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十三章 ~還る場所~ キンバリーの世界
聖戦の始まり
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まだ日も登らぬ海上に、島を目指す戦艦が隊列を組み激しく上下に揺れながら進んでいく。甲板の上で祈るようにマグダレンは瞳を閉じている。ハリケーンの為大きく揺れる船の中でよろけることもなく、打ち付ける雨に濡れるのも気にもせず、赤く長い髪をキッチリと纏めた凛々しい姿で立ち続けるマグダレンは勝利の女神のようだった。マグダレンはあえてフードも被らず今の空気を直に触れる事で周りの状況を明確に読み取れるようにしていた。こんな嵐の中でも船団が乱れることなく進めているのは船員たちの腕の良さもあるが、多くのベントゥスの巫の力。それと同時にマグダレンとローレンスだけは感じていた。遠くより彼らを見守りそして微力ながらも海水に働きかけ船の安定をはかる力をあたえている存在を。
【感情的になるなよ、冷静に】
ローレンスからの心話に、マグダレンは少し笑う。
【寧ろそれがあるから戦える。
想い・怒りこそが私の生きる力で武器だ】
マグダレンはそうローレンスに伝え目をカッと開ける。
マグダレンは戦場が近づいてくるにつれ、気持ちが昂揚してくるのを感じる。ローレンスとは異なり、自分はつくづくこういう場が向いているのを実感し苦笑してしまう。憎むべき相手を今度こそ倒せるという喜び、そのことがずっと抱え続けているどうしようもない自分の事を一瞬でも忘れさせてくれる。それに今、この瞬間は自分達にのみ向けられている『あの人』の関心。ローレンスもその見守る意識を感じているからこそ、いつになく戦闘の前に関わらず穏やかで冷静な精神状態である。。
時間とともに後方の空がじんわりと明るくなっていき、世界は少しずつ色を取り戻していく。攻める島の姿も巫や海賊らの眼にもはっきりとみせていく。
【信頼はしているが、馬鹿はするなよ】
ローレンスの小煩い言葉にマグダレンは幸せを噛み締める。まだ味わうことができるローレンスから向けられる自分への親愛だから。
マグダレンは顔を横に振り、自分より後方をいく船に意識を飛ばし、キンバリーとイサールの姿を確認する。緊張した様子のキンバリーだったがマグダレンの気配に気が付いたのだろう。少しだけ笑みを浮かべ右手の中指に嵌められた指輪に嵌ったマグダレンの石にキスをする。その表情を見てマグダレンも安心する。キンバリーは大丈夫、ならばマグダレンは自分のすべきことに集中すればよい。目を閉じて大きく深呼吸してゆっくりと瞳を開けた。
そのタイミングで背後から光の筋が海へと走る。たまたま雲の隙間から太陽が見えてきたのだが、巫達の間から神に感謝の意を捧げる言葉が上がる。マグダレンはそんな言葉に苦笑を華やかな笑みで隠す。神とやらが本当にいるのなら、あんな禍々しい存在を生み出すことものさばらせる事もなかっただろう。しかし太陽の存在はありがたかった。堕人は若干であるが光に弱い。太陽のように激しく刺すような光は特に。そうでなくても背後に太陽を背負った相手というのは、攻撃しにくいものだ。コチラに有利となる要素は多いにこしたことはない。
断崖のように前方にある鉱山は所々窓のように穴が空いておりそこからコチラを戦々恐々と見詰める堕人の様子も小さくはあるが目でも確認出来るようになる。ある程度近づいたところで鉱山から矢放たれてくるが、島に向かって吹き荒れる暴風雨により矢は風に遊ぶ木の葉のように舞い散って海へと落ちていく。
