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五章 ~移ろいゆく世界~ キンバリーの世界
場違いな男
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国境を越え鬱蒼とした森を越えた先にガルモンの街はあった。ガルモンは皇国ダライの交易の要の一つでもあることからかなりの賑わいだった。ダライ皇国は北方では一・二を争う国だけにそこに流れる物や人も多いからだろう。キンバリーはその賑わいに眼を丸くするものの、逆にいろんな人がいすぎることで、巫である三人が歩いていても、誰も注目せずにやり過ごしてくれる状況は心地よかった。田舎ほど巫の存在は特別視され、必要以上に構われたり、逆に怖れられたりするからだ。ここだと、巫も商人も盗人も逃亡者も皆全て普通の旅人となってしまうようだ。
三人は手頃な宿屋に身を寄せ、そこで一晩過ごし身体を休め、次の日はそれぞれ別行動で街の中で過ごすことになる。
ローレンスは傷んだ装備を持って鍛冶屋や修理屋に行き、マグダレンは前の晩三人で作成した結界石を売りに行き、キンバリーは資材調達という感じで分担し雑用を行うことにしたのだ。キンバリーはやや世間知らずな部分はまだあるものの、意外に慎重で無用にトラブルに巻き込まれることも引き起こすこともないために、最近では買い出しも一人で任されるようになっていた。
とはいえ値段交渉のある石の売買、頑固でプライドの高い職人相手の修繕依頼は見た目が子供のキンバリーには面倒臭い問題も起こるので、買い出しがキンバリーの仕事という流れになっていた。逆にキンバリーが可愛く微笑めば価格が安くなったり、オマケがついてきたりするので、ソレはソレで適所適材というべきなのかもしれない。
早々に必要な買い物を終えたキンバリーはズッシリと重くなった鞄と、軽くなった財布を手に、路上に商品を広げ販売している雑貨屋の商品をジッと見つめていた。明らかに壊れているのではないか? という生活用品から用途の良く分からない道具、武器と売っているものにはまるで統一感がなく、店主の顔見ても片目が刃物によると思われる傷によりつぶれており、色んな意味で怪しい商品ばかりだ。とはいえ、市場においてそんな店は珍しくなく、キンバリーもそんな店での買い物は嫌いではなかった。その中で背中に鳥の羽をつけた女性の彫刻が施された髪留めに眼がとまる。価格がキンバリーが今もっているお金の二倍の価格に溜息をつくしかない。キンバリーの財布の中のお金は、キンバリーだけのものではない。お買い物をして余ったお金と、キンバリーが与えられた予算内で収めようと市場で頑張って値切った成果でもある。その値切った分の価格でなんとか手にいれたいものである。
「お嬢ちゃん、これはもう滅びてしまったシナン王国の姫君がつけていた一級品だよ。これでも安いくらいだ」
値切り交渉をするキンバリーに、店主は首を横にふりながら渋い顔でそんな事をいってくる。姫君の持ち物としては素朴過ぎる代物だが、男はそう言い張り、それ以上下げる気はないらしい。欲しいが諦らめるしかないようだ。溜息をついていると、目の前で突然その髪留めが横から出てきた手にとられる。フワリと爽やかで落ち着くウッディーな香りがする。その人物がつけている香水なのだろう。チラリと目の端に黒いマントがうつる。その人物のマントは滑らかな光沢があり、良く見ると黒に黒の細かい刺繍が施されたかなり手のかかったものであることが分かった。
「これいくら?」
柔らかい男の声がして、店主がニヤニヤと先程キンバリーに言った価格よりも倍程高めの価格を提示してくる。金持ちの上客とみて高い価格をふっかけていったようだ。騙されるのは可哀想だと男に何かを言おうと顔をあげてキンバリーは眼を丸くする。そこにはとてつもなく整った顔をした男がいたからだ。普通整いすぎた顔というのはマグダレンがそうであるように冷たく感じるものだが、口角が少しあがった形のよい唇のせいか、明るく優しい緑の色で男性にしては大きめな瞳の所為か優しい雰囲気を漂わせていた。こんな雑然とした市場にはハッキリいって場違いな感じの育ちの良い上品な空気を漂わせた男性。柔らかそうな茶色の髪に、スッと整った目鼻立ち。キンバリーの視線に気が付いたのか、視線を隣に向けてきた。目があうとその瞳は細められ柔らかい笑みを浮かべてくる。キンバリーが思わず見惚れてしまうのも仕方がないのかもしれない。それくらい秀美な笑みだった。
