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十章 ~悔恨の先~ カロルの世界
未来に堕ちていく
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深緑の森の中を赤毛の少女が一人歩いていた。真っすぐ正面を見つめ歩いているように見えるが、その内面は複雑で喜び哀しみ苛立ち様々な感情が渦巻いていて、それが少女の心を覆い尽くしているために鳥の囀りも木々のざわめく音も彼女の耳には届いていない。
目的地である大木の下にたどり着き少女は大きく深呼吸をする。そして木を登り秘密基地へと入る。一人分の空間を開けたいつもの場所に座り再び溜息をつく。昔は四人で入っても余裕の空間だったが、今は二人で丁度良い。四人の思い出の場所は、少女にとって別の意味で特別で大切な場所となっていた。
落ち着いたことで今日の出来事を頭の中で再生していく。二児の母親となったマリアとマリアの可愛らしい子供達、その二人を優しく見守るマリアの伽の相手であり婚約者となった男性。少女の婚約者であるトゥルボーの事。そして……。
誰かが登ってくる気配に少女は顔を上げ、表情を喜の色に染める。ローレンスが伽の相手との顔合わせを終えてこっちにやってきたようだ。ローレンスも、少女を見てホッとしたように表情を和らげる。
「おかえり! ローリー」
手を広げて少女は相手を迎える。ローレンスはフフと笑い少女の頬にキスをする。
「ただいま。マリアはどうだった?」
少女の横に座りその肩に手を回す。少女も甘えるように身体を寄せる。
「立派なお母さんだったよ! 二人目だしね! それに相手の人も穏やかそうで素敵な感じだった。
マリアは本当に綺麗だった。眩しいくらいに。なんていうのか強くなったし、一回りも二回りも大きくなったという感じ?」
マリアは少女の目からみて本当に美しかった。自分と同じ場所にいて近い存在だった筈だが、子供を抱くマリアはなんというか大きく神々しく見えた。そうウットリと語る友人にローレンスも頬を緩ませて笑う。
「そうか良かった。
……でも相手の男の気持ちは複雑だろうな、別の男との伽を待っての結婚とは」
マリアの婚約者は一人目の伽の相手で、今度生まれた子は別の男性と伽により生まれた子供。最初の子供はすでに二人の子供として家族のように暮らしている。
「二人とも、どちらの子供も自分たちの子として育てるみたい」
ローレンスは驚いたように目を丸くする。
「スゴイな。相手はなんとも大らかで器がデカイ。マリアも良い男を見つけて良かった」
その何気ない一言に、ローレンスの愛する人への強い執着を感じ少女は少し切なくなる。
「ローリーのほうはどうだったの? 相手の女性はどんな感じ? 綺麗だった? 色っぽい人?」
心の奥にキリキリとした嫉妬を覚えながらも、少女は笑顔でそう聞いてみる。そう聞かれたローレンスが顔を不快そうに顰め、そうして大きく溜息をつく。
「別に顔とかどういう人なのかも関係ない。ただ伽を行うだけの相手だ」
その言葉にどう少女は反応すべきか惑う。愛する人でなければ、どうでも良いという言葉に喜びを感じる反面、哀しみも感じる。
「でも、ローリーの子供を産む女性だよ。私にとっては関係なくない。その女性には子供を慈しんで大切に育てて欲しい……」
(私だったら、ローリーの子供だったら何よりも大切に育てる)そう言いたくても続けられなかった。ローレンスはハッとしたような顔をして気まずそうにする。
「悪かった、同じく伽を前にしているお前に言うべき言葉ではなかった。
でもトゥルボー様は俺とは違う。
それに公正な方でアミークスへの変な偏見もないし、慈愛もある方だ。お前を大事にしてくださるよ」
そう言いながら頭を優しく撫でてくるローレンスに少女はすり寄るように身体を預ける。
