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36話
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何が起きたのかと言うと、羽山が本気の拳を僕の腹に突き刺したのだった。初めはその痛さから、本当に刺されたのかと思った。
ふりだと言っていたのに、そんな話聞いていない。と言うか、本当に痛すぎて立てない。
「大輔君。大丈夫?」
僕をこうした本人がよく言うよ。
「本当に痛かった」
「そっか。ごめんね。でもね、私も学校にこんなにも人が潜伏しているなんて知らなかったから」
羽山は怒っていた。
ずっとお面を被ってくれていてよかった。あのお面の下も般若みたいな顔をしているんだろうなきっと。
僕が立ち上がれるようになるまで羽山はそばにいてくれたが、僕からしてみればそっちの方が怖かった。また殴られるんじゃないかと思って。
「ごめん。今回のことは悪かったよ。でも、羽山だってみんなに手紙送っているだろ。僕だけの責任ではないと思うけど」
「………………」
お面を被っているから、羽山の表情が読めない。
「おかわりが欲しいって?」
「すみませんもう2度と言いません」
羽山の言葉に屈した僕は深々と頭を下げた。
本当は土下座をしようか悩んだけど、ここぞとばかりに蹴られそうだから、安全面を考慮して頭を下げることにした。
「冗談だよ。はい、この話はおしまい。大輔君にはして欲しいことがあるから、よく聞いて。今から西階段を上がって、3階にある私たちの教室の掃除道具入れの中に隠れてて。私が合図したら勢いよく扉を開けて出てきて」
新たな指示が下された。今の僕は羽山の僕みたいなものだから、従うしかない。
「でも羽山。扉がどこも開かないんだけど、どうやって西階段から上に行くの?」
「トイレだよ。トイレの窓を開けてあるからそこから出入りするんだよ」
僕らの敗因はそこか。窓から出ていくってことをしなかったからか。みんな、落ち着いてなんていられなかったから、窓から出ていくなんてことを思いつかなかった。まあ、外に出ても真壁が事件のように扱いそうだったから、結果として出れなくてよかったけど。それにしてもトイレの窓からか。1人でのトイレは少し怖いな。羽山がいても怖いけど。
とりあえず僕は西階段から3階に行けばいいのか。それにしてもなんで僕らの教室なのだ。教室以外に広い部屋とかも他にはあるのに。わざわざあんな狭い教室にする必要はあるのだろうか。机と椅子があって身動きが取りづらいからふりになるのは羽山な気がするけど。ああ、でもあの羽山だから。一般の人ならついていくことさえも不可能な動きをする羽山だから、机や椅子は障害物にならないのか。
西階段を登って3階のベランダに入る。誰の声も聞こえない静けさが奇妙な空間を作り上げていた。
ここから僕らの教室までは1本道だけど。他の人に見つかるのはまずいだろうから、慎重に進まないと。特に時計の下は、階段からもよく見えるから、ここだけは屈んで進まないと。
教室の前までやってきたが、肝心のベランダからの扉は開いているのか。普通に中に入ればよかった。誰かと出会うかもしれないからと用心してしまった。もし扉が開いてなかったら僕はベランダで過ごすしかない。頼むから開いてくれ。
扉は普通に開いた。
僕は羽山に言われた通り、掃除道具入れの中に隠れた。
狭い、暗い、そして臭い。誰か絶対に牛乳拭いた雑巾をここに捨てている。これ夏休みが明けたら大変なことになりそうだ。
掃除道具入れの中は最悪だった。羽山が何をするつもりなのか知らないけど、早くきてくれないかなって思っていた。
そんな時だった。教室の扉が開く音がした。やっとみんなが来たのかと思ったが、やけに静かだし、足音は1人だった。覗き窓のようなものがあれば、外の様子を少しでも見られるのに、そう言う類のものは一切付いていなく、僕の視界には暗闇しか映っていなかった。それに様子がおかしかった。来て何かをしているようだった。机や椅子を動かす音が聞こえていた。その音が聞こえなくなった瞬間くらいに、僕がいる掃除道具入れにも聞こえるくらい大きな悲鳴が聞こえてきたのだった。それと、廊下を走るパタパタとした足音も。近づいたり遠くなったりして、最後にはこの教室にみんなが集まっていた。声で何人かは判断できた。まだ集まっていない人もいるかもしれないけど、羽山のことだから抜かりなくしているんだろうな。