そんなキンバリーから男は店主に視線を戻す。
「じゃあ、コイツでいいかな?」
そう言って重そうな袋から金色のものを取り出し店主に渡す。店主はその手に載せられたものを見て驚愕し、震えながらも激しく顔を縦に何度もふる。キンバリーも唖然とする。それは金貨だった。金貨なんて、こんな露天販売しているような場所で使われる通貨ではない。それで、恐らくはこの店にあるものをゴッソリ買えるのではないだろうか? 盗品など出所もハッキリしてないであろうモノばかり売っている怪しげな店である。それでもキンバリーに届かなかった価格であるが。多すぎるお金を受け取りながら店主はもう拳を握り返す気はないようだ。そして諂った表情で男を見上げる。そんな回りの様子に気が付いていないのか、男は嬉しそうに髪留めを手にとり店主に『じゃあ、もらうよ』と声をかける。男は釣りを貰うという考えもないようだ。
「他にも、良い商品がありますが」
店主の言葉に、男は上品に笑い首をふる。
「いやこれだけでいい」
恐らくは金貨が一杯はいっているであろう袋を男が懐へとしまうのを、店主は残念そうに、周囲の人達は気持ちわるく熱い視線を注いでいるのをキンバリーは感じた。
「あんたね、何、馬鹿な事をしてるの!?」
思わず叫ぶキンバリーに店長は余計な事いうなと顔を顰める。男はニコニコと怒っているキンバリーを見つめ返す。その表情に次に継ぐ言葉を失ったキンバリーの手を、とり髪留めをポンと載せる。
「どうぞ」
ニッコリと笑う男にキンバリーは絶句する。
「は……なんで?」
そして出てきたのはなんとも間抜けな質問だった。男はその様子をクスクスと笑い見つめてくる。綺麗な顔をしているだけにその笑顔は現実離れしていて、少しドキドキするのを感じた。
「だって、君、凄く欲しそうにしていただろ?」
キンバリーは慌てて首を横にふる。
「だとしても、貴方から貰う理由がありません。お返しします」
手を男の方にやり返そうとするが男は受け取る様子がない。男はよく分からないという感じで首を傾げている。
「だって、それは俺がもっていても仕方がないし。君は欲しがっている。ならば君が手にしたほうがいいだろう?」
言っている言葉は理解しているし、言っている言葉は間違えてはいない。しかしキンバリーには意味がよく分からなかった。
市場にいる人が皆、そのやりとりをシッカリみているのを感じる。顔に自信のある女はたかるために、腕に自信のある男は隙をみて金を奪ってやろうと男を囲むように遠巻きに近付いてくるのを感じる。キンバリーは男の手をとり、強引にこの場を離れる事にした。なんとか厄介そうな存在をまき、街の門の前の広場まで連れてきて、改めてキンバリーは男と向き直る。
「貴方ね」
男の行動のどこから突っ込んだらよいのかと、キンバリーは悩む。
「何故怒っているの?」
キンバリーは暢気に聞いてくる男に溜息をつく。
「一つ、普通女性は見知らぬ相手から高価なプレゼントなんて簡単に受け取らない! 二つ目は買い物はその場に合った相場を守ってすること! 三つ目不用意に人前で大金を見せびらかさないこと!」
男はよく分かってないようにポカンとした顔をして首を傾げる。
「それで、誰かに迷惑かけた?」
「さっきの店主にしても、突然大金を手にしたことで、他の人間に襲われるという危険が増えたかもしれない。それに貴方だってそう」
男はその言葉に少し考えるような素振りを見せるが、脳天気に見える明るい顔で笑いかけてくる。
「別に、俺はあのアクセサリーがほしかった、あの男は売りたかった。双方が納得した上での取引だから責められるべき事だと思わないし、その結果あの男に何かが起こったとしてもそれはあの男の自己責任だ」
(ならば、貴方が襲われる事も、自己責任でいいんですね?)