イサールがベルナルドとパシリオ提督は頷き攻撃の号令がかかる。その声と共に、船からも矢が放たれる。そちらは高低差など関係ないように、ハリケーンの風の勢いのままに穴に吸い込まれていく。ベントゥスの巫が良い仕事しているようだ。ただ窓の中に撃ち込むというだけでなく、敵の位置を先に特定し仕留める事を目的として矢を誘導している。堕人が普通にくらうだけでも苦悶する矢を心臓や額などの急所へと受け倒れて反応を無くす堕人の様子をマグダレンは冷静に探査能力を使い見守る。しかも絶妙に混ぜられたキンバリーやイサールが作った結界石が堕人の動きを鈍くしている。
【ラリー、援護を頼む!】
マグダレンはマスクをつけ、手を挙げソレを前方へと向ける。すると前方にいた船がスピードを上げ島へと近づいていく。それに反応しようとした敵がローレンスらの風の巫が放った矢で止められる。マグダレンは神経を研ぎ澄まし結界を貼る。同時に額のサーキュレットの印章が光り熱を帯びるのを感じる。マグダレンは剣を抜き苦笑いしながらも甲板の上を走り出す。舳先までいきその勢いのままに崖面へと大きく身体を飛ばす。聳(そび)える崖をものともせず、鹿のように軽やかにはジャンプして登っていき、崖に穴へと入っていく。他の巫もマグダレンに続き次々と崖に取り付き各自違う穴へと吸い込まれる。
マグダレンは入ったと同時に痛みに悶えていた左右にいた堕人を吹き飛ばし燃やし、更に奥にいた二人に剣を振るい、炎を放つ。
「マグダレン様、危ないですから先陣を切られるのは止めて下さい」
ベルナルドがマグダレンの、前に出て別の堕人を倒す。マグダレンを守ろうと数人連れてついてきてくれたようだ。お陰で近辺の敵はあっという間に倒された。ベルナルドはいつもの華やかな神官長らしい姿ではなく、黒で統一された戦闘用の衣装を着ており、彼の鍛えられた身体のラインをより際立たせ精悍さが増して見えた。防水仕様の布で身体全体を覆い顔の下半分もマスクで覆っているのは。魔の物と闘いで返り血による感染のリスクを抑える為のものである。浴びただけで即感染することはないが、浴びた血をそのまま長時間肌に接触させるのも良い事ではないからだ。
「そのようにお姫様のように守られるというのも新鮮で楽しいですね。
貴方がついてきてくれたのは頼もしい。共に目標地点を制圧しましょう。シスターキンバリーが仕事出来る様にしましょう」
マグダレンはフードを被りながら微笑む。
「了解いたしました」
ベルナルドは真面目に答え、仲間と交信し指示を飛ばす。マグダレンはその指揮は任せ、部屋に大量に打ち込まれている結界石を調整し、石同士がさらに共鳴するように動かす。ローレンスが発見した石の共鳴作用を使った強力な結界。これにより結界石への耐性のある堕人もこの空間に近付けなくなり、後に続く者が安全に鉱山に侵入することが出来る。他の場所でも他の巫の手により同様の手直しが加えられている。海側の空間をそのように制圧しつつ、石の輸出用に洞窟を利用した船着き場を塞ぐ鉄門を解放する為に動く隊と、キンバリーが術を使う予定の空間を確保に動く隊に別れ動いていく。閉じられていた重い鉄柵が上がる音を感じながら。赤髪のマグダレンと長身で黒髪のベルナルドが息のあった動きで舞うように剣を振るい、その後には燃え上がる堕人の亡骸が転がる。流石にダライで神官長にまで上り詰めた男である。ベルナルドはマグダレンに沿うような動きは見事で無駄もなく洗練とされていたもので、的確にマグダレンの意図を読みフォローするように動く。後ろから同行している風の巫が探査術をつかい先にいる敵の様子を二人に随時伝えてくるのでマグダレンとベルナルドは迷いない動きで無心に堕人を滅していく。
風の巫が一際強い敵に気配を伝える、マグダレンは視線を向けベルナルドを制する。他の堕人とは矢や異なる気を纏うその存在の気配にマグダレンの口角がクィッと上がる。
ゆっくりと坑道を進むマグダレン。警戒しながら後に続くベルナルドたち。マグダレンは歩みを止める、後ろの巫らにも目で合図を送り坑道の壁の窪みに身を潜ませる。相手は動く様子はなく坑道の小さな脇道の中で緊張した様子で潜んでいるようだ。
「こんな穴蔵の奥で何をしている?
