トーチ

長月

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夜の店

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 知らないスタッフばかりだ。当たり前ではあるが。
 キッチンは幸成と晴也さんの2人。ホールのスタッフは3人で、みんな大学生かフリーターの20代だった。最年長の浦田さんは幸成よりも年上で、勤続年数も長い。店長の指示がなくてもテキパキ動く。

 平日だからか、それほど忙しいということも無く、割とゆったりと仕事が出来ていた。店内は最近のヒットソングが流れていて、客数に限らず賑やかだ。同じ店とはいえ、雰囲気は全く違う。注文の入り方も量も、料理の出来上がる時間も違う。それでも幸成が焦る場面はなかった。

「すごく落ち着いてるなぁ、って思いますよ」
 大学生のゆきみちゃん(店での呼び名らしく、本名は不明)は、幸成の姿を見てそう言った。
「初めてなんて思えないですよー。私なんて3ヶ月経ったけどまだわたわたしちゃいますもん」
「まあ、昼間同じ店でやってるからね」

 メニューが違っても、厨房の形には慣れている。必要な材料がわかれば問題はなかった。あとはレシピノートと晴也さんに確認しながら作っていけばいい。
 考えてみれば、居酒屋にある様なツマミを作るのさえ初めてだ。学生の頃も含め、食事としてのメニューしか作ったことがない。

 興奮する頭を他所に、閉店時間がやってくる。名残り惜しい気持ちで、片付けを勧めていく。

「今日は本当に助かったよ。ありがとう」
「いえ、またいつでも頼まれますよ」

 本当に、またこの場所で働きたい。
 そう考えながら、真っ暗ないつもの道を帰った。
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