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まこ

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Special ②

CROSS OVER コンペ編③

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ついにこの日が来た。
俺が地獄の触手責めの日々から解放される日が!

コンペ開催日となる本日の朝、俺と篠田くんは協力して会場まで例の壺を運んでいた。桃瀬&栗原チームは出来上がった拘束台の運搬に時間がかかるとかで、前日に搬入を済ませていたようだ。
俺達がIrisに来た時に挨拶した大広間を使用するという事は、結構ギャラリーの人も来てくれるのだろうか。完成間近では二人共作業場と自室に籠もりっきりであまり周りの情報が入ってきていない。
二人で廊下を歩きながら台車に乗せられた壺を見て、俺はボソッと呟いた。

「…今更こんな事言うのも何だけどさぁ、俺緊張してきたわ。いや、ほぼほぼ今日の発表を篠田くんに任せてる俺が言うなって話だけども、俺もかなり思い入れあるからさ。
…勿論思い残すことなく全力を尽くして完成させたけど…いざ今日になって、本当に大丈夫かな、お客さんの反応はどうなるのかなって心配になってきて…」

いつも会社で頼まれて製作していたアダルトグッズはお客様との対話のもと、満足してもらえることを前提に作ってきた。しかし今回のようないきなりのサプライズ発表というのは経験したことの無い初めてのケースなので、不安やら期待やらで胸がいっぱいになる。…俺が弱気になってちゃいけないのに…。

「も~未南さんはほんっと遠足の前日に寝れないタイプの人ですよね!目の下すっごいクマできてますよ。そんなんじゃ来てくれた人達が未南さんの心配ばっかりしちゃいます!」

そんな俺を見て篠田くんが明るい声であははと笑いながら励ましてくれた。…こういう時、一番俺のことを分かってくれるコイツは隣りに居て凄く安心する。篠田くんだって多少は緊張することもあるだろうに。

「あ、ああ、そうだな。後で顔を洗ってくる。…うわ、髪もちょっと梳かさねぇと…。折角大事な日だってのに恥ずかしい思いをするとこだったな、教えてくれてありがとう」
「未南さんって余裕なさすぎると凄く素直になるんですよね」

そんな会話をしながら、俺達は大広間に着いた。
扉を開けると真っ先に目に入ったのは…黒い布がすっぽり被せられたニメートル以上はあるだろう巨大な物体だった。
これが桃瀬たちの作った拘束台なのか?…いや、デカいって。予想以上にデカすぎんだろ。搬入に時間かかるって言ってたのも分かるわ。
…俺達も相当変なもの創り上げたけどアイツらもやっぱやべぇな。恐るべしフリースタイル。

「…いや、これもう絶対拘束”台”じゃねーじゃん。台ではないよな。…良かった。俺達も超絶変なモノ作っといて。もう初手インパクト勝負だけで負けるとこだったわ」
「…やっぱり向こうも一筋縄じゃいきませんよね。発表は僕達が先手ですが、後からどんな物が現れるか楽しみです」

篠田くんは黒い布に包まれた物体を見上げている。
…その心情はどんなものなんだろうか。俺と一緒で不安と期待が入り混じったものなのか。ずっと長い間一緒に居るのに、彼の心の中を読むのは難しい。
…いつか、読めるようになるのだろうか。
…などとぼーっと篠田くんを見つめながら立っていると、ニコッと笑いながらこっちを向いた。

「…未南さん。今回、いっぱい協力してくれてありがとうございます。凄く楽しかったです。
未南さんのおかげで、これだけの短期間で僕の今の最高傑作を完成させることが出来ました。どんな結果であっても僕はもう既に満足です。…最後、もうちょっと頑張りましょう」

