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AFTRE
見上げた先にある月は?
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俺はビル管理の仕事しながら何度目か分からない溜息をつく。
何で告白してしまったのだろうか? 後悔が激しく押し寄せる。言ってしまった事で、璃青さんを、ただ困らせてしまっただけ。
それでなくても、何かに悩んでいた様子だったのに、悩みを増やしてどうするんだろうか?
第二ビルヂングから駅方面に向かい菜の花ベーカリーでバケットを買い、盛繁ミートでベーコンブロック等商店街で買い第一ビルヂングへ向かう。ビルに入る前に隣が気になり視線を向けるけど、お客様が品物見ているのは見えたけど、璃青さんの姿まで見えなかった。その事にガッカリとすると同時にホッとする。
四階に行くと、澄さんが笑顔でお帰りなさいの挨拶をくれ、電話をかけている杜さんは手をあげニヤリと笑う。
俺はお店用の冷蔵庫に買ってきた物をしまっていると、杜さんの電話が終ったようだ。
「ユキくん、ハロウィンイベント面白い事になりそうだぞ!」
俺はチラリと澄さんに視線で聞くけどニコニコしている。
「Kenjiが奥さんと演奏してくれるらしい」
「はぁ……そうなんですか」
Kenjiさんとは、杜さんの大学時代の後輩のjazzピアニスト。結構jazz界では有名な方で最近アメリカでカーネギーホールでのライブも大成功させた。そして最近美貌のjazzシンガーのイリーナと結婚した事でも話題となった。つまりは、黒猫に世界的スター二人が共演するというスゴい状況が出来上がる事となる。しかしその事実に感情がついていかない。
「どうした? ユキくん」
「いえ、驚きすぎて……」
なんとか誤魔化してみたものの、二人には不審そうな顔で見られてしまった。俺は無理やり笑顔を作って仕事モードに切り替えることにした。Kenjiさんは元々時々サプライズ的に黒猫で演奏してくれていたところがあるが、今あまりにもホット過ぎる二人の状況の為に、シークレットで『世界を熱狂させている、アノ人がやって来る♪ この凱旋ギグは外せない』くらいの宣伝で抑えることにした。杜さんの見解では、これでも分かる人には伝わりコアなファンは察して来られるだろうから、コレくらいが丁度良いという事だった。それプラスハロウィンの日に仮装で来てくれた方にはサービスがある。その感じでブログに掲載し、ビラを作り十月中は客様に宣伝することにした。そしてお店も先日作ったカボチャのランタンを飾り、お通しは猫の形のカボチャサラダを提供する事になった。
仕事をシッカリしなければと思うものの、カボチャランタンを飾る際璃青さんの作ったランタンを見るとつい手を止めてしまい、猫サラダを見るとポテサラで作った白猫を喜んでいた璃青さんを思い出す。そして璃青さんがどうしているのかがスゴく気になってしまう。我慢できず次の日そっと様子を見に行こうとしたら、Blue Mallowの扉は閉まっていた。
《誠に勝手ながら、三日間休業致します 店主・澤山》
そしてそんな張り紙が貼ってあって俺は呆然とする。お店を閉める程追いつめてしまったのだろうか? 俺は更に後悔してしまう。かなり動揺しながら黒猫に戻ると澄さんが実家に帰ったのだと教えてくれた。気力でBarでの仕事をなんとかこなし、閉店後看板を片づけにいって空を見上げると、そこには満月というには少し細い月が輝いていた。綺麗だけど、あの時璃青さんと見た月に比べたら何か物足りない! それは月の丸さだけでない事は嫌という程理解している。携帯を取り出して月を見ながら入力する。
『璃青さん、お元気ですか? 今、俺は月を眺めています。綺麗ですよ。
あの時の月には負けますが、とても綺麗です。ご実家に帰られていると澄さんから聞きました。なんか色々すいません。ますます璃青さんを悩ませてしまったようで申し訳ないです。
ご家族の所で羽伸ばしてゆっくり楽しんで下さい。
商店街にお戻りになるのお待ちしています』
どこかセンチなメールを璃青さんに送ってしまう。そしてしばらくそのまま月を見ていたら携帯が光りメールの着信を知らせる
『今晩は。今回の帰省、透くんに黙って出てきたみたいになってごめんなさい。でも、必ず答えを出すので待っていて下さい。今夜の月、まだ痩せているけど、とても綺麗です。
今、同じ時間の月を見ていること、何故かとても嬉しく感じています。
また連絡します。』
璃青さんからそんなメールが返ってくる。俺はその文面に出ている璃青さんの優しい言葉になんとも言えない喜びが込み上げる。それに今、璃青さんも月を眺めている? そう思うと寂しさも少しだけ紛れた。俺は深呼吸をしてから、もう一度空を見上げる。璃青さんも見ているであろう、満月というには少しだけ痩せた月を見る為に。
何で告白してしまったのだろうか? 後悔が激しく押し寄せる。言ってしまった事で、璃青さんを、ただ困らせてしまっただけ。
それでなくても、何かに悩んでいた様子だったのに、悩みを増やしてどうするんだろうか?