いや、お似合いか? こういう場所で鼠のように這いずるのが」
マグダレンが先に声を掛けたことで相手の身体がブルルと震える気配を感じる。
「出てこい。それとも穴の中で蒸し焼きになりたいか?」
「止めてくれ! 私は兵士ではない!」
穴の中から出てくる土に汚れた白い髪に覆われた頭。はい出てから、男はマグダレンから距離をとるように離れた所に立つ。赤い瞳が怯えたように襲撃者を見つめている。まだ男は若く緑のジャケットに茶のパンツ。そして肩に革のカバンを下げていて、髪の色が白く目が赤くなければ普通の技術者にも見えそうだ。弱々しそうな外見だがそこから発せられる気は普通ではなく、魔の物特有の禍々しさを帯びている。
「コレが話に聞いていた新種の堕人ですか?」
「わ、私はテラの能力者で、ここでただ採掘作業の指揮をとっていただけです。悪い事は何もしていない!」
ベルナルドの質問に堕人の男が必死という感じで訴える。マグダレンはその言葉を笑う。
「巫を喰って生きておきながらか?」
マグダレンの言葉に、共にいた巫の少し緩んでいた敵意が蘇る。
「あんたたちだって、家畜を喰って生きているじゃないか!」
「だから、お前達の為に喜んで糧になれと? ありえないだろ」
マグダレンが男に向かって鋭く手を振る。その直後、男の胸に結界石を使ったナイフが突き刺さった。男は身体を強張らせたまま背後に倒れる。そのまま身体を痙攣させビクビクと震えている。色々情報を聞く為にあえて急所は外しておいたのだが、想定以上の苦痛だったようだ。
禍々しい真っ赤な色の瞳を見開かれ、眼球自体が別の生き物のようにバラバラに動いている。巫らは男に刺さった石を抜く事もせず男に口枷をはめ手足を拘束する。マグダレンとしては速攻殺したい所だったが、領城の情報を聞き出す為にも今は殺す訳にはいかな。といってもこの堕人は助かったとは言い難い。ここで死んだ方がましだったというくらい苦痛を与えられての尋問の末に処分される。ここで感情のまま動く事の意味はない。
マグダレンは赤い眼の堕人の移送は後から追ってきた巫に任せ、さらに奥の堕人をベルナルドらと滅しにいく。どうやら奥にいた堕人もテラの者ばかりで非戦闘員だったようで大した抵抗もないままに一掃された。
【制圧完了。私達は坑道を戻り、内陸方面エリアへと向かう】
マグダレンは外で待機しているイサールとキンバリーに報告を入れ、元来た坑道へと引き返す。鉱山に突入し戦うローレンスと合流するために。新しい敵を求めて。
【感情的になるなよ、冷静に】
ローレンスからの心話に、マグダレンは少し笑う。
【寧ろそれがあるから戦える。
想い・怒りこそが私の生きる力で武器だ】
マグダレンはそうローレンスに伝え目をカッと開ける。
マグダレンは戦場が近づいてくるにつれ、気持ちが昂揚してくるのを感じる。ローレンスとは異なり、自分はつくづくこういう場が向いているのを実感し苦笑してしまう。憎むべき相手を今度こそ倒せるという喜び、そのことがずっと抱え続けているどうしようもない自分の事を一瞬でも忘れさせてくれる。それに今、この瞬間は自分達にのみ向けられている『あの人』の関心。ローレンスもその見守る意識を感じているからこそ、いつになく戦闘の前に関わらず穏やかで冷静な精神状態である。。
時間とともに後方の空がじんわりと明るくなっていき、世界は少しずつ色を取り戻していく。攻める島の姿も巫や海賊らの眼にもはっきりとみせていく。
【信頼はしているが、馬鹿はするなよ】
ローレンスの小煩い言葉にマグダレンは幸せを噛み締める。まだ味わうことができるローレンスから向けられる自分への親愛だから。
マグダレンは顔を横に振り、自分より後方をいく船に意識を飛ばし、キンバリーとイサールの姿を確認する。緊張した様子のキンバリーだったがマグダレンの気配に気が付いたのだろう。少しだけ笑みを浮かべ右手の中指に嵌められた指輪に嵌ったマグダレンの石にキスをする。その表情を見てマグダレンも安心する。キンバリーは大丈夫、ならばマグダレンは自分のすべきことに集中すればよい。目を閉じて大きく深呼吸してゆっくりと瞳を開けた。