……

突然の感謝の言葉に、俺は思わずウルっときた。
…俺だって楽しかったよ。でもここでそう返すのはあまりにも恥ずかしい。

「…な、なんだよ!もう戦い終わりましたみたいな空気出してんじゃねーよっ!むしろこれからだろ!俺だって責められ損にはならねーよっ!」

あたふたしてる赤い顔を見られるのが恥ずかしくて、ついそっぽを向いて早口になってしまう。

「未南さんがそう言ってくれると心強いです。僕も頑張ってプレゼンするんで、応援しててください」

「…ッあったりめーだろ。絶対勝つからよ。
…今まで素直に褒めてやらなかったけど、ここまで来たんだから最後一回だけ言ってやる。…ほんと凄いよお前。凄い。尊敬してる。」

「……みなみ、さん…」

……今更そっちに顔向けれるわけねーだろーが。
俺は後ろを向いたまま、黙って篠田くんに向かって右手をグーに突き出した。

「…ん。ほら。」

「はい。…」

互いの表情が見えないまま、俺達はグータッチを決めた。


◇ ◆


顔を洗い、髪もしっかりと決め、服もシワのないカッターシャツとズボンに着替えた俺は篠田くんと共に大広間の扉の前で入場のスタンバイをしていた。後ろには桃瀬と栗原さんも控えている。

「お待たせいたしました。それではIrisの未南さんアンド篠田さんチーム、Daisyの桃瀬さんアンド栗原さんチームの入場です!」
中からマイクを使った声が響くと、扉が開かれ四人一列になって登壇した。多くの人達が観覧に来ており、盛大な拍手で迎えられる。

(俺達、ここに来てから拍手で迎えられることばっかだな…)
そんなことを思いながら俺達は並んで、黒い布のかけられた壺の前に立つ。桃瀬と栗原さんもあのバカでかい謎の物体の前に並んでいる。

「さあ!ではまずは、我らがIrisきっての期待の凄腕技術者!未南さんから意気込みをどうぞ!」

いやそんな大層な肩書き付けなくていいって恥ずかしいから!
俺はテンション高めな司会者から渡されたマイクを緊張しながら受け取った。おそらく今日一番の俺の見せ場はこの挨拶なので、トチらないようにせねば。

「あー…、本日はお集まりいただきありがとうございます。まさかこの組織に来て間も無い我々に、この様な場を設けて頂けるとは思いもしませんでした。これもひとえにIrisの方々とDaisyの方々が支援をして下さったお陰です。本当に感謝の限りです。全力を尽くしましたので、どうぞ宜しくお願いします」
ペコリと礼をすると、会場からはパチパチと拍手の音が聞こえた。よし。俺の任務完了!

「では続いて篠田さんお願いします!」

「はい。篠田です。今回は皆様のお陰でとても貴重な体験をさせてもらいました。僕の作りたかったものを作らせていただけるこの環境に心から感謝します。今日は僕からメインで新型拘束台の紹介をさせていただきますが、製作に関しては未南さんの多大な協力があって完成に導くことが出来ました。…二人の集大成を是非ご覧下さい」

おおぉ、と周りから声援が上がり拍手を送られた。
篠田くん、本当にこういう場で喋り慣れてるよなぁ…。緊張ばっかしてる俺も見習わねば。

「それでは続いてDaisyからお越しくださいました、桃瀬さんです!」
桃瀬はマイクを受け取ると、ひとつ深呼吸をして真っ直ぐな目で話し始めた。

「Daisyの桃瀬です。初めましての方も居るかもしれません。俺の我儘から始まったこの企画を受けて下さりありがとうございました。…今までもいくつかこのような大型機械を製作した事はあったのですが、今回、新しい自分に挑戦したつもりです。Irisの皆様にもどう見てもらえるか分かりませんが、最後まで宜しくお願いします」

ーーへぇ。
彼、何かふっきれたように清々しい顔になったな。…良いじゃん。なんかすげー、良い顔してんじゃん。

ギャラリーの中にもDaisyから来てくれた人がちらほら居るらしく、拍手の中『桃くーん!』や『桃瀬ーっ!』と呼ぶ声が聞こえる。桃瀬は軽く手を振ると、そのまま栗原さんにマイクを手渡した。

