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AFTRE
月に還る
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璃青さんに告白してから、夜あまり眠れなくなっていた。最初は後悔の想いから、そして昨晩は異様に感情が高ぶりすぎて。そして何度も昨晩届いたメールを読み直す。コレはどう考えても告白に応えてくれたと読み取れると思うものの、俺の願望がそう思わせているのではないかとも考える。とはいえ今日は十三夜、俺は朝から準備を始しめることにする。部屋を念入りに掃除して、エスポワールコリーヌに行く。ススキを求めると芽衣さんはニッコリ笑いからかってきた。そしてお供え用にどうぞとイガのついた栗もオマケでつけて、『頑張って♪』と言ってきた。何を頑張るのか……。そして櫻花庵で買った月見団子と共にリビングのテーブルにディスプレイしたら、それなりにお月見らしい状況が出来上がる。そこで一息いれていると、携帯が震える。
『三日間、ずっと考えていました。
今夜同じ月を見てくれますか? それが私の答えです。
透くんに会いたい』
そのメールに心が躍り、俺は居ても立ってもいられなくなる。そしてすぐに家を飛び出し駅に向かう。
まだ璃青さんは家を出たか電車に乗ったばかりなので、もう来る筈もないのに改札の前まで来てしまっていた。一時間弱そこで待った時、駅の奥から璃青さんの姿が見えた。人込みに紛れていても見間違えようがない。淡いグレーのふんわりとした柔らかい生地のワンピースに秋色のストールを巻き旅行鞄を持ってコチラに向かってくる。俺は凭れていた柱から背を離し前へと足を進める。そうしている間にも璃青さんとの距離は縮まっていく。
改札を出た璃青さんは俺の姿を見て驚いたように目を丸くする。
「璃青さん、お帰りなさい」
「ただいま。駅で待ってるなんて思わなかった………」
そう言いながらも微笑む璃青さんを抱きしめていた。俺の腕の中で璃青さんの香りが広がる。どうしようもない安堵感と、熱すぎる喜びの感情が湧きおこってくる。
「おかえり」
もう一度挨拶をして、璃青さんの髪にキスをする。そしてさらに強く抱きしめる。鼻腔を擽るシャンプーとシャボンの良いその香りを楽しむ。
「透くん、ここ、駅……!!」
その声で我に返る。俺は片手で璃青さんの荷物を持ち、片手で璃青さんの手を握りながら二人で商店街に戻ることにする。璃青さんがいると、商店街に色が戻ってきて、世界が華やかさを増す。楽しかった為か根小山ビルヂングまでアッという間に到着する。ニッコリ笑いBlue Mallowへと帰ろうとする璃青さん俺は繋いだままの手を軽く引っ張る。
「璃青さん、うちで月見をしませんか?」
繋いでいる手が離せない。
「え………」
「まだ、月登っていませんが。……離れたくない」
そう言うと、璃青さんは柔らかく笑う。
「うん、わたしも一緒にいたい」
璃青さんの優しい声が耳に心地良かった。
部屋に入りテーブルに飾られたススキと、栗を見て璃青さんはフフフと笑った。
月見までの時間を、お茶とクッキーを飲みながら二人で他愛ない話を楽しむ。他愛ない話がとてつもなく愉しい。帰省中に友達とした楽しい会話とか、家族の事とか。そうしている間に外はどんどん暗くなる。そしてついに空にポッカリとした月が登る。二人で月見団子を盛り付けてベランダのテーブルにお月見セットを飾り付ける。そして二人で空を見上げる。ひと月前と違って風が少し冷たい。俺は月を静かに眺めている璃青さんに籐のソファーを勧めてからそっと離れて、何か温かい飲み物を作りにいくことにした。
「この間のお祭りの時は見られなかったけど、ここ、さすが六階よね。景色がすごく綺麗なのね。月もまん丸で綺麗………」
「綺麗なのは璃青さんですよ」
俺がそう言うと何故か璃青さんが顔を真っ赤にして慌てる。俺は手にもっていたココアのマグカップを璃青さんに渡す。そして俺も璃青さんの隣に座り、そっとその肩に手を回す。璃青さんの体温が心地よかった。璃青さんは嬉しそうにココアをフーフーと少し覚ましてから一口飲み笑う。しばらく二人でココアと月見を楽しむ。
