優しくて美しい世界

白い黒猫

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コドクナセカイ(眞邉樹里から見た世界)

ヤバい意味で

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「作品だけ見てもかなり危ない子ね」
 SHOUKA先生は珍しく、学生の話を暗い顔で話す。
「危ないとか、何か感想を抱く以前の腕前では。何故あれでAO入試認めたのか」
 渉夢はやはり貢門命架をアーチストとしては見ていない。
「せめて私達に一言でも意見求めてくれたら止めてたのにね。
 あのボンクラ副理事が、娘があの表紙を書いた作品が好きだったとかで決めちゃったみたいよ。
 評価されたのは小説の方でしょうに!」
 SHOUKA先生は大きく溜息をつく。
「まぁ、どういう形にせよ、絵を基礎から学ぼうとしてくれたのは良い事なのかな?
 でもこの子訳分からないのよ。イラストレーターとして生きていくと言っている割に、ウチのコースに驚く程に無関心なの。
 まあ絵を学ぶ以前に、もっと創作するという事の基本的な所を学んで欲しいわよね。痛い目に遭う前に自分で気づいて欲しい」
 今後アートデザインコースに進むであろうことから、渉夢とも関ることもなさそうだからか、私はこの時はそんなに警戒はしていなかった。
「さすがSHOUKA先生、絵に関してしかし指導出来ない俺とは違う」
 渉夢もそうなのだろう。ただ会話を楽しむためだけの反応を返す。
 SHOUKA先生は顔を顰め顔を横に振る。
「そういうのではないのよ。
 今の時代、特にイラストレーションの世界は色々境界線が曖昧になる問題が起きてるから。デジタル絵って色々便利過ぎるツールが多いだけに、タブーにも簡単に踏み込んでいけちゃうもいうところが怖いなと。
 気楽にそれなりのモノが出来上がり、さらに作品をネットで簡単に公開出来る。
 そこで評判良ければ出版社からも声をかけてもらえる。
 その事自体は悪い事ではないのよ。
 出版社からしても、安く使い捨て出来るイラストレーターが大量にいるという状況でそこに安易に手を出す。
 安易と安易が掛け合わさった末に起こる事が怖いなと。
 この子は能力的にも技術的にも倫理的にも未熟。
 本気でここで奮起して頑張って変わらないと本当にヤバい地雷を抱えている。
 自滅するか、世間にバレて潰されるか、今あるのはその二つの未来しかない。
 むしろこのままフェードアウトして、この世界から消えることが一番この子にとって幸せな未来なのかもしれない」
 作家としてだけでなく、講師として優秀なSHOUKA先生だけが、この段階で貢門命架という人生の本当の危なさを察していた。
 SHOUKA先生は、真面目に学び頑張っている学生を多く見て来ているだけに、貢門命架を許せない反面何とかしてあげたいと見ていたのだと思う。
 
 私はというと、そこの段階では何の被害もなく平和だったことと、貢門命架は無関係の世界を生きる人間だからと軽く見て呑気に過ごしていた。
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