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BEFORE
(希望+夢)×(愛+優しさ)=キーボ君
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俺が入る事になったキーボ君とはそもそも何者なのか?
見た目は青いクラゲに、手足が生えた感じでレインボーカラーの飾りのついた黄色いベレー帽っぽいのが頭にのっている。
資料を見ると『希望が丘駅前商店街、ゆうYOU ミラーじゅ希望ヶ丘にやって来たみんなのお友達』とあり、希望と夢の妖精らしい。『希望』とか『夢』とか、何故そんな漠然としたものをマスコットにしたのか? 希望と夢に、愛と優しさを掛け合わせた結果この青い謎の生物となったようだ。頭にのっている黄色いベレー帽みたいのは帽子ではなく、『希望』らしい。そして虹色の飾りは『愛の取っ手』でエコバックを表現してあり『地球に優しく』を訴えているらしい。絶対後付けの設定だ。
で、それらを全部踏まえた感じでキーボ君を演じて欲しいと、ムチャ振りされた。
着てみると結構重い。昔の潜水服着ているような気分だ。成る程、目の部分全体が透けていて外部を見られるようだ。中は真っ暗という訳ではなく、全体からぼんやりと光が透けている為意外と明るい。
「きゃー、可愛い」
可愛らしく声を上げる雪さん。
「いいじゃない! 素敵よ」
ニコニコ笑いそういう籐子女将の言葉に頷く澄さん。
「本当に、透ユキくんにピッタリだわ! 似合うよね~」
何故か感心したように紬さんはそう言ってくる。
キグルミに似合うもピッタリもないと思うのだが、よく分からない絶賛の声に俺は微妙な顔するしかなかった。しかし褒めている叔母達には、ニヤリと笑った満足気なキーボ君の顔しか見えていないだろう。
彼女達に言われるままに、手を挙げたり、歩いてみたり、ターンしてみたりと動いては歓声をもらい、なんだか妙な気分だった。
一時間後、流石に初めてのキグルミを着て疲れて、ソファーで炭酸水を飲みながら休憩させてもらうことにする。しかし皆さんは元気なままで、横で女性五人はまだキーボ君を囲んで『あ~だ、こ~だ』と話し合っている。そしてキグルミ大改造が慣行される。内側にはペットボトルをセット出来るドリンクホルダーと、私物? を入れる為のポケットと、何故か荷物をかけられるフックがつけられた。
「これで、居住性はかなり良くなったと思うから、頑張ってね!」
集団で笑顔でそう言われると、俺は頷くしかない。もう完全に後には退けない。お礼をいいつつキーボ君(改)を怖ず怖ずと受け取った。
今週末の節分祭りで、お披露目となりそれから、神出鬼没に登場しては商店街を盛り上げて行くという、ザックリとしたスケジュールによりキーボ君プロジェクトはスタートした。
そう思いながらJazz Bar黒猫の上にある叔母の家で、タオルを頭と首に巻き、水のペットボトルを仕込みキーボ君を着る。細い出入り口をムニ~と身体を潰してなんとか通り抜け、背中のチャックを開け後ろ手で玄関の鍵を閉めてそれをジーンズのポケットにつっこみ内側から後ろのチャックを閉じる。エレベーターのボタンを一階押すつもりが、二階も同時に押してしまったものの何とか下に降りる事が出来た。お祭り総合本部となっている篠宮酒店の倉庫を先ずは目指すことにした。その倉庫まで十メートルくらい。しかも商店街から一本後ろの小道にあるので、こんな格好でも目立たないで移動出来るだろう。
一番の不安は、果たしてこの青い謎の生物が皆に受け入れられるのか? 俺はキーボ君を上手くやれるのか? 人の前に出るのもあまり得意ではない俺が。振り向くとエレベーターの扉に、俺ではなく、青いキーボ君がぼんやりと映っている。不安をこっそり打ち明けた叔父の根小山 杜さんの言葉を思い出す。
『せっかく自分ではない別のモノになれるチャンスではないか! 転ぼうが、失敗しようが、見ているヤツからしてみたら、それは青いぬいぐるみキーボ君の姿。だから何も恐れる事はないだろ!』
そう、今は東明透でも、透明人間でもない、俺はキーボ君なんだ!
