂けても嫌ですなんて言えない。嫌すぎるけど。
「…はい。分かりました…」
それしか口にすることが出来なかった俺は、
(とにかく当日は絶対にいつもより礼儀正しくしておこう…)
と心に決めたのだった。
【その② 柊と由麗】
ーーコンペ当日の少し前、食堂にて。
「由麗、前から企画されてたIrisとDaisyの新型拘束台コンペの話知ってる?」
俺は浮かない顔をして一緒に朝食をとっていた由麗に話しかける。
「ああ、知ってるよ。未南さんと篠田さんが出るやつだろ。それがどうしたの?」
「俺、実はこの前上司に呼び出されてさ…『大事な両組織間の友好を保つ名誉な任務を与える』って言われたの。…つまり、コンペ当日に両チームの拘束台に乗れって事なんだけど…」
箸が全く進んでいない俺に心からの憐れみの目を向けてくれる由麗。
「分かる。分かるよ柊その気持ち…!」
自分にも覚えがあるのか、身を乗り出して答えてくれた。そして俺に同情するように言う。
「あのさぁ、ほんとこれって何基準で選ばれてるんだろうな…」
「さぁ…」
…俺達はいつもよりずっと長い時間をかけて、朝食を食べていた。
【その③ 未南と篠田と柊】
ーーコンペが終わった数日後。
「柊くん突然お邪魔してごめんね!これこの間のちょっとした気持ちだから!」
俺はお詫びの菓子折りを渡すために、篠田くんと共に柊くんの部屋へ訪れていた。この前篠田くんと一緒にデパ地下へ行って選んできたのだ。
柊くんは、いえいえそんなわざわざ!と驚いていたが、むしろこんな菓子折り一つで済まされそうにない程めちゃくちゃにしたと思ってたので「(良い子だな…)」と思って帰ってきた。
「未南さんとデパートに行けて楽しかったです!今度は他のフロアも一緒にゆっくり見ましょうね」
自室に帰るまでの廊下で、篠田くんが嬉しそうに話しかける。お菓子を買った後デパ地下お惣菜トラップに引っかかり、お惣菜だけを買って回るだけで時間が無くなったのだ。
「ま、まぁたまには良いかもな…俺も久しぶりに行って楽しかったし。今度休みの日にまた…」
頬を掻きながら目線を逸らして言う俺の隙をつき、また勝手に俺の部屋へ入ろうとする篠田くん。
「だからお前の部屋は隣だろ?!」
【その④ コンペを観に来ていた二人の男】
ーーコンペが終わり数日後、両チームの作製した新型拘束台が置かれた部屋にて。
「人工触手の壺はまだいいとして…いやこれあまりにも大きすぎないか?!いやもう言っちゃ悪いけど邪魔なんじゃないかなこのスノードーム型のやつは?!確かに機能としては凄いんだけどさ!」
「あの変態上司がどうしても両方欲しいって言うから…」
部屋の掃除当番になった俺達二人はまだ埃ひとつ被っていない二つの立派な機械を前に立ち尽くしていた。
「Daisyの桃瀬さん曰く、あえて無駄なものを取り入れたデザインらしいです」
「その無駄な部分が多すぎない…?」
見た目はとても美しい拘束台…?を互いに見上げながら呟いた。
「クリスマスパーティーの時に真ん中に飾っておくぐらいしか使いどころを思いつかないな…。で、なんか罰ゲームで負けた人がこの中に入るっていう」
「俺もそれ思いつきました。…絶対今年のクリスマスの時これ置いとこうって誰か言い出しますよ」
今年のクリスマスパーティーは恐怖に彩られそうだ…。
【その⑤ 未南と篠田】
ーー打ち上げの翌日。
「あ”~~~~頭いでぇ~~~~!!」
打ち上げがお開きとなり、Irisに戻ってからはそのまま泥のように眠った。篠田くんが頑張って俺を部屋まで運んでくれたみたいだが、そのあたりの記憶は曖昧だ。…その後目が覚めると案の定ひどい二日酔いで、俺は薬を飲みながら未だにベッドに横たわっている。
「あ、未南さんおはようございます。やっと起きたんですね」
ノックをすることもなくガチャッと堂々と俺の部屋に入ってきた篠田くんは俺と違ってとても元気そうだ。俺を今まで介抱してくれていたのだろうか…。
やっぱり調子に乗ってついつい飲みすぎるのは止めようと思っているのにいつもこうなってしまうのは何故なんだ…。
「あ”ー…、ごめん篠田くん。昨日は迷惑かけたと思う…えっと…もう今日だっけ…」
「大丈夫ですよ。最初に未南さんを持ち帰るのは僕の役目だって言ってたじゃないですか」
ニコニコしながら言われたそのままの言葉に心がズキッと痛んだ。本当にごめん。
「いやーしかし…グダグダに酔ってるとはいえ未南さんがいきなり裸踊りをしだした時はびっくりしましたね(大嘘)」
「え”!!??」
確かに俺は最後の方の記憶がおぼろげ過ぎる。あの二人と別れてからにいたってはどうやって帰ったかすら記憶にない程だ。…え、もしかするともしかしてやっちまった…!?