第二ビルヂングから駅方面に向かい菜の花ベーカリーでバケットを買い、盛繁ミートでベーコンブロック等商店街で買い第一ビルヂングへ向かう。ビルに入る前に隣が気になり視線を向けるけど、お客様が品物見ているのは見えたけど、璃青さんの姿まで見えなかった。その事にガッカリとすると同時にホッとする。
四階に行くと、澄さんが笑顔でお帰りなさいの挨拶をくれ、電話をかけている杜さんは手をあげニヤリと笑う。
俺はお店用の冷蔵庫に買ってきた物をしまっていると、杜さんの電話が終ったようだ。
「ユキくん、ハロウィンイベント面白い事になりそうだぞ!」
俺はチラリと澄さんに視線で聞くけどニコニコしている。
「Kenjiが奥さんと演奏してくれるらしい」
「はぁ……そうなんですか」
Kenjiさんとは、杜さんの大学時代の後輩のjazzピアニスト。結構jazz界では有名な方で最近アメリカでカーネギーホールでのライブも大成功させた。そして最近美貌のjazzシンガーのイリーナと結婚した事でも話題となった。つまりは、黒猫に世界的スター二人が共演するというスゴい状況が出来上がる事となる。しかしその事実に感情がついていかない。
「どうした? ユキくん」
「いえ、驚きすぎて……」
なんとか誤魔化してみたものの、二人には不審そうな顔で見られてしまった。俺は無理やり笑顔を作って仕事モードに切り替えることにした。Kenjiさんは元々時々サプライズ的に黒猫で演奏してくれていたところがあるが、今あまりにもホット過ぎる二人の状況の為に、シークレットで『世界を熱狂させている、アノ人がやって来る♪ この凱旋ギグは外せない』くらいの宣伝で抑えることにした。杜さんの見解では、これでも分かる人には伝わりコアなファンは察して来られるだろうから、コレくらいが丁度良いという事だった。それプラスハロウィンの日に仮装で来てくれた方にはサービスがある。その感じでブログに掲載し、ビラを作り十月中は客様に宣伝することにした。そしてお店も先日作ったカボチャのランタンを飾り、お通しは猫の形のカボチャサラダを提供する事になった。
仕事をシッカリしなければと思うものの、カボチャランタンを飾る際璃青さんの作ったランタンを見るとつい手を止めてしまい、猫サラダを見るとポテサラで作った白猫を喜んでいた璃青さんを思い出す。そして璃青さんがどうしているのかがスゴく気になってしまう。我慢できず次の日そっと様子を見に行こうとしたら、Blue Mallowの扉は閉まっていた。
《誠に勝手ながら、三日間休業致します 店主・澤山》
そしてそんな張り紙が貼ってあって俺は呆然とする。お店を閉める程追いつめてしまったのだろうか? 俺は更に後悔してしまう。かなり動揺しながら黒猫に戻ると澄さんが実家に帰ったのだと教えてくれた。気力でBarでの仕事をなんとかこなし、閉店後看板を片づけにいって空を見上げると、そこには満月というには少し細い月が輝いていた。綺麗だけど、あの時璃青さんと見た月に比べたら何か物足りない! それは月の丸さだけでない事は嫌という程理解している。携帯を取り出して月を見ながら入力する。
『璃青さん、お元気ですか? 今、俺は月を眺めています。綺麗ですよ。
あの時の月には負けますが、とても綺麗です。ご実家に帰られていると澄さんから聞きました。なんか色々すいません。ますます璃青さんを悩ませてしまったようで申し訳ないです。
ご家族の所で羽伸ばしてゆっくり楽しんで下さい。
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今、同じ時間の月を見ていること、何故かとても嬉しく感じています。
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璃青さんからそんなメールが返ってくる。俺はその文面に出ている璃青さんの優しい言葉になんとも言えない喜びが込み上げる。それに今、璃青さんも月を眺めている? そう思うと寂しさも少しだけ紛れた。俺は深呼吸をしてから、もう一度空を見上げる。璃青さんも見ているであろう、満月というには少しだけ痩せた月を見る為に。
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