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【あとがき】

◆◆この物語とシリーズついての解説◆◆

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 最後まで読んでいただきありがとうありがとうございました。いかがでしたでしょうか?
 もしこの物語の前年2025年の世界が気になる方は、「バッドエンドの向こう側」読まれて下さい。
 一年前ループ現象に巻き込まれた佐竹愛花視点の物語となっています。
 
 コチラでは簡単なこの物語とシリーズの解説をさせていただきます。

 このシリーズは七月十一日十一時十一分十一秒に事故に巻き込まれ、七月十一日をループするようになってしまう人物を描いた【11:11:11】シリーズ第三弾として書きました。

 第一弾は【11:11:11世界の真ん中で】
 こちらの作品でも少し名前の出てくる佐藤宙が主人公で、同じ現象に巻き込まれた可愛い職場の後輩と共に、狂った破壊行動を繰り返すようになるもう一人の仲間の動きに心悩ませつつ、この現象からの脱出を目指す物語。

 第二弾は【世界終わりで、西向く士】
 一人でこの現象に巻き込まれた事により、自堕落な引きこもり生活を続けている土岐野廻が主人公。
 ふとしたことで一年前の犠牲者佐藤宙と交流できるようになり、人間らしい時間を取り戻し動き出すという物語。


 そして今回は現象のキーマンではなく、巻き込まれた形となった佐藤周子が主人公の物語。このシリーズ初の女性主人公です。

 こちらのシリーズ、それぞれ主人公も雰囲気も違いますが、同じ現象なのでその制約や構造も同じです。

 七月十一日十一時十一分十一秒に、十一月十一日生まれの人物が事故に会うことでループ現象が開始する。この人物が現象の核となる。

 その際同じ場所で同時に亡くなった人も同じ現象に巻き込まれる(誕生日が十一日の人が運命に選択されている模様)

 逆に少しでもずれて死亡した際はループ現象に巻き込まれない。

 ループしている世界を認識できる人は、最初の事故の時に確定する。 

 ループで巻き戻ると怪我しても死んでも元通りになる。

 ループして戻れるのはその日その人物が起床した時間でそれより早くは戻れない。

 ループ世界の人は毎回同じ行動をひたすら繰り返す。しかしループを認識している人物と接したらそれに対応した行動を返す。しかしループしてしまうとその記憶もリセットされる。

 ループの核となった人は他の年の核と繋がれる能力を持つ(いずれのシリーズでも今のところ前後一年の核としか今は繋がれておらず、過去の核が働きかけた時に接続される)

 核となった人物だけその時間軸の自分を含む全員のルーパー(ループに巻き込まれその事を認識できている人)の記憶をリセットする能力を持つ。(この部分はこの物語においては発生していません)

 そしてコチラは構造ではなく現象に巻き込まれた人に起こる傾向として、自分の欲望に忠実になっていくというものがあります。

 以上のような特徴があります。

 ある条件下で同じ時間に同じ場所にいることで核同士は接触できるというのは、今回初めて検証された形となっています。(離れた時間の核ともコチラで繋がれるかはまだ謎)

 この現象の被害者としてシリーズの中で名前が出てきた人はこのようになっています。

2017年 ディスティニー・テーラー  航空機設計
 宿泊していたホテルが爆発炎上で死亡
 レストランフロアにいた複数人がルーパー。

2018年 日廻 永遠  建築家 
 ディスティニーの設計した飛行中の飛行機ごと行方不明。
 一緒にファーストクラスにいた人もルーパーとなる。

2019年 佐藤 宙  元プログラマーの営業マン
 日廻永遠設計のタワーマンションに囲まれた交差点を通行中に竜巻に襲われ死亡。
 共に竜巻に巻き込まれた二人がルーパー。
【11:11:11世界の中心で】の主人公

2020年 土岐野 廻 外食チェーンの会社の企画部所属のサラリーマン。
 佐藤宙が以前開発した士システムの点検作業中に事故。
【世界終わりで、西向く士】の主人公

2021年 ライフフォード・ダイン  カルフォルニア出身のプロサーファー
 土岐野廻がプロデュースしたお店の十一号店のイベント準備中に高波の漂流物により死亡

2024年 エブリー・ギルベール ショコラティエ
 海難事故にて死亡

2025年 十一 残刻  彫刻家。 
 エブリー・ギルベールがオーナーのle onzième cadeauの落下した看板にて死亡

2026年  不死原 渉夢 画家 
 十一 残刻の制作した像のある崖の崩落に巻き込まれ死亡 

 という流れになっています。
 抜けている年月は海外で起こっている感じです。

 前二作の現象の解釈は、状況解明を著しく掻き回し邪魔する仲間がいる宙、調査には条件が良くない制限された空間にいる日廻永遠とその仲間、そのメンバーで検証したものがベースになっているので、今回三人が独自に動いて調べた検証の認識に若干ズレが出ています。
 ですのでこちらではルーパーとかキーパーソンとか核といった日廻永遠グループが使っていた言葉では表現されていません。