「う…うそ、嘘だよな…?!俺マジで最後の方記憶無いんだけどまさかそんなヤバかったの…?!なぁ嘘だって言ってくれよぉ篠田くん…!」
「嘘ですよ」
嘘なんかい!!!!!!と俺は頭痛も治る程の今期一番のツッコミを部屋に響かせたのだった。
【その⑥ 桃瀬と栗原】
ーー打ち上げの帰り道。
二人と別れてからDaisyに戻るまでの帰り道、俺と栗原さんは時折喋りながら歩みを進め、この気怠い様な楽しいような雰囲気に揺られていた。
「栗原さんって、プライベートでこういう飲み会とか組織の宴会とか絶対自分から参加しないイメージなんですが」
「…まぁ、普段は行きたくもねー飲み会に接待やら会合やらで無理矢理行かされるだけだしな。面白さの欠片もねぇよ。
…けど、いつ振りだ、ンな純粋に楽しいと思える飲み会は…」
ふと覗いたその横顔は、いつもの冷静な感じでも構えた表情でもなく、自然な笑みを浮かべていて。
「あれ?全く酔わないと思ってた栗原さんがもしかして酔ってます?」
ほんの少しだけデレている栗原さんを見れたのが珍しくて、面白くて、嬉しかった。
「…あ”?うるせぇお前電柱に縛りつけて帰るぞ」
「だから俺を縛り付けても何も楽しく無いですって~」
…また絶対、皆で集まりたい。
【その⑦ 変態】
ーー世界の何処か。
「…良いねぇ。実に良いね。…ん?君もそう思わない?」
【その⑧ ???】
ーー彼らの物語は、境界を越えて交差しながら、これからも進んでいく。
end.
ーー未南と篠田が初めてIrisに呼ばれる少し前。
「ここに居る皆さんに大切な話があります」
数人を部屋へ呼び出した桜花上司は、何やらIrisに新しい技術者をスカウトする重要な計画を進めているとかでいつもよりもかなりピリピリしていた。そこで聞かされたのは、新しい拘束台を製作した二人が直々に講習会を行ってくれるということ、そして…。
「由麗くん、君に重要な役割を与えます。講習会の時に指名しますので拘束台に乗って下さい。大事なお客様ですのでくれぐれも粗相の無い様にお願いしますね。…いいですか、く・れ・ぐ・れ・も失礼の無いように。スカウト出来るかどうかの瀬戸際なので」
…ハイかYESで答えろと言わんばかりの圧だ。
やたらと敬語だし笑顔が怖すぎるし口が裂けても嫌ですなんて言えない。嫌すぎるけど。
「…はい。分かりました…」
それしか口にすることが出来なかった俺は、
(とにかく当日は絶対にいつもより礼儀正しくしておこう…)
と心に決めたのだった。
【その② 柊と由麗】
ーーコンペ当日の少し前、食堂にて。
「由麗、前から企画されてたIrisとDaisyの新型拘束台コンペの話知ってる?」
俺は浮かない顔をして一緒に朝食をとっていた由麗に話しかける。
「ああ、知ってるよ。未南さんと篠田さんが出るやつだろ。それがどうしたの?」
「俺、実はこの前上司に呼び出されてさ…『大事な両組織間の友好を保つ名誉な任務を与える』って言われたの。…つまり、コンペ当日に両チームの拘束台に乗れって事なんだけど…」
箸が全く進んでいない俺に心からの憐れみの目を向けてくれる由麗。
「分かる。分かるよ柊その気持ち…!」
自分にも覚えがあるのか、身を乗り出して答えてくれた。そして俺に同情するように言う。
「あのさぁ、ほんとこれって何基準で選ばれてるんだろうな…」
「さぁ…」
…俺達はいつもよりずっと長い時間をかけて、朝食を食べていた。
【その③ 未南と篠田と柊】
ーーコンペが終わった数日後。
「柊くん突然お邪魔してごめんね!これこの間のちょっとした気持ちだから!」
俺はお詫びの菓子折りを渡すために、篠田くんと共に柊くんの部屋へ訪れていた。この前篠田くんと一緒にデパ地下へ行って選んできたのだ。
柊くんは、いえいえそんなわざわざ!と驚いていたが、むしろこんな菓子折り一つで済まされそうにない程めちゃくちゃにしたと思ってたので「(良い子だな…)」と思って帰ってきた。
「未南さんとデパートに行けて楽しかったです!今度は他のフロアも一緒にゆっくり見ましょうね」
自室に帰るまでの廊下で、篠田くんが嬉しそうに話しかける。お菓子を買った後デパ地下お惣菜トラップに引っかかり、お惣菜だけを買って回るだけで時間が無くなったのだ。