そのタイミングで背後から光の筋が海へと走る。たまたま雲の隙間から太陽が見えてきたのだが、巫達の間から神に感謝の意を捧げる言葉が上がる。マグダレンはそんな言葉に苦笑を華やかな笑みで隠す。神とやらが本当にいるのなら、あんな禍々しい存在を生み出すことものさばらせる事もなかっただろう。しかし太陽の存在はありがたかった。堕人は若干であるが光に弱い。太陽のように激しく刺すような光は特に。そうでなくても背後に太陽を背負った相手というのは、攻撃しにくいものだ。コチラに有利となる要素は多いにこしたことはない。
断崖のように前方にある鉱山は所々窓のように穴が空いておりそこからコチラを戦々恐々と見詰める堕人の様子も小さくはあるが目でも確認出来るようになる。ある程度近づいたところで鉱山から矢放たれてくるが、島に向かって吹き荒れる暴風雨により矢は風に遊ぶ木の葉のように舞い散って海へと落ちていく。
イサールがベルナルドとパシリオ提督は頷き攻撃の号令がかかる。その声と共に、船からも矢が放たれる。そちらは高低差など関係ないように、ハリケーンの風の勢いのままに穴に吸い込まれていく。ベントゥスの巫が良い仕事しているようだ。ただ窓の中に撃ち込むというだけでなく、敵の位置を先に特定し仕留める事を目的として矢を誘導している。堕人が普通にくらうだけでも苦悶する矢を心臓や額などの急所へと受け倒れて反応を無くす堕人の様子をマグダレンは冷静に探査能力を使い見守る。しかも絶妙に混ぜられたキンバリーやイサールが作った結界石が堕人の動きを鈍くしている。
【ラリー、援護を頼む!】
マグダレンはマスクをつけ、手を挙げソレを前方へと向ける。すると前方にいた船がスピードを上げ島へと近づいていく。それに反応しようとした敵がローレンスらの風の巫が放った矢で止められる。マグダレンは神経を研ぎ澄まし結界を貼る。同時に額のサーキュレットの印章が光り熱を帯びるのを感じる。マグダレンは剣を抜き苦笑いしながらも甲板の上を走り出す。舳先までいきその勢いのままに崖面へと大きく身体を飛ばす。聳(そび)える崖をものともせず、鹿のように軽やかにはジャンプして登っていき、崖に穴へと入っていく。他の巫もマグダレンに続き次々と崖に取り付き各自違う穴へと吸い込まれる。
マグダレンは入ったと同時に痛みに悶えていた左右にいた堕人を吹き飛ばし燃やし、更に奥にいた二人に剣を振るい、炎を放つ。
「マグダレン様、危ないですから先陣を切られるのは止めて下さい」
ベルナルドがマグダレンの、前に出て別の堕人を倒す。マグダレンを守ろうと数人連れてついてきてくれたようだ。お陰で近辺の敵はあっという間に倒された。ベルナルドはいつもの華やかな神官長らしい姿ではなく、黒で統一された戦闘用の衣装を着ており、彼の鍛えられた身体のラインをより際立たせ精悍さが増して見えた。防水仕様の布で身体全体を覆い顔の下半分もマスクで覆っているのは。魔の物と闘いで返り血による感染のリスクを抑える為のものである。浴びただけで即感染することはないが、浴びた血をそのまま長時間肌に接触させるのも良い事ではないからだ。
「そのようにお姫様のように守られるというのも新鮮で楽しいですね。
貴方がついてきてくれたのは頼もしい。共に目標地点を制圧しましょう。シスターキンバリーが仕事出来る様にしましょう」
マグダレンはフードを被りながら微笑む。
「了解いたしました」