 この物語の登場人物は……

 佐藤周子は、勝ち気でしっかり者の女性。
 この現象に巻き込まれた際も一番積極的にこの現象について調べ、アイデアもだし活発的に検証に乗り出しています。
 それは孤独を恐れて人から必要にされたい、役に立つ人間でいることで自分の価値をだそうとしている潜在意識からきています。
 その為お人好しと言われるほどまで人の面倒を見るところがあり、そのことが普通に無邪気だった彼氏をダメ男にしてしまいました。
 今回自殺を考えたのも、本人の言うところの人の迷惑をかけたくないということだけではなく、人から不要と見られてしまうこととなる恐れもありました。
 寂しがり屋なだけに、寂しい時辛い時に自分に寄り添ってくれた人に惹かれてしまうという傾向があります。
 そのため、『明るくて面白くて良い人ではあるんだけどね~彼氏としてはナシ』と言われているような古井と付き合い始めますし、暴言吐きまくりの十一なのに気に掛けられると簡単に見直してしまったり、若干怪しさのある不死原にも惹かれ簡単に心を許してしまいます。

 不死原と十一は濃密な団結力のある村社会で育った二人。
 住む村は、不死原家が絶対的存在で、揺るぎない忠誠のもとに支える十一家、それを陰ながら仕える『眞』の苗字を持つ眞邊家・眞壁家という社会。
 不死原の中でも【渉】そして十一の中でも【刻】の文字は直系にしかつけることを許されない漢字となっています。
 この漢字を持つものの地位はこの村では地位も高く強い意味を持っていて、この村の社会から強い束縛も受けてしまうところがあります。

 渉夢と残刻の関係は互いを信頼しあった親友同士ではあります。
 しかし不死原の名に恥じぬ行動と生き方を求められ続けていた渉夢と、彼に寄り添い支えるように教育されてきた残刻。
 対等ではなく元々かなり歪んだ関係でした。

 残刻は渉夢のことを他の不死原の人間とは異なり、純粋で清廉な人物と誤認しています。
 村の中でも若干ハグレた存在である自分を一番理解し受け入れてくれている相手として依存しています。
 だからこそ、そんな彼を傷つけたり困らせたりする女性への怒りが深く容赦ありません。
 ループ現象に入る前は流石に殺すことはしていませんが、社会的に抹殺したり、二度とこの土地に来ることも嫌になる程精神的に痛めつけた形で追い払っています。

 渉夢は自分でも言うように利己的で打算で動く人物。
 そのことを上手く隠して穏やかで優しい人物としてみせています。
 他の家族のような強いリーダーシップと誰もが認めるカリスマ性には欠けるものも、人心掌握に長けており皆から愛される人格者である三男坊として装い生きています。
 自分が快適に過ごす世界を常に求めています。
 装うといってもその行動には嘘はなく、周囲の人に気を遣って、社会の為には誠実に動いています。
 自分が人から敬意を持たれ、愛される存在でいられる世界を作るための行動が自然にできてしまうという感じです。
 そして意外な事に嘘は言わない人。周子さんに対しても騙すような事は一切言ってない筈です。
 村を何よりも愛しているから、村社会の為に行動することに何の躊躇いも不満も感じていません。
 不死原の名を持つことを何よりも誇りに思い生きています。

 残刻が自分に恋愛的な意味での好意を持っているとまでは思っていませんが、執着しているのも察しています。
 その上で、自分には必要だから外の世界に羽ばたかせることもさせず、共ににいるようにさせています。
 家族として友として一番信頼しており甘え頼る存在として手元におき縛り付けています。
 面倒になった女性の後始末も残刻に任せ、自分の世界の平和を保っていました。
 こんな感じで実はかなりしたたかで腹黒なところがあります。
 残刻の時間軸で、彼に襲われているような表現がありますが、元々の力関係は渉夢の方が圧倒的に強いので、最終的には丸め込まれ残刻にとって程々に心地よく、渉夢自身は安全な距離感を保てる形で落とし込んでいると思います。