「ま、まぁたまには良いかもな…俺も久しぶりに行って楽しかったし。今度休みの日にまた…」
頬を掻きながら目線を逸らして言う俺の隙をつき、また勝手に俺の部屋へ入ろうとする篠田くん。
「だからお前の部屋は隣だろ?!」
【その④ コンペを観に来ていた二人の男】
ーーコンペが終わり数日後、両チームの作製した新型拘束台が置かれた部屋にて。
「人工触手の壺はまだいいとして…いやこれあまりにも大きすぎないか?!いやもう言っちゃ悪いけど邪魔なんじゃないかなこのスノードーム型のやつは?!確かに機能としては凄いんだけどさ!」
「あの変態上司がどうしても両方欲しいって言うから…」
部屋の掃除当番になった俺達二人はまだ埃ひとつ被っていない二つの立派な機械を前に立ち尽くしていた。
「Daisyの桃瀬さん曰く、あえて無駄なものを取り入れたデザインらしいです」
「その無駄な部分が多すぎない…?」
見た目はとても美しい拘束台…?を互いに見上げながら呟いた。
「クリスマスパーティーの時に真ん中に飾っておくぐらいしか使いどころを思いつかないな…。で、なんか罰ゲームで負けた人がこの中に入るっていう」
「俺もそれ思いつきました。…絶対今年のクリスマスの時これ置いとこうって誰か言い出しますよ」
今年のクリスマスパーティーは恐怖に彩られそうだ…。
【その⑤ 未南と篠田】
ーー打ち上げの翌日。
「あ”~~~~頭いでぇ~~~~!!」
打ち上げがお開きとなり、Irisに戻ってからはそのまま泥のように眠った。篠田くんが頑張って俺を部屋まで運んでくれたみたいだが、そのあたりの記憶は曖昧だ。…その後目が覚めると案の定ひどい二日酔いで、俺は薬を飲みながら未だにベッドに横たわっている。
「あ、未南さんおはようございます。やっと起きたんですね」
ノックをすることもなくガチャッと堂々と俺の部屋に入ってきた篠田くんは俺と違ってとても元気そうだ。俺を今まで介抱してくれていたのだろうか…。
やっぱり調子に乗ってついつい飲みすぎるのは止めようと思っているのにいつもこうなってしまうのは何故なんだ…。
「あ”ー…、ごめん篠田くん。昨日は迷惑かけたと思う…えっと…もう今日だっけ…」
「大丈夫ですよ。最初に未南さんを持ち帰るのは僕の役目だって言ってたじゃないですか」
ニコニコしながら言われたそのままの言葉に心がズキッと痛んだ。本当にごめん。
「いやーしかし…グダグダに酔ってるとはいえ未南さんがいきなり裸踊りをしだした時はびっくりしましたね(大嘘)」
「え”!!??」
確かに俺は最後の方の記憶がおぼろげ過ぎる。あの二人と別れてからにいたってはどうやって帰ったかすら記憶にない程だ。…え、もしかするともしかしてやっちまった…!?
「う…うそ、嘘だよな…?!俺マジで最後の方記憶無いんだけどまさかそんなヤバかったの…?!なぁ嘘だって言ってくれよぉ篠田くん…!」
「嘘ですよ」
嘘なんかい!!!!!!と俺は頭痛も治る程の今期一番のツッコミを部屋に響かせたのだった。
【その⑥ 桃瀬と栗原】
ーー打ち上げの帰り道。
二人と別れてからDaisyに戻るまでの帰り道、俺と栗原さんは時折喋りながら歩みを進め、この気怠い様な楽しいような雰囲気に揺られていた。
「栗原さんって、プライベートでこういう飲み会とか組織の宴会とか絶対自分から参加しないイメージなんですが」
「…まぁ、普段は行きたくもねー飲み会に接待やら会合やらで無理矢理行かされるだけだしな。面白さの欠片もねぇよ。
…けど、いつ振りだ、ンな純粋に楽しいと思える飲み会は…」
ふと覗いたその横顔は、いつもの冷静な感じでも構えた表情でもなく、自然な笑みを浮かべていて。
「あれ?全く酔わないと思ってた栗原さんがもしかして酔ってます?」
ほんの少しだけデレている栗原さんを見れたのが珍しくて、面白くて、嬉しかった。
「…あ”?うるせぇお前電柱に縛りつけて帰るぞ」
「だから俺を縛り付けても何も楽しく無いですって~」
…また絶対、皆で集まりたい。
【その⑦ 変態】
ーー世界の何処か。
「…良いねぇ。実に良いね。…ん?君もそう思わない?」
【その⑧ ???】
ーー彼らの物語は、境界を越えて交差しながら、これからも進んでいく。
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