キンバリーは心の中で聞こえぬ声で問いかけてしまう。
「それに俺は貴方に興味をもった。それで喜んでもらいたくてアクセサリーを贈ったそれがオカシイ事ですか?」
『興味をもった』という言葉にキンバリーはドキっとする。マグダレンに対しては酒場で酒を奢ってくる男とか、プレゼントを貢ごうとしてくる人はいるが、幼い見た目のキンバリーは、そんな事をされるのは初めてだったからだ。
『世の中には、幼い子供とか同性に性的興奮を覚える変態がいるから!』
同時にマグダレンの言葉も思い出す。つまりは外見が子供であるキンバリーに興味を覚えるという事は、この男は世に言う幼児性愛者ということかとキンバリーは納得する。
《キミー今どこ? こちらの仕事は終わったよ》
マグダレンの心話が、届く。
《市場の東側の門の所》
キンバリーは何も考えず素直に場所を答える。前では男が無邪気な笑みを浮かべ立っている。
《そんな所で何を?》
マグダレンの声が返ってきた。市場を散策したら、荷物もあるので直ぐに宿屋に戻るのが今までのキンバリーの行動なので、不思議に思うのは当然かもしれない。
この男が心配で、あえて憲兵詰め所の前であるこの場所に移動させたのだ。歩く金庫だとバレバレな男をあそこで放置する事も出来なかった。
「良かったら、お茶でも楽しみませんか? 知らない人だから受け取れないというならば、もっと会話して理解しあえばいい」
男が朗らかな笑みを浮かべキンバリーに手を差し伸べ誘ってくる。
《凄い世間知らずで金持ちの小児性愛者にお茶に誘われている所》
キンバリーは男に気を取られ、どう返事をすべきか悩んでいたために、かなりストレートな表現で状況をマグダレンに説明してしまった事に気が付いた。マグダレンが慌てるのを感じた。会話による言葉より、心話は感じたままの言葉を発してしまいがちだからだ。
《何やっているの!! そんなヤツは股関を思いっきり蹴り上げて、サッサと離れて!!》
マグダレンの怒り心頭の言葉に、キンバリーは流石に不味い説明だったと反省をする。
「もちろん、俺が奢りますよ。あっ俺の名はイサール。宜しく」
ニッコリと笑い自己紹介している男の背後には、チャンスがあれば身ぐるみをはごうとしている先程の市場にいた怪しげな男がチラホラ。そして街の奧から殺る気まんまんで猛然とイサールに迫るマグダレン。どちらの存在がよりイサールにとって危険なのだろうかと悩みながら、キンバリーはイサールの笑顔を見つめていた。
三人は手頃な宿屋に身を寄せ、そこで一晩過ごし身体を休め、次の日はそれぞれ別行動で街の中で過ごすことになる。
ローレンスは傷んだ装備を持って鍛冶屋や修理屋に行き、マグダレンは前の晩三人で作成した結界石を売りに行き、キンバリーは資材調達という感じで分担し雑用を行うことにしたのだ。キンバリーはやや世間知らずな部分はまだあるものの、意外に慎重で無用にトラブルに巻き込まれることも引き起こすこともないために、最近では買い出しも一人で任されるようになっていた。
とはいえ値段交渉のある石の売買、頑固でプライドの高い職人相手の修繕依頼は見た目が子供のキンバリーには面倒臭い問題も起こるので、買い出しがキンバリーの仕事という流れになっていた。逆にキンバリーが可愛く微笑めば価格が安くなったり、オマケがついてきたりするので、ソレはソレで適所適材というべきなのかもしれない。
早々に必要な買い物を終えたキンバリーはズッシリと重くなった鞄と、軽くなった財布を手に、路上に商品を広げ販売している雑貨屋の商品をジッと見つめていた。明らかに壊れているのではないか? という生活用品から用途の良く分からない道具、武器と売っているものにはまるで統一感がなく、店主の顔見ても片目が刃物によると思われる傷によりつぶれており、色んな意味で怪しい商品ばかりだ。とはいえ、市場においてそんな店は珍しくなく、キンバリーもそんな店での買い物は嫌いではなかった。その中で背中に鳥の羽をつけた女性の彫刻が施された髪留めに眼がとまる。価格がキンバリーが今もっているお金の二倍の価格に溜息をつくしかない。キンバリーの財布の中のお金は、キンバリーだけのものではない。お買い物をして余ったお金と、キンバリーが与えられた予算内で収めようと市場で頑張って値切った成果でもある。その値切った分の価格でなんとか手にいれたいものである。