「…栗原です。初めはどうなることかと思っていましたが、無事にここまで来ることが出来ました。
…あまりこういう場では喋り慣れていないので、短いですが、失礼します」

栗原さんはいつもの低い良い声でサッと挨拶をすると、軽くお辞儀をしてすぐにマイクを返しに行った。Irisの人からも声援を受ける中、少し気恥ずかしかったのかもしれない。

会場の熱気も高まる中、司会者の声が響く。
「それぞれの意気込み、ありがとうございました!今からの発表が益々楽しみですね!それでは早速、先攻の未南さんと篠田さんチーム、お願いします!」

…ついに来た。俺横で見てるだけなのにすっげー心臓ドキドキいってんだけど。篠田くんマジで表情崩さねぇな。え、ちょ。こんないっぱいの人に見られてて俺変な顔してないかな。
…そんな自分の事ばっかり考えているうちに、また大事なことを思い出した。
そうだ!…んで、結局誰がこの二組の拘束台に乗るの?未だに何も聞かされてないんだけど!

そんな俺の疑問に丁度答える様に、司会者が扉の方に手を伸ばすと、それでは今からお二組の新型拘束台に乗っていただく子に来てもらいます!と続けた。
「それでは壇上へ来てください、柊くーん!」

そのかけ声とともに、一人の青年がおずおずと入ってきた。全員が彼に注目する中、俺は当然の疑問を心の中で投げかける。


(だれ??!!)

えっ…ほんと誰?…しゅうくん?
…えーっと…聞いたことあるような無いような…誰だっけ…。

えっそんな事思ってんの俺だけ?!と慌てて他の三人の顔をチラッと見てみると、篠田くんは相変わらずニコニコしてるし、栗原さんはいつも通り冷静だし、桃瀬は…唯一ちょっと(え…?誰?)みたいな顔をしている。そうだよなそれが正しい反応だよな桃瀬ぇ~!この二人ポーカーフェイス過ぎて怖いぃ~!

そこで俺はハッと気付いた。
…あっ!!思い出した!ここに来て最初に仲良くなった由麗くんの友達って言ってた子だ!…ごめんあんまりよく知らなくて!でも友達の友達は友達だからさぁ!後で謝るから今は犠牲になってくれ可哀想な青年枠第二弾くん!なんかお菓子あげるから!

よく知らない子に対し今からあの触手が発動すると思うとまた申し訳無さが爆発しそうになった。大切な発表だから仕方ないけど…アノ壺の辛さは俺がいっちばん良く知っている。
…そ、そりゃあ篠田くんがあんなことこんなことされるってなったら万々歳よ?そりゃー俺のS心爆発するよ?でもキミすげー不安そうな顔してんじゃん。前も思ったけどこれほんと誰に命令されてんの?何基準で選ばれてんの?ねぇ?

いたたまれなくなった俺はこそこそっと柊くんの側に寄って「…ごめん、頑張って」と囁いた。彼は「はい。分かりました」とだけ呟くと篠田くんが手招きしている方へと向かった。
その時、俺は決心した。

(…あ、これコンビニとかじゃなくてちゃんとデパートで買ってきたお菓子あげよ)


◇ ◆


「それでは紹介します!…ジャーン!!これが僕達の作り上げた”拘束台”でーっす!」

篠田くんは高らかに声を上げると、バッと壺に掛けられてあった黒い布を取り外した。
…それを見た瞬間、当然、会場からは『…え?』『それが拘束台…?』という不安そうなどよめきが広がる。柊くんは最前列に立って前を向いているよう指示されているようで、後ろが気になって仕方がないみたいだ。