そう言い聞かせ、俺は深呼吸をしてキーボ君の第一歩を踏み出した。
見た目は青いクラゲに、手足が生えた感じでレインボーカラーの飾りのついた黄色いベレー帽っぽいのが頭にのっている。
資料を見ると『希望が丘駅前商店街、ゆうYOU ミラーじゅ希望ヶ丘にやって来たみんなのお友達』とあり、希望と夢の妖精らしい。『希望』とか『夢』とか、何故そんな漠然としたものをマスコットにしたのか? 希望と夢に、愛と優しさを掛け合わせた結果この青い謎の生物となったようだ。頭にのっている黄色いベレー帽みたいのは帽子ではなく、『希望』らしい。そして虹色の飾りは『愛の取っ手』でエコバックを表現してあり『地球に優しく』を訴えているらしい。絶対後付けの設定だ。
で、それらを全部踏まえた感じでキーボ君を演じて欲しいと、ムチャ振りされた。
着てみると結構重い。昔の潜水服着ているような気分だ。成る程、目の部分全体が透けていて外部を見られるようだ。中は真っ暗という訳ではなく、全体からぼんやりと光が透けている為意外と明るい。
「きゃー、可愛い」
可愛らしく声を上げる雪さん。
「いいじゃない! 素敵よ」
ニコニコ笑いそういう籐子女将の言葉に頷く澄さん。
「本当に、透ユキくんにピッタリだわ! 似合うよね~」
何故か感心したように紬さんはそう言ってくる。
キグルミに似合うもピッタリもないと思うのだが、よく分からない絶賛の声に俺は微妙な顔するしかなかった。しかし褒めている叔母達には、ニヤリと笑った満足気なキーボ君の顔しか見えていないだろう。
彼女達に言われるままに、手を挙げたり、歩いてみたり、ターンしてみたりと動いては歓声をもらい、なんだか妙な気分だった。
一時間後、流石に初めてのキグルミを着て疲れて、ソファーで炭酸水を飲みながら休憩させてもらうことにする。しかし皆さんは元気なままで、横で女性五人はまだキーボ君を囲んで『あ~だ、こ~だ』と話し合っている。そしてキグルミ大改造が慣行される。内側にはペットボトルをセット出来るドリンクホルダーと、私物? を入れる為のポケットと、何故か荷物をかけられるフックがつけられた。
「これで、居住性はかなり良くなったと思うから、頑張ってね!」
集団で笑顔でそう言われると、俺は頷くしかない。もう完全に後には退けない。お礼をいいつつキーボ君(改)を怖ず怖ずと受け取った。
今週末の節分祭りで、お披露目となりそれから、神出鬼没に登場しては商店街を盛り上げて行くという、ザックリとしたスケジュールによりキーボ君プロジェクトはスタートした。
そう思いながらJazz Bar黒猫の上にある叔母の家で、タオルを頭と首に巻き、水のペットボトルを仕込みキーボ君を着る。細い出入り口をムニ~と身体を潰してなんとか通り抜け、背中のチャックを開け後ろ手で玄関の鍵を閉めてそれをジーンズのポケットにつっこみ内側から後ろのチャックを閉じる。エレベーターのボタンを一階押すつもりが、二階も同時に押してしまったものの何とか下に降りる事が出来た。お祭り総合本部となっている篠宮酒店の倉庫を先ずは目指すことにした。その倉庫まで十メートルくらい。しかも商店街から一本後ろの小道にあるので、こんな格好でも目立たないで移動出来るだろう。
一番の不安は、果たしてこの青い謎の生物が皆に受け入れられるのか? 俺はキーボ君を上手くやれるのか? 人の前に出るのもあまり得意ではない俺が。振り向くとエレベーターの扉に、俺ではなく、青いキーボ君がぼんやりと映っている。不安をこっそり打ち明けた叔父の根小山 杜さんの言葉を思い出す。
『せっかく自分ではない別のモノになれるチャンスではないか! 転ぼうが、失敗しようが、見ているヤツからしてみたら、それは青いぬいぐるみキーボ君の姿。だから何も恐れる事はないだろ!』
そう、今は東明透でも、透明人間でもない、俺はキーボ君なんだ!
そう言い聞かせ、俺は深呼吸をしてキーボ君の第一歩を踏み出した。
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