 現在時間において渉夢が自殺を考えたのは、自分のコントロールできる範囲を超えてしまったことが起こったことで絶望したからです。
 自身であっても彼の愛する箱庭世界を壊すことは許せない事だから。

 残刻が気に入っている様子を見せた佐藤周子を、躊躇うこともなく告白し手に入れてしまったのも、残刻に遠慮する必要を全く感じていなかったからです。
 周子のことも完全にコントロールし、残刻同様支配下において、渉夢ワールドを作り上げていくと思います。
 もし残刻が周子が好きだというのなら、そちらの時間の周子に手を出せば良く、周子は分け合えるモノとも考えてそうです。
 また残刻も渉夢にとって周子が必要な存在であるというのを受け入れられたら、過去の年にいる周子への攻撃をやめて、逆な方向で渉夢の大切なものを共有するという意味で求めに行く可能性もあります。

 人をコントロールしようとする所は日廻永遠のようにも見えるかもしれませんが、彼はいろいろあった結果そうせざる得ない事態となりました。
 元来は倫理観の強いリーダーシップのある人格者です。

 不死原渉夢は元々人を操ることを得意とする静かな狂気を孕んでいる人。
 だから逆に異常な閉ざされた環境下にも自然に馴染んでいます。
 不死原だけではなく、十一残刻と佐藤周子も三人とも最初から狂っているところがあるので、狂った世界への順応も高かったとも言えます。
 より三人で濃厚な愛のある関係を深めていくだけなのかもしれません。

 今回このシリーズの新作を書こうと思ったのは、明日が要らない人がこの現象に巻き込まれたら、寧ろ救いなのではないか? と感じてキャラクターを組み立てていきました。
 あと、自殺志願者が自殺の名所でバッティングというシチュエーションが頭に浮かんだというのもあります。
 
 他のシリーズと若干現象に対する向き合い方が異なるのは、今までのシリーズのループに巻き込まれた人はループする世界の中ではなく未来の時間の中に求めるものがあったので絶望も感じていました。
 今回の三人は明日というものを実はそこまで欲しておらず、むしろループしているこの世界の中に自分にとって都合の良い好ましい要素がある人たちなんですよね。

 自分のお気に入りの場所でお気に入りの人をはべらせて好きな事だけ出来る世界の渉夢。
 村社会の煩わしさもなく愛する人と思う存分触れ合えて本当なら出来ない新たなる創作活動? も楽しめる十一。
 自分が帰るべき家族を作れ、それが死で壊される不安もない世界を手に入れた周子。
 この物語はこのシリーズにおいて珍しくハッピーエンドなのかもしれません。


 あと二年以上離れたルーパーと繋がれるかは謎です。
 過去のルーパーに関わる場所に同時刻に居たら会えるかもという説の立証ですが、前二作の人達って実は日数にして十年くらいループ世界に閉じ込められて居ます。
 そこでまだ不死原達と会ったという描写が無いということは会えるとしても四年位先になります。
 佐藤宙はまだニシムクサムライに行きやすいのですが、土岐野廻はサムライ(株)の社員でしかもニシムクサムライのコンセプトプロデューサー。
 その日ニシムクサムライ零で大変な事故が起こっている状態。それなのにサボっているようになっているので、ちょっと店に飲みに行くという事はしにくい立場かもしれません。

 小ネタとして、このシリーズにルーパーではないのに何気にずっと登場している人物がいます。
 二枚目俳優の杉田玲士とアイドルグループニャンニャン麺のミライ。
 杉田玲士はニュースとか会話の中のみ登場ですが、ミライは二作目ではヒロイン的な存在にもなっていました。
 土岐野くんのと関係が進むことも無く杉田玲士と結婚したようです。
 
 あと不死原と十一が住む村って、常世村に向かう途中にあります。常世をどういう意味と取るかはお任せします。

 シリーズ世界の中では、ある条件下で毎年世界のどこかで必ず発生してしまうループ現象。

 2018年に起こったループ現象を描いたのが【11:11:11世界の中心で】
 2019年に起こったループ現象を描いたのが【世界の終わりで西向く侍】
 2025年に起こったループ現象を描いたのが【バッドエンドの向こう側】
 2026年に起こったループ現象を描いたのが【バッドエンドはもう来ない】
 2027年に起こったループ現象を描いたのが【美しくて優しい世界】

 という感じでシリーズは展開しています。
 5つの物語の人物がどのように繋がっているのか、他の物語もあわせて楽しんで頂けると嬉しいです。
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