「ふふふ、皆さんそうですよね。これのどこが拘束台なんだって思いますよね?見てて下さいね…
お~い!出ておいで~!!」
パンパンっと注目させるように手を叩くと、いつリモコンを操作したのか分からないが壺からにゅるにゅるとあの見慣れた気持ち悪い触手達が一斉に蠢き出てきた。それを見た観客たちは「うわあああああああ!!」等と一斉に声を上げる。

「!!うわぁっ!!」
前を向いていて背後で何が起きているか分からず反応が遅れた柊くんは、観客の反応に気づき反射的に振り向く。その時にはもう遅く、彼は一番最初の俺と同じように何本もの触手に纏わりつかれ服を着たまま身体を宙に浮かされていた。

「ひいっ…!」

あまりの衝撃的な出来事に声を出すことも出来ず、今の状況が理解できないというように彼は恐怖で顔が固まっている。そりゃそうだろう。ファンタジーの世界の中だけだと思っていたモノが、今実際目の前にあるのだから。
…それは離れて見ていた桃瀬と栗原さんも同じようだった。彼ほど取り乱さないにしても、瞬時に危険を感じて少し後ずさりした二人は、なんだこれは…!というような驚愕の顔つきをしている。よしよし。初手インパクトは負けてないな。

「はーい!いかがでしょうか?!登場しましたのは、皆さん大好き触手くんで~す!」

いや皆さん大好きじゃねえよ。余計なこと言わんでええって。ほらちょっと顔赤らめてるギャラリーの人居るだろ。…うん。こういうの好きなんだなあの人。…いや結構ニヤニヤしてる人居るぞ!大丈夫かこの組織!

「えへへ、皆さんにも気に入ってもらえたみたいで良かったです!この子達は色々出来ることがあるんですけど、まずは後ろを向かないでって言ったのに勝手に向いちゃった柊くんにお仕置きしなきゃですね」

その篠田くんの言葉を聞いてさらにどよめき立つ会場の人々。いや何なんだこの場!そーゆー見せもんじゃないから!いや見せもんだけど!なんか危ないって!

「…!ごめんなさ…、」

柊くんが宙に浮いたまま真っ青な顔をして篠田くんの方を向く。構わずリモコンを取り出して操作しだした篠田くんは、楽しそうに話し始める。

「まずはお決まりのコレですね」

「ーーーーっングッ!?…!!」

そう言うと、いきなり一本の太めの触手が彼の口の中にズボッと入り込んだ。彼は悲鳴にならない悲鳴を上げて手足を必死にバタつかせるが、纏わりついている触手達は当然グイッと支え動きを封じ込める。口の中はそれ程奥まで入ってはいないのか、えづく事なく彼の言葉を封じている。…正直、今の時点で絵面がめっちゃアレよ。いやキミに対してはすっごく申し訳ないとは思ってるけど。…この口内触手責めは俺も嫌と言う程受けたから分かるんだよ。
俺の弱点を隅から隅まで知っている篠田くんが、これをしない筈が無い。先端で敏感な上顎を擦り、その奥まで巧みに擽ってくる触手は言葉を奪うだけでなく言いようのない快楽を与えてくる。その間も飲み込めない涎は口から溢れ、必死に呻く姿はとても無様になる。…初めて観察する側になってみたがこんなにも惨めな感じだったのか…キミはまだ全裸じゃないだけ良かったよ。
篠田くんもやっぱりそういうとこ気を遣ってくれているのかな…。俺以外には絶対に実験もしなかったし…。

心の中で自分の受けてきた様々な責めを思い出してしみじみ想っていると、離れた所でボソボソとこちらを見ながら話し合うDaisyの二人の声が聞こえた。

「…篠田さん、やっぱ凄いもん出してきましたね。とんでもないの作ってくるって勘は当たってたけど、これ予想つく人は居ないでしょう」
「嗚呼」

…相変わらず冷静だな。これ彼に同情してんの俺だけじゃね?この温度差なに?何で毎回このパターンになるの…?