「璃青さん、嬉しいです。
その……」
月をみていた璃青さんが俺に視線を動かしたのを感じてドキドキする。
「その、応えてくれて……俺の告白に……」
チラリと横を見ると、璃青さんは柔らかく笑い首を横にふる。
「私の方こそありがとう。こんな私を好きだと言ってくれて」
その言い方になんか悲しくなる。
「璃青さんだから、好きになって。璃青さんだから告白したんです! 他の人にそんな気持ちにならない。ここまで人を好きになったのって初めてで。だから……」
上手く言葉にならず、身体の方が先に動きその身体を抱きしめる。
「俺を見て欲しかった」
璃青さんは俺の背中に手を回してくる。
「見てたよ。気付いたら透くんだけを見てたの。わたしはずっとドキドキしてたよ。透くんが、好きよ」
その言葉に俺の心が満たされていくのを感じた。
「ありがとうございます。……璃青さん」
俺は腕の中の愛しいその存在を優しくでも強くさらに抱きしめた。
「璃青さん………」
抱きしめていた腕を少し緩め、俺は身体を起こし璃青さんを見つめる。頬を少し赤らめ、瞳を潤ませた璃青さんがなんとも色っぽく見えた
「なぁに?」
「愛してます」
俺はそう言って璃青さんの柔らかそうな唇にキスをする。突然の行動にその唇はビクと震えるが拒む事なく俺を受け入れてくれた。唇を軽く甘噛みをしてそのままゆっくりと舌を絡めより深く熱く二人で交わっていく。先ほど少し身体を離した事で離れてしまっていた璃青さんの腕が俺の首に回され抱きしめられる。
「ンン」
璃青さんの声で、一旦キスを止め少しだけ離れる。すぐ俺の目の前に、少し息を荒くし顔を火照らせた璃青さんの顔がある。お酒に酔ったように蕩け熱っぽい眼差しが俺の姿を映す。
「甘いですね」
俺がそう言うと璃青さんの顔がますます赤くなる。
「ココア飲んだ後だから!!」
必死な感じでそう答える様子がまたカワイイ。
「ええ、ココアのように甘くて美味しいです」
そう言って俺はその味を再び味わいたくて、璃青さんにキスをする。そうしている内にキスだけでは止まらなくなり、やわらかな頬を撫で身体に沿わせていく、唇もゆっくりと頬、耳たぶへと移動させていく。
「璃青さん、すいません気持ちが抑えられない」
耳元でささやくと、璃青さんの少し熱くなった身体がビクリと震え、唇から小さい声が漏れる。 ふと璃青さんの吐息が俺の耳にかかる。そして俺の耳にやわらかく温かいものが当たる。璃青さんの唇が俺の耳を軽く挟むようについばむように動き、『イイヨ』という言葉を囁いてくる。そこの言葉で最後の理性が飛び俺は璃青さんに覆いかぶさりその温かく柔らかい身体を慈しんだ。
ふと夜中に擽ったくて目が覚める。腕の中に抱いていた璃青さんが動きその髪が俺の胸を擽ったようだ。素肌で直に感じる璃青さんの身体の温かさが俺をホッとさせる。璃青さんは起きていたようで目があってしまう。青い寝具に包まれていることで璃青さんの素肌が薄暗い部屋でも浮かびあがって神秘的な雰囲気もあり見蕩れてしまう。
「璃青さん……?」
間抜けな寝顔を見られたのだろうか、少し恥ずかしい。
「あ、起こしちゃってごめんなさい」
あのまま、二人でベランダのソファーで抱き合い、ベッドに移動して愛し合いそのまま寝てしまったようだ。
「いえ、寝るつもりはなかったんですけど、安心したらつい………」
「安心?」
少し身体を起こし俺を見つめ首を傾げる
「璃青さんが側にいる。って」
「わたしのせい?」
少し唇を突き出しそう聞いてくる。
「そうですよ。もう戻ってこなかったらどうしようかと思ってました」
なんか今は甘えたくて、璃青さんを抱き寄せる。すると真っ赤になり慌てたような顔をする。
「お店を放置するわけないでしょ!!」
身体をよじって逃げようとする身体を、少し強引に抱きしめたまま、空いている方の手でその頬を撫でる。
「そうですね。まぁ、その時は迎えに行こうかとも考えていましたけど。……で、今まで何をそんなに悩んでいたんですか?」
「悩んで……っていうか、わたし、29歳になっちゃったし」
上目使いでポツリポツリとそう言葉をつぶやきだす。
「はい」
「6つも年上だし」
「ええ、まあ」
なんでそんな事、気にするんだろう?