「お嬢ちゃん、これはもう滅びてしまったシナン王国の姫君がつけていた一級品だよ。これでも安いくらいだ」
値切り交渉をするキンバリーに、店主は首を横にふりながら渋い顔でそんな事をいってくる。姫君の持ち物としては素朴過ぎる代物だが、男はそう言い張り、それ以上下げる気はないらしい。欲しいが諦らめるしかないようだ。溜息をついていると、目の前で突然その髪留めが横から出てきた手にとられる。フワリと爽やかで落ち着くウッディーな香りがする。その人物がつけている香水なのだろう。チラリと目の端に黒いマントがうつる。その人物のマントは滑らかな光沢があり、良く見ると黒に黒の細かい刺繍が施されたかなり手のかかったものであることが分かった。
「これいくら?」
柔らかい男の声がして、店主がニヤニヤと先程キンバリーに言った価格よりも倍程高めの価格を提示してくる。金持ちの上客とみて高い価格をふっかけていったようだ。騙されるのは可哀想だと男に何かを言おうと顔をあげてキンバリーは眼を丸くする。そこにはとてつもなく整った顔をした男がいたからだ。普通整いすぎた顔というのはマグダレンがそうであるように冷たく感じるものだが、口角が少しあがった形のよい唇のせいか、明るく優しい緑の色で男性にしては大きめな瞳の所為か優しい雰囲気を漂わせていた。こんな雑然とした市場にはハッキリいって場違いな感じの育ちの良い上品な空気を漂わせた男性。柔らかそうな茶色の髪に、スッと整った目鼻立ち。キンバリーの視線に気が付いたのか、視線を隣に向けてきた。目があうとその瞳は細められ柔らかい笑みを浮かべてくる。キンバリーが思わず見惚れてしまうのも仕方がないのかもしれない。それくらい秀美な笑みだった。
そんなキンバリーから男は店主に視線を戻す。
「じゃあ、コイツでいいかな?」
そう言って重そうな袋から金色のものを取り出し店主に渡す。店主はその手に載せられたものを見て驚愕し、震えながらも激しく顔を縦に何度もふる。キンバリーも唖然とする。それは金貨だった。金貨なんて、こんな露天販売しているような場所で使われる通貨ではない。それで、恐らくはこの店にあるものをゴッソリ買えるのではないだろうか? 盗品など出所もハッキリしてないであろうモノばかり売っている怪しげな店である。それでもキンバリーに届かなかった価格であるが。多すぎるお金を受け取りながら店主はもう拳を握り返す気はないようだ。そして諂った表情で男を見上げる。そんな回りの様子に気が付いていないのか、男は嬉しそうに髪留めを手にとり店主に『じゃあ、もらうよ』と声をかける。男は釣りを貰うという考えもないようだ。
「他にも、良い商品がありますが」
店主の言葉に、男は上品に笑い首をふる。
「いやこれだけでいい」
恐らくは金貨が一杯はいっているであろう袋を男が懐へとしまうのを、店主は残念そうに、周囲の人達は気持ちわるく熱い視線を注いでいるのをキンバリーは感じた。
「あんたね、何、馬鹿な事をしてるの!?」
思わず叫ぶキンバリーに店長は余計な事いうなと顔を顰める。男はニコニコと怒っているキンバリーを見つめ返す。その表情に次に継ぐ言葉を失ったキンバリーの手を、とり髪留めをポンと載せる。
「どうぞ」
ニッコリと笑う男にキンバリーは絶句する。
「は……なんで?」
そして出てきたのはなんとも間抜けな質問だった。男はその様子をクスクスと笑い見つめてくる。綺麗な顔をしているだけにその笑顔は現実離れしていて、少しドキドキするのを感じた。
「だって、君、凄く欲しそうにしていただろ?」
キンバリーは慌てて首を横にふる。
「だとしても、貴方から貰う理由がありません。お返しします」
手を男の方にやり返そうとするが男は受け取る様子がない。男はよく分からないという感じで首を傾げている。
「だって、それは俺がもっていても仕方がないし。君は欲しがっている。ならば君が手にしたほうがいいだろう?」