トゥルボーはソーリスに次ぐ二位の地位にありノービリスからしてみたら雲の上のような方である。にも関らず気さくに少女らと接してくるトゥルボーに親しみを感じているし、共にいる時間は少女にとって楽しい時間である。その自分を柔らかな言葉、撫でてくるその手の温かさも、泣きたくなるくらい優しくてその胸に縋りたくなる。尊敬しているし、トゥルボーも親愛を示してくれる。そういう意味でもこの結婚は少女にとって恵まれていて幸せなモノだといえる。だが二人の立場は違いすぎる。ノービリスとアミークスその両者の溝が大きい。マリアとその婚約者のような夫婦関係なんてありえないだろう。
「そうだね。私だけでなくキリーも気にかけて下さっている。伽の後は私とキリーで一緒に暮らせるようにと配慮してくださったし。
でも結婚といいつつも、契約上の関係なのよね。マリアのように愛で結ばれた関係ではない。ノービリスがアミークスを愛するなんて事はありえない。
婚姻によって后という準ノービリスの地位を得る代わりに、終わりのないノービリスの子育てという長い日々が待っているだけ」
ローレンスはかなり不敬な発言をしている少女を怒ることもせず真面目な表情その話を聞き、顔を辛そうに歪める。
「怖いのか? 嫌ならば何故、后の話を受けた? 断れば良かったのに」
少女は首を横に振る。実際問題この世界で生きていく上で、断るというのは難しい。一度拒否したときの周囲の反応で嫌という程思い知った。
「怖いのは、誰と伽をするのでも同じよ。それにさっきのローリーの事怒れないね。私もローリー以外だったら誰でももう同じ。だったら最高の相手と交わって自分の子供を産みたい。そう言う意味では私も動物なんだなと思う。メスとしてより強い遺伝子を求める。子供が私の生きた証にもなるし」
ローレンスは少女を抱きしめる。
「そうやって一人で抱え込むな。俺達は仲間だろ? 俺の命が続く限りお前達を見守る。いや見守らせてくれ。俺を置いていくな」
少女はしばらくその腕の暖かさを味わっていたが、腕を動かし掌でゆっくり抱きしめてくれる相手を撫で始める。初めはローレンスを宥めるように慰めるように優しく慈しむような手付きだったが、次第に……。
視線を交わらせどちらからともなくキスを交わす。
あの事は一度だけのつもりだった。しかし性の悦びは麻薬のように不安定で悩みを抱く二人を夢中にさせ依存させていった。二人はあれから人の目を盗んで身体を交わす事を繰り返していた。
キスをしながら二人は互いの服を慣れた様子で脱がしあい愛撫しあう。相手が感じてくれると、より自分が燃える事が出来るので夢中でより大胆に相手を刺激する。互いの身体を舐めあいキスをして、動物のように身体を絡ませ抱き合う二人。
「マ、マギッもういいか?」
勃立したモノを愛しげに舐めキスをしている少女に、ローレンスは余裕ないような声を上げる。ローレンスに少女は嬉しそうに頷く。身体を起こし、ユックリと足を広げ相手を迎える準備をして微笑む。視線が少女の身体の上を動いていき妖しく濡れて誘う股間に止まり、ローレンスの喉がゴクリと鳴った。花に誘われる蜂のようにローレンスは少女に近付き蜜滴らせたそこに己を突き入れる。体を繋げてしまうと、もう二人の間で言葉が交わされる事もなくひたすら身体を揺らしぶつけあう。動物のような声をあげ夢中で快楽を追うだけである、少女はこの瞬間だけが最高に幸せだった。この時だけは愛する男が自分だけを感じ、求めてくれている。四肢をローレンスにより密着するように絡め、少女の唇は歓びの声をあげ、その緑の瞳からはボロボロと大量の涙を流す。