「あなたにはもっと相応しい人がいるんじゃないかな、って」
俺はそんな事を言う璃青さんの唇をキスでふさぐ。
「………や、んっ、苦しいよ」
拗ねたように見上げてくる璃青さんを、俺は少し睨む。
「それ以上言ったら怒りますよ。俺はそんなに頼りないですか? ……年下だから」
「そんな事ない………」
そうおずおずと答える。
「ならば、俺の璃青さんへの気持ち疑っているんですか?」
璃青さんはブルブルと顔を横にふる。
「璃青さん以上に人を好きになった事ありません。そしてこれからもそんな人に会うなんて考えられない。もし璃青さんが俺に不安になるようだったら。俺はもっと璃青さんに相応しい男になるように努力します。だから俺を受け入れて」
そう真剣に話しているのに、璃青さんは不安げに俺を見つめる。
「そんなの嘘……」
「嘘じゃないですよ。
………璃青さん、どうしたら信じてくれますか? もっともっと愛したらいいですか?」
そう真面目に言ったのに、璃青さんはキョロキョロして逃げようとする。
「ええと。朝帰りは何かと不都合が……なんて。だからそろそろ帰ろうと思って、ダメ?」
「やはり信じてないんですね。俺の気持ち」
起き上がりベッドから出ようとする璃青さんを背後から抱き寄せ戻す。
「え、違、ちょっと待っ……」
「璃青さんだけを愛しています。今もこれからも」
逃げようとする璃青さんの背中にキスを落とす。
「うぅ……はい、わたしも透くんだけが好きです」
そんな風にあまりにも嬉しい言葉を返してくれる璃青さんが愛しくてたまらない。俺は顔を赤らめる俯く璃青さんに背後から抱えたまま項や肩にキスをしていく。身体の力が抜けていく璃青さんをベッドに横たえ俺は微笑みかけ璃青さんに深いキスをした。
「ユキ……くん」
唇が離れると、途切れ掠れた声で璃青さんが俺の名前を呼ぶ。その声が俺の身体をさらに熱くした。その眼差しも声も身体も俺を夢中にさせる。俺は深く強くその存在を感じたくて、璃青さんと共にシーツの海を潜っていった。窓からボンヤリ入る十三夜の月の光の中で。
『三日間、ずっと考えていました。
今夜同じ月を見てくれますか? それが私の答えです。
透くんに会いたい』
そのメールに心が躍り、俺は居ても立ってもいられなくなる。そしてすぐに家を飛び出し駅に向かう。
まだ璃青さんは家を出たか電車に乗ったばかりなので、もう来る筈もないのに改札の前まで来てしまっていた。一時間弱そこで待った時、駅の奥から璃青さんの姿が見えた。人込みに紛れていても見間違えようがない。淡いグレーのふんわりとした柔らかい生地のワンピースに秋色のストールを巻き旅行鞄を持ってコチラに向かってくる。俺は凭れていた柱から背を離し前へと足を進める。そうしている間にも璃青さんとの距離は縮まっていく。
改札を出た璃青さんは俺の姿を見て驚いたように目を丸くする。
「璃青さん、お帰りなさい」
「ただいま。駅で待ってるなんて思わなかった………」
そう言いながらも微笑む璃青さんを抱きしめていた。俺の腕の中で璃青さんの香りが広がる。どうしようもない安堵感と、熱すぎる喜びの感情が湧きおこってくる。
「おかえり」
もう一度挨拶をして、璃青さんの髪にキスをする。そしてさらに強く抱きしめる。鼻腔を擽るシャンプーとシャボンの良いその香りを楽しむ。
「透くん、ここ、駅……!!」
その声で我に返る。俺は片手で璃青さんの荷物を持ち、片手で璃青さんの手を握りながら二人で商店街に戻ることにする。璃青さんがいると、商店街に色が戻ってきて、世界が華やかさを増す。楽しかった為か根小山ビルヂングまでアッという間に到着する。ニッコリ笑いBlue Mallowへと帰ろうとする璃青さん俺は繋いだままの手を軽く引っ張る。
「璃青さん、うちで月見をしませんか?」
繋いでいる手が離せない。
「え………」
「まだ、月登っていませんが。……離れたくない」
