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気になるあの子
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「ぇ、……あ、ありがとう、ございます」
そう言った彼女は、見た目が好みだった。セミロングの黒髪で色白。スカートから覗く脚が細すぎる、なんてことも無い。施されたアイメイクは濃すぎず、瞳も暗めでカラコンというわけでもない。
たまたまハンカチを拾っただけ、そのハンカチはもれなくブランド物で彼氏か何かが居るんだろうと思いつつも、いい匂いがしたな、と引っ越してきて早々に役得だったなと思っていた。
翌日、社内の食堂でその彼女を見た。というか、自然と目がいってしまうのも無理がないようにだって思う。
夏目玲央、24歳。大学を卒業後は父の経営する会社の人事部にいた。どちらかと言えば実家は裕福の部類にはいるし、苦労もそこまでしてないと思う。
一人暮らしを引越しと子会社に入社が決まったわけだ。そして、そこで見掛けた彼女の容姿が好みだった。
細すぎず、太すぎるなんてこともない。胸が同性から見ても大きいのが分かる。ウエストはキュッと引き締まっているし、タイトめのパンツも普通に着こなす。男ウケの良さそうな体型だ、と申し訳ないながらに思ってしまう。
(どうにかして普通に友達になりたい、可愛すぎる)
見た目がタイプだし、声も可愛かった。その後、自販機で偶然を装って声を掛けたはいいものの、よそよそしい上に社員証の"開発エンジニア部所属"と書かれた文字を見て内心ガックリと肩を落とした。接点がない。
そう、思っていた。
「夏目さん。こちら、うちの部署の葛葉さん」
「葛葉凪紗です。よろしくお願いします」
「夏目玲央です。もしかして、案件の歳の近い女性って葛葉さんのことですか?」
今度の子会社はシステム系、ちょうど新規立ち上げの案件へと雰囲気を掴むためにアサインが決まっていた。その中に、1人歳の近い女性がいる、とは聞いていたが。
不思議そうな顔をする彼女に、直属の上司である彼からの補足説明で合点がいったらしい。
「よろしくお願いします、夏目さん」
「こちらこそ。よろしくお願いしますね、葛葉さん」
葛葉凪紗。
その名前を何度も心の中で呼ぶ、覚えた。それじゃあ、と挨拶に来ただけで彼女たちはその場を去っていく。
少しだろうが接点は接点。そう思いながら徐々に距離を詰めて連絡先を、とパソコンに向き直った矢先に隣の席かつ教育係の川田さんが声を掛けてくる。
「葛葉さん、可愛いですよね。中途入社なんですけど、顔採用じゃないか、って噂もあったんですよ」
「あー……スタイルもいいですもんね」
「そうそう」
それつまり、顔採用と思われるぐらい可愛い、の裏には仕事が出来ない、があるんじゃないかと思ってしまったが。
「葛葉さんってモテそうですよね」
「彼氏はいたけど別れて2年経つって話なんですよね。他部署の人が結構狙ってるっぽいんですけど、本人がその気ない感じで。週末とか誘っても先の予定が~って言ってるの聞いちゃったし」
「へえ……川田さんって結構社内のことに詳しいんですね」
「総務にいるし煙草吸うから何かとね~」
そう言いながら、川田さんの内線が鳴って自分も退屈な資料を読み込むことにした。ラッキーなことに川田さんは情報通でもあるらしい。葛葉さん、彼氏もいないんだ。でもモテはする。なるほどね、と脳内にメモを残して集中することにした2週間後。
気になる彼女が私の歓迎会という名の飲み会に現れたのだ。
そう言った彼女は、見た目が好みだった。セミロングの黒髪で色白。スカートから覗く脚が細すぎる、なんてことも無い。施されたアイメイクは濃すぎず、瞳も暗めでカラコンというわけでもない。
たまたまハンカチを拾っただけ、そのハンカチはもれなくブランド物で彼氏か何かが居るんだろうと思いつつも、いい匂いがしたな、と引っ越してきて早々に役得だったなと思っていた。
翌日、社内の食堂でその彼女を見た。というか、自然と目がいってしまうのも無理がないようにだって思う。
夏目玲央、24歳。大学を卒業後は父の経営する会社の人事部にいた。どちらかと言えば実家は裕福の部類にはいるし、苦労もそこまでしてないと思う。
一人暮らしを引越しと子会社に入社が決まったわけだ。そして、そこで見掛けた彼女の容姿が好みだった。
細すぎず、太すぎるなんてこともない。胸が同性から見ても大きいのが分かる。ウエストはキュッと引き締まっているし、タイトめのパンツも普通に着こなす。男ウケの良さそうな体型だ、と申し訳ないながらに思ってしまう。
(どうにかして普通に友達になりたい、可愛すぎる)
見た目がタイプだし、声も可愛かった。その後、自販機で偶然を装って声を掛けたはいいものの、よそよそしい上に社員証の"開発エンジニア部所属"と書かれた文字を見て内心ガックリと肩を落とした。接点がない。
そう、思っていた。
「夏目さん。こちら、うちの部署の葛葉さん」
「葛葉凪紗です。よろしくお願いします」
「夏目玲央です。もしかして、案件の歳の近い女性って葛葉さんのことですか?」
今度の子会社はシステム系、ちょうど新規立ち上げの案件へと雰囲気を掴むためにアサインが決まっていた。その中に、1人歳の近い女性がいる、とは聞いていたが。
不思議そうな顔をする彼女に、直属の上司である彼からの補足説明で合点がいったらしい。
「よろしくお願いします、夏目さん」
「こちらこそ。よろしくお願いしますね、葛葉さん」
葛葉凪紗。
その名前を何度も心の中で呼ぶ、覚えた。それじゃあ、と挨拶に来ただけで彼女たちはその場を去っていく。
少しだろうが接点は接点。そう思いながら徐々に距離を詰めて連絡先を、とパソコンに向き直った矢先に隣の席かつ教育係の川田さんが声を掛けてくる。
「葛葉さん、可愛いですよね。中途入社なんですけど、顔採用じゃないか、って噂もあったんですよ」
「あー……スタイルもいいですもんね」
「そうそう」
それつまり、顔採用と思われるぐらい可愛い、の裏には仕事が出来ない、があるんじゃないかと思ってしまったが。
「葛葉さんってモテそうですよね」
「彼氏はいたけど別れて2年経つって話なんですよね。他部署の人が結構狙ってるっぽいんですけど、本人がその気ない感じで。週末とか誘っても先の予定が~って言ってるの聞いちゃったし」
「へえ……川田さんって結構社内のことに詳しいんですね」
「総務にいるし煙草吸うから何かとね~」
そう言いながら、川田さんの内線が鳴って自分も退屈な資料を読み込むことにした。ラッキーなことに川田さんは情報通でもあるらしい。葛葉さん、彼氏もいないんだ。でもモテはする。なるほどね、と脳内にメモを残して集中することにした2週間後。
気になる彼女が私の歓迎会という名の飲み会に現れたのだ。
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