言っている言葉は理解しているし、言っている言葉は間違えてはいない。しかしキンバリーには意味がよく分からなかった。
市場にいる人が皆、そのやりとりをシッカリみているのを感じる。顔に自信のある女はたかるために、腕に自信のある男は隙をみて金を奪ってやろうと男を囲むように遠巻きに近付いてくるのを感じる。キンバリーは男の手をとり、強引にこの場を離れる事にした。なんとか厄介そうな存在をまき、街の門の前の広場まで連れてきて、改めてキンバリーは男と向き直る。
「貴方ね」
男の行動のどこから突っ込んだらよいのかと、キンバリーは悩む。
「何故怒っているの?」
キンバリーは暢気に聞いてくる男に溜息をつく。
「一つ、普通女性は見知らぬ相手から高価なプレゼントなんて簡単に受け取らない! 二つ目は買い物はその場に合った相場を守ってすること! 三つ目不用意に人前で大金を見せびらかさないこと!」
男はよく分かってないようにポカンとした顔をして首を傾げる。
「それで、誰かに迷惑かけた?」
「さっきの店主にしても、突然大金を手にしたことで、他の人間に襲われるという危険が増えたかもしれない。それに貴方だってそう」
男はその言葉に少し考えるような素振りを見せるが、脳天気に見える明るい顔で笑いかけてくる。
「別に、俺はあのアクセサリーがほしかった、あの男は売りたかった。双方が納得した上での取引だから責められるべき事だと思わないし、その結果あの男に何かが起こったとしてもそれはあの男の自己責任だ」
(ならば、貴方が襲われる事も、自己責任でいいんですね?)
キンバリーは心の中で聞こえぬ声で問いかけてしまう。
「それに俺は貴方に興味をもった。それで喜んでもらいたくてアクセサリーを贈ったそれがオカシイ事ですか?」
『興味をもった』という言葉にキンバリーはドキっとする。マグダレンに対しては酒場で酒を奢ってくる男とか、プレゼントを貢ごうとしてくる人はいるが、幼い見た目のキンバリーは、そんな事をされるのは初めてだったからだ。
『世の中には、幼い子供とか同性に性的興奮を覚える変態がいるから!』
同時にマグダレンの言葉も思い出す。つまりは外見が子供であるキンバリーに興味を覚えるという事は、この男は世に言う幼児性愛者ということかとキンバリーは納得する。
《キミー今どこ? こちらの仕事は終わったよ》
マグダレンの心話が、届く。
《市場の東側の門の所》
キンバリーは何も考えず素直に場所を答える。前では男が無邪気な笑みを浮かべ立っている。
《そんな所で何を?》
マグダレンの声が返ってきた。市場を散策したら、荷物もあるので直ぐに宿屋に戻るのが今までのキンバリーの行動なので、不思議に思うのは当然かもしれない。
この男が心配で、あえて憲兵詰め所の前であるこの場所に移動させたのだ。歩く金庫だとバレバレな男をあそこで放置する事も出来なかった。
「良かったら、お茶でも楽しみませんか? 知らない人だから受け取れないというならば、もっと会話して理解しあえばいい」
男が朗らかな笑みを浮かべキンバリーに手を差し伸べ誘ってくる。
《凄い世間知らずで金持ちの小児性愛者にお茶に誘われている所》
キンバリーは男に気を取られ、どう返事をすべきか悩んでいたために、かなりストレートな表現で状況をマグダレンに説明してしまった事に気が付いた。マグダレンが慌てるのを感じた。会話による言葉より、心話は感じたままの言葉を発してしまいがちだからだ。
《何やっているの!! そんなヤツは股関を思いっきり蹴り上げて、サッサと離れて!!》
マグダレンの怒り心頭の言葉に、キンバリーは流石に不味い説明だったと反省をする。
「もちろん、俺が奢りますよ。あっ俺の名はイサール。宜しく」
ニッコリと笑い自己紹介している男の背後には、チャンスがあれば身ぐるみをはごうとしている先程の市場にいた怪しげな男がチラホラ。そして街の奧から殺る気まんまんで猛然とイサールに迫るマグダレン。どちらの存在がよりイサールにとって危険なのだろうかと悩みながら、キンバリーはイサールの笑顔を見つめていた。
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