そう言うと、璃青さんは柔らかく笑う。
「うん、わたしも一緒にいたい」
璃青さんの優しい声が耳に心地良かった。
部屋に入りテーブルに飾られたススキと、栗を見て璃青さんはフフフと笑った。
月見までの時間を、お茶とクッキーを飲みながら二人で他愛ない話を楽しむ。他愛ない話がとてつもなく愉しい。帰省中に友達とした楽しい会話とか、家族の事とか。そうしている間に外はどんどん暗くなる。そしてついに空にポッカリとした月が登る。二人で月見団子を盛り付けてベランダのテーブルにお月見セットを飾り付ける。そして二人で空を見上げる。ひと月前と違って風が少し冷たい。俺は月を静かに眺めている璃青さんに籐のソファーを勧めてからそっと離れて、何か温かい飲み物を作りにいくことにした。
「この間のお祭りの時は見られなかったけど、ここ、さすが六階よね。景色がすごく綺麗なのね。月もまん丸で綺麗………」
「綺麗なのは璃青さんですよ」
俺がそう言うと何故か璃青さんが顔を真っ赤にして慌てる。俺は手にもっていたココアのマグカップを璃青さんに渡す。そして俺も璃青さんの隣に座り、そっとその肩に手を回す。璃青さんの体温が心地よかった。璃青さんは嬉しそうにココアをフーフーと少し覚ましてから一口飲み笑う。しばらく二人でココアと月見を楽しむ。
「璃青さん、嬉しいです。
その……」
月をみていた璃青さんが俺に視線を動かしたのを感じてドキドキする。
「その、応えてくれて……俺の告白に……」
チラリと横を見ると、璃青さんは柔らかく笑い首を横にふる。
「私の方こそありがとう。こんな私を好きだと言ってくれて」
その言い方になんか悲しくなる。
「璃青さんだから、好きになって。璃青さんだから告白したんです! 他の人にそんな気持ちにならない。ここまで人を好きになったのって初めてで。だから……」
上手く言葉にならず、身体の方が先に動きその身体を抱きしめる。
「俺を見て欲しかった」
璃青さんは俺の背中に手を回してくる。
「見てたよ。気付いたら透くんだけを見てたの。わたしはずっとドキドキしてたよ。透くんが、好きよ」
その言葉に俺の心が満たされていくのを感じた。
「ありがとうございます。……璃青さん」
俺は腕の中の愛しいその存在を優しくでも強くさらに抱きしめた。
「璃青さん………」
抱きしめていた腕を少し緩め、俺は身体を起こし璃青さんを見つめる。頬を少し赤らめ、瞳を潤ませた璃青さんがなんとも色っぽく見えた
「なぁに?」
「愛してます」
俺はそう言って璃青さんの柔らかそうな唇にキスをする。突然の行動にその唇はビクと震えるが拒む事なく俺を受け入れてくれた。唇を軽く甘噛みをしてそのままゆっくりと舌を絡めより深く熱く二人で交わっていく。先ほど少し身体を離した事で離れてしまっていた璃青さんの腕が俺の首に回され抱きしめられる。
「ンン」
璃青さんの声で、一旦キスを止め少しだけ離れる。すぐ俺の目の前に、少し息を荒くし顔を火照らせた璃青さんの顔がある。お酒に酔ったように蕩け熱っぽい眼差しが俺の姿を映す。
「甘いですね」
俺がそう言うと璃青さんの顔がますます赤くなる。
「ココア飲んだ後だから!!」
必死な感じでそう答える様子がまたカワイイ。
「ええ、ココアのように甘くて美味しいです」
そう言って俺はその味を再び味わいたくて、璃青さんにキスをする。そうしている内にキスだけでは止まらなくなり、やわらかな頬を撫で身体に沿わせていく、唇もゆっくりと頬、耳たぶへと移動させていく。
「璃青さん、すいません気持ちが抑えられない」
耳元でささやくと、璃青さんの少し熱くなった身体がビクリと震え、唇から小さい声が漏れる。 ふと璃青さんの吐息が俺の耳にかかる。そして俺の耳にやわらかく温かいものが当たる。璃青さんの唇が俺の耳を軽く挟むようについばむように動き、『イイヨ』という言葉を囁いてくる。そこの言葉で最後の理性が飛び俺は璃青さんに覆いかぶさりその温かく柔らかい身体を慈しんだ。
