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スタンダードの光景
ある夏の日に
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真っ直ぐ四方に延びるクロスロード。測ったようにそれは綺麗に東西南北に向かっている。
そう言うと何処かの田舎の風景に思われるが、そこは都内のど真ん中にある。しかも山手線の真ん中。
四つ角にはシンメトリーにタワーマンションが空へと伸びている。その四棟を繋ぐのは円形の歩道橋。それが交差点の上にある。
未来的でSF映画に登場しそうな幾何学模様的な直線と曲線で構成されたスタイリッシュな空間。
日本の中心ではないし、山手線の中心からもズレている。それなのに世界の中心を意味するMedio Del Mondoと言う大層な名前が着いている施設。通称では【モンド】と呼ばれている。
その前衛的とも言えるデザインは出来た当時は評判となり皆がこぞって写真に撮りネットにあげたものだった。
流石にもう飽きてきたのか今は時々コスプレイヤーがそこで撮影をしているのを見かけるくらいになっている。
俺がその交差点を良く通るのは、別に気に入っているのでは無く、いつも行くお得意様への最短ルートであるからだ。
俺は指導中の新人と他愛ない話をしながら車を走らせる。
「この道、午前中は結構空いているんだ。かえって裏道使うより早く進む。
でも夕方は避けた方が良いな」
「そんなに違うのですか?」
こんな事までメモに取る部下をつい笑ってしまう。微笑ましいという意味で。
四本のタワーマンションが正面遠くに見えてくる。時計をチラリと見ると十一時七分。約束の時間には余裕で間に合いそうでホッとする。
「あっ。雨」
部下の声が車内に響く。
フロントガラスを見るとポツリポツリと大きな雨粒が落ちてくる。ワイパーを動かしたタイミングでそれは雨粒では無く滝のような雨に変わった。
空を見ると俺のいる上空だけが黒く厚い雲があり、交差点の先の空は青く晴れている。どうやら最近頻発しているゲリラ豪雨なようだ。しかも雷まで伴って嫌な天気となっている。
「佐藤さん、運転大丈夫ですか?」
雷雨の中の運転は楽しいものではない。しかし外を歩いているタイミングでの雨ではなった事は運が良かったのかもしれない。
「俺たち運が良いな
見ろ! あっちの空は晴れている!
この雨には当たらず歩けそうだ」
そう言いながらモンドの交差点の円の中に突入する。
「ゥッ」
よく分からない音を感じそのあと不愉快な耳鳴りがした。
部下の笑った声が聞こえた直後に眩い光に包まれる。俺は思わずブレーキを踏む。
グワッラヴァチ!!
なんと表現して良いのか分からない轟音が響く。目もくらむような光と共に轟音が俺を包み身体が車ごと浮いた。
その後の風景は何故かスローモーションように流れる。【11:11:11】と時間を示す時計。助手席の部下の叫び声。
浮いて洗濯機に入った衣類のように回転する俺の乗る車。少し離れた場所で同じように回るもう一台の青い車が見えた。営業車のようで黄色い雷のイラストと通信会社のロゴが車の側面についている。ナンバープレートには【17-17】の数字
運転席で叫び慄いている男の姿も見えた。俺と目が会う。その口は『助けてくれ』と動く。今の俺に何か出来る訳もない。俺も同じように叫んでいたのだと思う。
二台の車は上昇を続けながら徐々にそのスピードお遅くしていく。今度は激しいスピードで下降していった。遊園地の絶叫系アトラクションよりもえげつなくそして容赦なく。
車は地面に叩きつけられ、それまで俺達の身体を守ってくれていた筈の乗っていた車に潰された。
グシャッ
車内のスペースはなくなる。
自分の身体が発した嫌な音を最後に、意識は闇に放り投げられた。
※ ※ ※
コチラの作品ラストまで毎日11:11:11分に公開させて頂きます。(と言いたい所ですがそれは難しいので11:10に公開させて貰います)
そう言うと何処かの田舎の風景に思われるが、そこは都内のど真ん中にある。しかも山手線の真ん中。
四つ角にはシンメトリーにタワーマンションが空へと伸びている。その四棟を繋ぐのは円形の歩道橋。それが交差点の上にある。
未来的でSF映画に登場しそうな幾何学模様的な直線と曲線で構成されたスタイリッシュな空間。
日本の中心ではないし、山手線の中心からもズレている。それなのに世界の中心を意味するMedio Del Mondoと言う大層な名前が着いている施設。通称では【モンド】と呼ばれている。
その前衛的とも言えるデザインは出来た当時は評判となり皆がこぞって写真に撮りネットにあげたものだった。
流石にもう飽きてきたのか今は時々コスプレイヤーがそこで撮影をしているのを見かけるくらいになっている。
俺がその交差点を良く通るのは、別に気に入っているのでは無く、いつも行くお得意様への最短ルートであるからだ。
俺は指導中の新人と他愛ない話をしながら車を走らせる。
「この道、午前中は結構空いているんだ。かえって裏道使うより早く進む。
でも夕方は避けた方が良いな」
「そんなに違うのですか?」
こんな事までメモに取る部下をつい笑ってしまう。微笑ましいという意味で。
四本のタワーマンションが正面遠くに見えてくる。時計をチラリと見ると十一時七分。約束の時間には余裕で間に合いそうでホッとする。
「あっ。雨」
部下の声が車内に響く。
フロントガラスを見るとポツリポツリと大きな雨粒が落ちてくる。ワイパーを動かしたタイミングでそれは雨粒では無く滝のような雨に変わった。
空を見ると俺のいる上空だけが黒く厚い雲があり、交差点の先の空は青く晴れている。どうやら最近頻発しているゲリラ豪雨なようだ。しかも雷まで伴って嫌な天気となっている。
「佐藤さん、運転大丈夫ですか?」
雷雨の中の運転は楽しいものではない。しかし外を歩いているタイミングでの雨ではなった事は運が良かったのかもしれない。
「俺たち運が良いな
見ろ! あっちの空は晴れている!
この雨には当たらず歩けそうだ」
そう言いながらモンドの交差点の円の中に突入する。
「ゥッ」
よく分からない音を感じそのあと不愉快な耳鳴りがした。
部下の笑った声が聞こえた直後に眩い光に包まれる。俺は思わずブレーキを踏む。
グワッラヴァチ!!
なんと表現して良いのか分からない轟音が響く。目もくらむような光と共に轟音が俺を包み身体が車ごと浮いた。
その後の風景は何故かスローモーションように流れる。【11:11:11】と時間を示す時計。助手席の部下の叫び声。
浮いて洗濯機に入った衣類のように回転する俺の乗る車。少し離れた場所で同じように回るもう一台の青い車が見えた。営業車のようで黄色い雷のイラストと通信会社のロゴが車の側面についている。ナンバープレートには【17-17】の数字
運転席で叫び慄いている男の姿も見えた。俺と目が会う。その口は『助けてくれ』と動く。今の俺に何か出来る訳もない。俺も同じように叫んでいたのだと思う。
二台の車は上昇を続けながら徐々にそのスピードお遅くしていく。今度は激しいスピードで下降していった。遊園地の絶叫系アトラクションよりもえげつなくそして容赦なく。
車は地面に叩きつけられ、それまで俺達の身体を守ってくれていた筈の乗っていた車に潰された。
グシャッ
車内のスペースはなくなる。
自分の身体が発した嫌な音を最後に、意識は闇に放り投げられた。
※ ※ ※
コチラの作品ラストまで毎日11:11:11分に公開させて頂きます。(と言いたい所ですがそれは難しいので11:10に公開させて貰います)
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