「んん”ん”ッ!!~~~~んっ!!」

口内を刺激され息も上手く行えない可哀想な柊くんは、イヤイヤと顔を振り乱して悶えている。そんな彼に追い打ちをかけるように、周りでゆらゆらと待機していた触手達が一斉に服の中へ入り込む。

「ん”ッッッ!!んぐうううううううッ!!!!」

指定されていたのか、緩くて薄いシャツと裾が大きく広がっているズボンを履いている彼の服は触手が非常に入り込みやすい。その上染み出してきた液体媚薬入りであろうローションがべっとりと服と肌に張り付き、身体の色と形をくっきり浮き上がらせている。…正直これ裸よりなんか余計…アレじゃない?いやエロいとかいう陳腐な表現は使いたくねーけど…エロいですね。はい。

彼を弄る触手達を当然の如く止めないまま、篠田くんが笑顔でまた語りだす。
「えー、ここまで見ていただきましたら皆様、大体これがどのような拘束と責めが出来るのかイメージ出来ましたでしょうか。不思議ですよね、夢の触手が目の前にあるなんて!
ではそろそろネタばらしをすると、これは僕達が機械で一から作り上げた人工触手なんです。壺自体がメインコンピューターになっていて、そこから……」

初めに俺にしてくれた解説を、更に詳しく皆に向けて説明をする。人工触手の仕組みや素材、どういった所を作るのが難しかったか。AIのプログラミングはどのようになっているのかなど。…素人には難しい所もあるが、篠田くんは出来るだけ皆に分かりやすく砕いて実に上手く解説をしていく。
…彼の才能は、技術面だけでは無いのだ。

ほおぉ、なるほどな、などとギャラリーがそれぞれ感動のあまりため息をついたりガヤガヤと感想を言い合う中、桃瀬だけは食い入るように篠田くんの解説を一心に聞いていた。
その目はひたすらに真剣で、学んだことを全て自分の技術に取り込んでやるというような熱い想いがこもっていた。

…そうか。ただひたすらに向上心を持って、絶対に負けたくないという揺るがない決意を持っているからこそ、彼は…あの時俺達のことをーー

俺は桃瀬達と出会った時のことを思い出した。…あん時は初めてでお互い分かんなかったよな。煽ったのも当然だよな。今ならもっと四人で喋りてーし、俺らももっとお前らの事知りてーし…。

…と感慨に耽る俺の耳にズカズカ入ってくるのは篠田くんの元気な解説。…今ちょっとエモーショナルな気分になりかけてたのに!もういい!

「そして今柊くんの姿を見てもらえれば分かると思いますが、ぬるぬるした液体が滲み出てきてますよね。滑りも良くなっていますね。こちらは触手のシリコンカバーに空いた無数の極小の穴からじんわりとローションが染み出すようになっています。詰まらないようにするのが大変でした!このローションには桃瀬さんチームが後から使うのと同じ媚薬が含まれています。では効いてくるまで暫く彼の様子を見てみましょうね」

嘘だろ、というような柊くんの絶望に満ちた瞳が篠田くんに向けられる。
ハイ篠田絶対許さん同盟にようこそ~~~!!

暫く様子を見ずとも、明らか既にもう効き始めている媚薬の効果。大衆の前だからというのもあるだろうが羞恥が一層媚薬の効果を引き立てている気がする。こんなの嫌だよね。ごめんね。恨むなら篠田くんかキミを指名した上司さんを恨んでね。俺に化けて出ないでね。俺も被害者だからさぁ…!
彼は明らかに辛そうで、まだ咥えさせられている触手の端からだらしなく涎を垂れ流し、顔を紅潮させ、激しく触手に撫で回されているのが伝わるように息が荒くなっている。