ふと夜中に擽ったくて目が覚める。腕の中に抱いていた璃青さんが動きその髪が俺の胸を擽ったようだ。素肌で直に感じる璃青さんの身体の温かさが俺をホッとさせる。璃青さんは起きていたようで目があってしまう。青い寝具に包まれていることで璃青さんの素肌が薄暗い部屋でも浮かびあがって神秘的な雰囲気もあり見蕩れてしまう。
「璃青さん……?」
間抜けな寝顔を見られたのだろうか、少し恥ずかしい。
「あ、起こしちゃってごめんなさい」
あのまま、二人でベランダのソファーで抱き合い、ベッドに移動して愛し合いそのまま寝てしまったようだ。
「いえ、寝るつもりはなかったんですけど、安心したらつい………」
「安心?」
少し身体を起こし俺を見つめ首を傾げる
「璃青さんが側にいる。って」
「わたしのせい?」
少し唇を突き出しそう聞いてくる。
「そうですよ。もう戻ってこなかったらどうしようかと思ってました」
なんか今は甘えたくて、璃青さんを抱き寄せる。すると真っ赤になり慌てたような顔をする。
「お店を放置するわけないでしょ!!」
身体をよじって逃げようとする身体を、少し強引に抱きしめたまま、空いている方の手でその頬を撫でる。
「そうですね。まぁ、その時は迎えに行こうかとも考えていましたけど。……で、今まで何をそんなに悩んでいたんですか?」
「悩んで……っていうか、わたし、29歳になっちゃったし」
上目使いでポツリポツリとそう言葉をつぶやきだす。
「はい」
「6つも年上だし」
「ええ、まあ」
なんでそんな事、気にするんだろう?
「あなたにはもっと相応しい人がいるんじゃないかな、って」
俺はそんな事を言う璃青さんの唇をキスでふさぐ。
「………や、んっ、苦しいよ」
拗ねたように見上げてくる璃青さんを、俺は少し睨む。
「それ以上言ったら怒りますよ。俺はそんなに頼りないですか? ……年下だから」
「そんな事ない………」
そうおずおずと答える。
「ならば、俺の璃青さんへの気持ち疑っているんですか?」
璃青さんはブルブルと顔を横にふる。
「璃青さん以上に人を好きになった事ありません。そしてこれからもそんな人に会うなんて考えられない。もし璃青さんが俺に不安になるようだったら。俺はもっと璃青さんに相応しい男になるように努力します。だから俺を受け入れて」
そう真剣に話しているのに、璃青さんは不安げに俺を見つめる。
「そんなの嘘……」
「嘘じゃないですよ。
………璃青さん、どうしたら信じてくれますか? もっともっと愛したらいいですか?」
そう真面目に言ったのに、璃青さんはキョロキョロして逃げようとする。
「ええと。朝帰りは何かと不都合が……なんて。だからそろそろ帰ろうと思って、ダメ?」
「やはり信じてないんですね。俺の気持ち」
起き上がりベッドから出ようとする璃青さんを背後から抱き寄せ戻す。
「え、違、ちょっと待っ……」
「璃青さんだけを愛しています。今もこれからも」
逃げようとする璃青さんの背中にキスを落とす。
「うぅ……はい、わたしも透くんだけが好きです」
そんな風にあまりにも嬉しい言葉を返してくれる璃青さんが愛しくてたまらない。俺は顔を赤らめる俯く璃青さんに背後から抱えたまま項や肩にキスをしていく。身体の力が抜けていく璃青さんをベッドに横たえ俺は微笑みかけ璃青さんに深いキスをした。
「ユキ……くん」
唇が離れると、途切れ掠れた声で璃青さんが俺の名前を呼ぶ。その声が俺の身体をさらに熱くした。その眼差しも声も身体も俺を夢中にさせる。俺は深く強くその存在を感じたくて、璃青さんと共にシーツの海を潜っていった。窓からボンヤリ入る十三夜の月の光の中で。
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