ベルナルドは真面目に答え、仲間と交信し指示を飛ばす。マグダレンはその指揮は任せ、部屋に大量に打ち込まれている結界石を調整し、石同士がさらに共鳴するように動かす。ローレンスが発見した石の共鳴作用を使った強力な結界。これにより結界石への耐性のある堕人もこの空間に近付けなくなり、後に続く者が安全に鉱山に侵入することが出来る。他の場所でも他の巫の手により同様の手直しが加えられている。海側の空間をそのように制圧しつつ、石の輸出用に洞窟を利用した船着き場を塞ぐ鉄門を解放する為に動く隊と、キンバリーが術を使う予定の空間を確保に動く隊に別れ動いていく。閉じられていた重い鉄柵が上がる音を感じながら。赤髪のマグダレンと長身で黒髪のベルナルドが息のあった動きで舞うように剣を振るい、その後には燃え上がる堕人の亡骸が転がる。流石にダライで神官長にまで上り詰めた男である。ベルナルドはマグダレンに沿うような動きは見事で無駄もなく洗練とされていたもので、的確にマグダレンの意図を読みフォローするように動く。後ろから同行している風の巫が探査術をつかい先にいる敵の様子を二人に随時伝えてくるのでマグダレンとベルナルドは迷いない動きで無心に堕人を滅していく。
風の巫が一際強い敵に気配を伝える、マグダレンは視線を向けベルナルドを制する。他の堕人とは矢や異なる気を纏うその存在の気配にマグダレンの口角がクィッと上がる。
ゆっくりと坑道を進むマグダレン。警戒しながら後に続くベルナルドたち。マグダレンは歩みを止める、後ろの巫らにも目で合図を送り坑道の壁の窪みに身を潜ませる。相手は動く様子はなく坑道の小さな脇道の中で緊張した様子で潜んでいるようだ。
「こんな穴蔵の奥で何をしている?
いや、お似合いか? こういう場所で鼠のように這いずるのが」
マグダレンが先に声を掛けたことで相手の身体がブルルと震える気配を感じる。
「出てこい。それとも穴の中で蒸し焼きになりたいか?」
「止めてくれ! 私は兵士ではない!」
穴の中から出てくる土に汚れた白い髪に覆われた頭。はい出てから、男はマグダレンから距離をとるように離れた所に立つ。赤い瞳が怯えたように襲撃者を見つめている。まだ男は若く緑のジャケットに茶のパンツ。そして肩に革のカバンを下げていて、髪の色が白く目が赤くなければ普通の技術者にも見えそうだ。弱々しそうな外見だがそこから発せられる気は普通ではなく、魔の物特有の禍々しさを帯びている。
「コレが話に聞いていた新種の堕人ですか?」
「わ、私はテラの能力者で、ここでただ採掘作業の指揮をとっていただけです。悪い事は何もしていない!」
ベルナルドの質問に堕人の男が必死という感じで訴える。マグダレンはその言葉を笑う。
「巫を喰って生きておきながらか?」
マグダレンの言葉に、共にいた巫の少し緩んでいた敵意が蘇る。
「あんたたちだって、家畜を喰って生きているじゃないか!」
「だから、お前達の為に喜んで糧になれと? ありえないだろ」
マグダレンが男に向かって鋭く手を振る。その直後、男の胸に結界石を使ったナイフが突き刺さった。男は身体を強張らせたまま背後に倒れる。そのまま身体を痙攣させビクビクと震えている。色々情報を聞く為にあえて急所は外しておいたのだが、想定以上の苦痛だったようだ。
禍々しい真っ赤な色の瞳を見開かれ、眼球自体が別の生き物のようにバラバラに動いている。巫らは男に刺さった石を抜く事もせず男に口枷をはめ手足を拘束する。マグダレンとしては速攻殺したい所だったが、領城の情報を聞き出す為にも今は殺す訳にはいかな。といってもこの堕人は助かったとは言い難い。ここで死んだ方がましだったというくらい苦痛を与えられての尋問の末に処分される。ここで感情のまま動く事の意味はない。
マグダレンは赤い眼の堕人の移送は後から追ってきた巫に任せ、さらに奥の堕人をベルナルドらと滅しにいく。どうやら奥にいた堕人もテラの者ばかりで非戦闘員だったようで大した抵抗もないままに一掃された。
【制圧完了。私達は坑道を戻り、内陸方面エリアへと向かう】
マグダレンは外で待機しているイサールとキンバリーに報告を入れ、元来た坑道へと引き返す。鉱山に突入し戦うローレンスと合流するために。新しい敵を求めて。
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――――――――――
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