何度かの高まりを超えて、二人は抱き合ったままその余韻を楽しんでいる。子猫がじゃれあっているかのように、真っ裸で噛み合いをしながらクスクス笑い合う。この一連の行為はこの時期の二人にとっては最高の癒しであり、今唯一感じられる人生の歓びだった。しかしそれは自分や周囲を裏切り、誤魔化しの癒しと歓びでしかない。転がる石のように二人は避けられない望まぬ未来に堕ちていく。
目的地である大木の下にたどり着き少女は大きく深呼吸をする。そして木を登り秘密基地へと入る。一人分の空間を開けたいつもの場所に座り再び溜息をつく。昔は四人で入っても余裕の空間だったが、今は二人で丁度良い。四人の思い出の場所は、少女にとって別の意味で特別で大切な場所となっていた。
落ち着いたことで今日の出来事を頭の中で再生していく。二児の母親となったマリアとマリアの可愛らしい子供達、その二人を優しく見守るマリアの伽の相手であり婚約者となった男性。少女の婚約者であるトゥルボーの事。そして……。
誰かが登ってくる気配に少女は顔を上げ、表情を喜の色に染める。ローレンスが伽の相手との顔合わせを終えてこっちにやってきたようだ。ローレンスも、少女を見てホッとしたように表情を和らげる。
「おかえり! ローリー」
手を広げて少女は相手を迎える。ローレンスはフフと笑い少女の頬にキスをする。
「ただいま。マリアはどうだった?」
少女の横に座りその肩に手を回す。少女も甘えるように身体を寄せる。
「立派なお母さんだったよ! 二人目だしね! それに相手の人も穏やかそうで素敵な感じだった。
マリアは本当に綺麗だった。眩しいくらいに。なんていうのか強くなったし、一回りも二回りも大きくなったという感じ?」
マリアは少女の目からみて本当に美しかった。自分と同じ場所にいて近い存在だった筈だが、子供を抱くマリアはなんというか大きく神々しく見えた。そうウットリと語る友人にローレンスも頬を緩ませて笑う。
「そうか良かった。
……でも相手の男の気持ちは複雑だろうな、別の男との伽を待っての結婚とは」
マリアの婚約者は一人目の伽の相手で、今度生まれた子は別の男性と伽により生まれた子供。最初の子供はすでに二人の子供として家族のように暮らしている。
「二人とも、どちらの子供も自分たちの子として育てるみたい」
ローレンスは驚いたように目を丸くする。
「スゴイな。相手はなんとも大らかで器がデカイ。マリアも良い男を見つけて良かった」
その何気ない一言に、ローレンスの愛する人への強い執着を感じ少女は少し切なくなる。
「ローリーのほうはどうだったの? 相手の女性はどんな感じ? 綺麗だった? 色っぽい人?」
心の奥にキリキリとした嫉妬を覚えながらも、少女は笑顔でそう聞いてみる。そう聞かれたローレンスが顔を不快そうに顰め、そうして大きく溜息をつく。
「別に顔とかどういう人なのかも関係ない。ただ伽を行うだけの相手だ」
その言葉にどう少女は反応すべきか惑う。愛する人でなければ、どうでも良いという言葉に喜びを感じる反面、哀しみも感じる。
「でも、ローリーの子供を産む女性だよ。私にとっては関係なくない。その女性には子供を慈しんで大切に育てて欲しい……」
(私だったら、ローリーの子供だったら何よりも大切に育てる)そう言いたくても続けられなかった。ローレンスはハッとしたような顔をして気まずそうにする。
「悪かった、同じく伽を前にしているお前に言うべき言葉ではなかった。
でもトゥルボー様は俺とは違う。
それに公正な方でアミークスへの変な偏見もないし、慈愛もある方だ。お前を大事にしてくださるよ」
そう言いながら頭を優しく撫でてくるローレンスに少女はすり寄るように身体を預ける。