「…い、あ、…やえ、て…っんん”っ…あ、ひゃあ…!!」
服の中を弄っている触手が気持いい所を掠めたのか、彼はビクッと震えるとくぐもった喘ぎ声を漏らした。するとAIの触手が弱点でも見つけたのだろうか、べとべとの上着をお腹までまくり上げると、脇腹をなぞったりお臍の周りをクルクルいじめだした。
涙で濡れた目はトロンと溶け落ち、濡れたシャツ越しに見える二つの突起ははっきりと主張している。

「…ッ!んっ…ぐうぅ…んんっ…!」
媚薬でさらに敏感になっている箇所をぬるぬると撫でられ、擽ったいのもあるだろうが今はかなり気持ちよさそうな目をしている。本人もだんだんとこんな状況でも羞恥が無くなり、抵抗せず触手達に身を任せ始めている。

「今まではお仕置きとしてただ単にいじめちゃってただけなんですけど、そろそろしっかりと拷問用兼訓練用の新型拘束台としてのセールスポイントをアピールしないとですね!では次にご覧頂きますのは…」

知らない人をただ単にいじめるなよ、とも思ったがこの触手には引き込まれるような魅力がある。機能性だけでは無い魔性の何かというか。…篠田くんの本気がそう思わせているのか?
まだ出していないあの口のついた触手も今から披露すれば俺達の支持率はかなり上がると思う。最初は気持ち悪さにドン引きされるかもと心配だったが、観客の反応を含めこれは結構な手応えがあるぞ。

…桃瀬達のも勿論凄いんだろうが、パフォーマンスの派手さでは負ける気がしない。いける。
可哀想な柊くんには悪いが、ここは押せるところまで押してくれ。相手が押し返せないとビビるぐらいに。
…俺達の最初にして最高のステージなんだからな!

…いつの間にか、俺の気持ちは昂っていた。
お客さんとの打ち合わせも、確定した安心も無くどうなるか全く予想出来ないぶっつけ本番のお披露目会。
皆の反応が、俺達の努力の結晶をそのまま評価してくれる。…こんなに嬉しいのかよ。

ーー篠田くん。これ終わったらさ。
どうだ、してやったぜ!ってハイタッチしようぜ。
今度は正面向き合ってな。


「…ではでは更に出てきましたのはお口のある触手くんで~す!触手はうねうねだけのスタンダード型に加えて、ブラシ型やイソギンチャク型とかが主流なんですが、僕はどうしても舌の付いた口型が欲しかったので一生懸命に製作しました!先程までのスタンダード型と合わせて動きの違いなどにご注目下さい!」

(そのどうしても欲しかった理由って絶対俺の弱点をいじめる為だろ!!)
篠田くんのあまりに楽しそうな声に、昂っていた感情も少し落ち着き冷静なツッコミを入れる。危ねぇ、会場の空気に飲み込まれるとこだったわ。…何ちょっとカッコつけようとしてたんだ俺!恥ずっ!

例の口型触手が壺の中から何本も現れると、ワアッ、と先程とは少し色の違うような声が会場に響く。期待してくれるのは嬉しいけどなんかその期待の目は違う気がする~!あくまでも新型拘束台の発表って場だからそういうショーとかじゃないんだって!!

「っぷはぁっ!ぅあ、あ”あっ、ひうっ!なに、これや、め、…!」
口にずっと入っていた太めの触手が引き抜かれ、呼吸を整えようとするも服の中で蠢く触手は休息を許さない。柊くんのシャツはまくり上げられたまま可愛らしい腹部とお臍が露出していて、更に少しズボンも触手に下げられ、ローションでぬめり艷やかな肌がくねくねと踊る様が強調されている。

「嫌、そこ、舐め…んあぁ!嫌あ”あ”っ…!」

俺をいじめる為に臍を弄る動きを強化したのだろうか、触手の舌の動きは完璧だった。初めは柔らかなお腹を数本の舌でねっとりと舐め回していたが、一本の触手がグリッと臍に舌をねじ込むと彼は一層激しく身体を捻り悲鳴を上げた。

