カッコウの子供

白い黒猫

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カッコウの子供

魔の四歳児

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 子育てというと愛情と喜びに満ちたモノと思われているが、実際は六割は焦りと不安。三割の苛立ち。一割の喜びという感じである。
 子供にもよるのかもしれないけれど、よく言えばやんちゃ、悪く言えば利かん坊な息子をもっている私が子供にかける言葉の殆どが馬鹿な事をしでかすことを叱っている怒鳴り声。
 思わず引っ叩いてしまい自己嫌悪に陥り溜息つく事も少なくはない。
 息子がこんなに言うこと聞かないで落ち着きがないのは私が悪いのだろうか? 母親として自分は向いていないのだろうか? とそんな想いとズッと抱き続けている。
 あれほど望んで母親になったと言うのに、今の私は歓びとは別の世界にいる。

 「ほら、魔の四歳って言うでしょ? 今だから大変なの、もう少ししたら分別もついてきて落ち着くわよ。焦らないで!」
  お姑はそう私を優しく慰めつつ、息子を甘やかし我が儘にしていく。
 「まあ男の子はそれくらい元気の方がいいだろ」
  お舅も暢気なもの。夫はただそれらの言葉に頷くだけ。
 別に嫁いびりをする訳でもない、甘やかすものの息子の面倒も見てくれるし、私の子育てに文句を言ってくるわけでもない。
 そういう意味では恵まれているとは思うものの、私一人でしつけを頑張らねばならないという雰囲気がさらに私を追い込んでいく。

 「アンタが悪いんでしょ! いつまでもウジウジ言わない!」
  私は癇癪を起こし喚き始めた息子を叱り飛ばす。
 「ちがーうバ~ア~バが悪いの! 踏んでバキっとしたから壊れたの! バアバのせいで遊べないの! バアバが悪いの!!」
  自分がトイレの前にDSを放置していたのが悪いのに、息子はそれを認めず大声でお姑を責め始める。
 「ごめんね~ヨウちゃん」
  謝る姑に私は首を横にふる。
 「いえ、お母さんは悪くないですから気にしないで下さい
 貴方がちゃんとお片付けしないから悪いのでしょ? 廊下って歩く所なの!
 そんな所にオモチャを放置したあなたが悪いの!
 バアバが怪我したらどうするつもりだったの?」
  トイレを出て一歩目にそんなモノが置いてあると誰が思う?
 しかもひらいて伏せた状態だったので、蝶番の所からバッキリいってしまたからもう修理も難しそうだ。
 私としては、ゲームを始めたら止めないで困っていたから、ちょっとだけラッキーだと思っていたが、息子はゲーム機がないから遊ぶのを諦めるという方にはいかなかったようだ。
  もう一週間たつのに、『DSで遊びたい、遊びたい』と喚きちらしている。それを謝る姑さんに『気にしないで下さい』といいつつ息子を叱るという毎日となっている。
 子供といえど、意外の悪知恵だけはある。大人の特性というのをしっかり把握していて、こうもしつこく姑を責めているのも、そうすれば新しいDSを買ってもらえるだろうという狙いがあったの事だろう。
 ただ喚いているようで、時々チラリと上目使いでお姑さんに甘える表情をみせる。
 相手にとって自分が滅茶苦茶可愛くて溜まらない存在であるというのを認識した上で、行動している。
 この天性の魔性さというのもスゴイなと思う。自分の願望に素直で、欲しいものの為ならば一瞬だけでも良い子にも天使にもなってみせる演技力も持っている。
 私はもう騙されないけれないし、『もうわがまま言わないから~』という条件で交渉して何かを買わそうという事も通じなくなってきている。だからまだまだ騙せる舅と姑を狙うのである。
  でも、最近は教育の為に何でも買い与えないで欲しいとお願いしているので、次から次へと出てくるヒーロー系のオモチャは流石に買わないなってきている。
 しかし一緒にショッピングモールにいった時とか気が付いたらソフトクリームとかドーナツといったお菓子をおごってもらいご機嫌になっている。
 今回の件は、自己責任とままならぬ事もあるという事を学ばせ為にも、耐えているのだが姑をそれに巻き込んでしまっているのが申し訳なさすぎる。

 「だったら、孝之のを貰ってきたら? あの子こないだ3DS持ってきていたから多分前のは使ってないわよ! かなり古いけれど新品与えるよりかはいいのでは?」
  実家の母に相談したら、そんなアイデアを出してきた。
 私は弟の事を思い浮かべる。確かに孝之はゲームが好きなようでバイトでお金稼げるようになってから、新しい機種が出たら買っても、前のは捨てたり売ったりもせずにそのまま部屋においている所があった。
  ここで中古でも、再びゲーム機を与えるのもどうかと思うが、このままだと姑が可哀想である。
  早速弟と連絡とると、のんびりとした感じで快諾さてくれた。
 「いいよ、どうせ使ってないし。何か陽一が遊べそうなソフトもあれば、一緒に持っていくよ。
 ただまだ陽一には言わないでよ。ちゃんと動くかどうか確認するから」
  孝之の柔らかい言葉に癒され何かホッとする。考えてみたら弟の孝之は昔から大人しく温和で手間のかからない良い子だった。
 同じ男の子でも弟のような息子ならば、もっと楽で穏やかに子育ても楽しめたのにと思う。
  DSは問題なく動いたようで、週末には届けてくれるという事になった。
 私は久しぶりに会う弟の為、家庭的な料理を用意して待つことにした。独り暮らしの男の子なんてろくなものたべてないだろうから。

  そして陽一には、『孝之叔父さんがDSを貸してくれる事になった』と伝える。
 あくまでも借り物だから、陽一のモノではないというアピールと、人のモノだから大切に使ってくれるだろうという願いを込めての事である。
 その親の願いがどの程度分かってくれているのか分からないが、陽一は満面の笑顔で『ゲーム機は大切にする。止めなさいと言ったらすぐゲームを止める。ワガママ言わない』という約束に陽一は嘘っぽい真面目な顔で良い子のお返事をした。
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