トゥルボーはソーリスに次ぐ二位の地位にありノービリスからしてみたら雲の上のような方である。にも関らず気さくに少女らと接してくるトゥルボーに親しみを感じているし、共にいる時間は少女にとって楽しい時間である。その自分を柔らかな言葉、撫でてくるその手の温かさも、泣きたくなるくらい優しくてその胸に縋りたくなる。尊敬しているし、トゥルボーも親愛を示してくれる。そういう意味でもこの結婚は少女にとって恵まれていて幸せなモノだといえる。だが二人の立場は違いすぎる。ノービリスとアミークスその両者の溝が大きい。マリアとその婚約者のような夫婦関係なんてありえないだろう。
「そうだね。私だけでなくキリーも気にかけて下さっている。伽の後は私とキリーで一緒に暮らせるようにと配慮してくださったし。
でも結婚といいつつも、契約上の関係なのよね。マリアのように愛で結ばれた関係ではない。ノービリスがアミークスを愛するなんて事はありえない。
婚姻によって后という準ノービリスの地位を得る代わりに、終わりのないノービリスの子育てという長い日々が待っているだけ」
ローレンスはかなり不敬な発言をしている少女を怒ることもせず真面目な表情その話を聞き、顔を辛そうに歪める。
「怖いのか? 嫌ならば何故、后の話を受けた? 断れば良かったのに」
少女は首を横に振る。実際問題この世界で生きていく上で、断るというのは難しい。一度拒否したときの周囲の反応で嫌という程思い知った。
「怖いのは、誰と伽をするのでも同じよ。それにさっきのローリーの事怒れないね。私もローリー以外だったら誰でももう同じ。だったら最高の相手と交わって自分の子供を産みたい。そう言う意味では私も動物なんだなと思う。メスとしてより強い遺伝子を求める。子供が私の生きた証にもなるし」
ローレンスは少女を抱きしめる。
「そうやって一人で抱え込むな。俺達は仲間だろ? 俺の命が続く限りお前達を見守る。いや見守らせてくれ。俺を置いていくな」
少女はしばらくその腕の暖かさを味わっていたが、腕を動かし掌でゆっくり抱きしめてくれる相手を撫で始める。初めはローレンスを宥めるように慰めるように優しく慈しむような手付きだったが、次第に……。
視線を交わらせどちらからともなくキスを交わす。
あの事は一度だけのつもりだった。しかし性の悦びは麻薬のように不安定で悩みを抱く二人を夢中にさせ依存させていった。二人はあれから人の目を盗んで身体を交わす事を繰り返していた。
キスをしながら二人は互いの服を慣れた様子で脱がしあい愛撫しあう。相手が感じてくれると、より自分が燃える事が出来るので夢中でより大胆に相手を刺激する。互いの身体を舐めあいキスをして、動物のように身体を絡ませ抱き合う二人。
「マ、マギッもういいか?」
勃立したモノを愛しげに舐めキスをしている少女に、ローレンスは余裕ないような声を上げる。ローレンスに少女は嬉しそうに頷く。身体を起こし、ユックリと足を広げ相手を迎える準備をして微笑む。視線が少女の身体の上を動いていき妖しく濡れて誘う股間に止まり、ローレンスの喉がゴクリと鳴った。花に誘われる蜂のようにローレンスは少女に近付き蜜滴らせたそこに己を突き入れる。体を繋げてしまうと、もう二人の間で言葉が交わされる事もなくひたすら身体を揺らしぶつけあう。動物のような声をあげ夢中で快楽を追うだけである、少女はこの瞬間だけが最高に幸せだった。この時だけは愛する男が自分だけを感じ、求めてくれている。四肢をローレンスにより密着するように絡め、少女の唇は歓びの声をあげ、その緑の瞳からはボロボロと大量の涙を流す。
何度かの高まりを超えて、二人は抱き合ったままその余韻を楽しんでいる。子猫がじゃれあっているかのように、真っ裸で噛み合いをしながらクスクス笑い合う。この一連の行為はこの時期の二人にとっては最高の癒しであり、今唯一感じられる人生の歓びだった。しかしそれは自分や周囲を裏切り、誤魔化しの癒しと歓びでしかない。転がる石のように二人は避けられない望まぬ未来に堕ちていく。
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