「あ”あ”ああああっ!!止めてえ”ええええっ!!!」
媚薬を全身から吸収させられた肌には到底耐えられない刺激だろう。俺は絶対無理。見てるだけでゾワっとなる。彼もなりふり構わず暴れて少しでも苦手な部分を避けようとするが、脇の下や胸の横や太腿を這い回り、ペロペロとローションを舐め取るように厚い舌で舐め回され、お臍を集中的に責められている彼に抵抗する術は無い。

必死にもがき苦しむ彼を尻目に、篠田くんはここぞとばかりに最後の紹介トークを広げる。
如何にこの拘束台が長期の拷問に向いているか、組織にとって利益があるか。…そんなアピールポイントを次々と挙げて会場を沸かせていく。

いつもこのお得意の営業トーク中は篠田くんの周りの温度だけやたら高くなっているんじゃないかという程に熱を感じるのだが、今日はより一層異常な情熱が伝わってくる。…凄い熱量で喋り続けまくし立てる篠田くんの額には、普段殆ど見せない汗が伝っている。

「…というように、…!……の場面での有効性を、…!……!」

とどまることを知らない篠田くんの長ゼリフ。
ギャラリーも、桃瀬も、栗原も、俺も。彼の演説に聞き入っていた。

(…やべ。コイツ本気じゃん)

「……以上で僕達、未南&篠田チームの紹介を終わらせて頂きます!ありがとうございました!」

篠田くんが額の汗を腕で拭いながら、息を切らせて締めくくる。その言葉に、会場は惜しみない声援と拍手で溢れかえった。
…う、うん。凄かった。ここだけ切り取ったら凄く良い場面なんだけど、…あの、忘れてないよね?

「ご協力いただいた彼にも感謝いたします!」
篠田くんがかざす手の方向にあるのは、散々俺達の発表に付き合わされ、もはや苦しさとか恥ずかしさとか絶望とかを通り越して口を開けたまま無になっている彼…柊くん。

…俺は彼が心配でちゃんとずっと見ていたのだが、多分他の人達は篠田くんの説明トークに魅入られすぎて最後の方あんまり彼の方見てなかったんじゃない?いや彼ずぅーっとネチネチ触手に責められっぱなしだったけど。服脱がす機能は説明だけにしてくれてほんと良かったよ被害を最小限に抑えられて!この新型拘束台に酷い目に遭わされるのは俺だけでいいよもう俺だけにしてくれ…ってそんな事言ってる場合じゃない!
何で彼まだ宙に浮いたままなんだ!!

「…し、篠田くん!彼を早く降ろしてあげて!柊くん、降ろしてあげろって!ご、ごめんなずっと大変な思いさせて後でコイツぶん殴っていいから!!」

俺に指をさされた篠田くんが慌ててリモコンを操作すると、柊くんは漸く触手から解放された。
ゆっくり降ろされ床に足が着いたが、そのまま力無くずるっと滑り落ちる所を慌てて俺はダッシュで受け止めに行った。篠田くんに実験をされている時、大体いつも俺が最後こうなるので反応が異常に早く、反射的に彼の身体を受け止めることが出来たのだ。
ローション塗れの身体を抱きかかえると俺の服までべっとべとになってしまったのだが、司会の人が急いでバスタオルを持ってきてくれたので脱力した彼を包むように巻いてやった。

(…由麗くんの時は見ているだけで何も出来なかったけど、今度はほんの少し、可哀想な青年くんの役に立てただろうか…いや俺ほんと今回もやっぱり突っ立ってるだけだったなー…って思って…)

柊くんは「ありがとうございます」と小さく言うと、相当疲れたのかクタッと目を閉じた。
…バスタオルの中へ倒れ込む彼に、俺がかけるべき言葉は決まっていたーー。


「…柊くん、貰うなら洋菓子と和菓子、どっちがいい?」

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