教室に集まっている人は混乱しているようで、「何がどうなっているの!」「何が起きているの!」と口々に言っていた。誰も答えを持ち合わせていないから、話がまとまることなく、同じようなことを延々と聞かされていた。そう言えば、この混乱をまとまられそうな祐介の声がしない。羽山に囚われてでもいるのだろうか。こんなことを考えるから。
そんな僕も、羽山の指示で掃除道具入れに隠れているから、言ってしまえば羽山に囚われている。と言うか、みんなこれだけ集まっているのだから、そろそろ掃除道具入れから出してくれてもいいんじゃないか。この場所くさいから早く出たい。
そんな僕には目もくれず、新たな悲鳴が教室中に響きわたる。
ふりだと言っていたのに、そんな話聞いていない。と言うか、本当に痛すぎて立てない。
「大輔君。大丈夫?」
僕をこうした本人がよく言うよ。
「本当に痛かった」
「そっか。ごめんね。でもね、私も学校にこんなにも人が潜伏しているなんて知らなかったから」
羽山は怒っていた。
ずっとお面を被ってくれていてよかった。あのお面の下も般若みたいな顔をしているんだろうなきっと。
僕が立ち上がれるようになるまで羽山はそばにいてくれたが、僕からしてみればそっちの方が怖かった。また殴られるんじゃないかと思って。
「ごめん。今回のことは悪かったよ。でも、羽山だってみんなに手紙送っているだろ。僕だけの責任ではないと思うけど」
「………………」
お面を被っているから、羽山の表情が読めない。
「おかわりが欲しいって?」
「すみませんもう2度と言いません」
羽山の言葉に屈した僕は深々と頭を下げた。
本当は土下座をしようか悩んだけど、ここぞとばかりに蹴られそうだから、安全面を考慮して頭を下げることにした。
「冗談だよ。はい、この話はおしまい。大輔君にはして欲しいことがあるから、よく聞いて。今から西階段を上がって、3階にある私たちの教室の掃除道具入れの中に隠れてて。私が合図したら勢いよく扉を開けて出てきて」
新たな指示が下された。今の僕は羽山の僕みたいなものだから、従うしかない。
「でも羽山。扉がどこも開かないんだけど、どうやって西階段から上に行くの?」
「トイレだよ。トイレの窓を開けてあるからそこから出入りするんだよ」
僕らの敗因はそこか。窓から出ていくってことをしなかったからか。みんな、落ち着いてなんていられなかったから、窓から出ていくなんてことを思いつかなかった。まあ、外に出ても真壁が事件のように扱いそうだったから、結果として出れなくてよかったけど。それにしてもトイレの窓からか。1人でのトイレは少し怖いな。羽山がいても怖いけど。
とりあえず僕は西階段から3階に行けばいいのか。それにしてもなんで僕らの教室なのだ。教室以外に広い部屋とかも他にはあるのに。わざわざあんな狭い教室にする必要はあるのだろうか。机と椅子があって身動きが取りづらいからふりになるのは羽山な気がするけど。ああ、でもあの羽山だから。一般の人ならついていくことさえも不可能な動きをする羽山だから、机や椅子は障害物にならないのか。
西階段を登って3階のベランダに入る。誰の声も聞こえない静けさが奇妙な空間を作り上げていた。
ここから僕らの教室までは1本道だけど。他の人に見つかるのはまずいだろうから、慎重に進まないと。特に時計の下は、階段からもよく見えるから、ここだけは屈んで進まないと。
教室の前までやってきたが、肝心のベランダからの扉は開いているのか。普通に中に入ればよかった。誰かと出会うかもしれないからと用心してしまった。もし扉が開いてなかったら僕はベランダで過ごすしかない。頼むから開いてくれ。
扉は普通に開いた。
僕は羽山に言われた通り、掃除道具入れの中に隠れた。
狭い、暗い、そして臭い。誰か絶対に牛乳拭いた雑巾をここに捨てている。これ夏休みが明けたら大変なことになりそうだ。
掃除道具入れの中は最悪だった。羽山が何をするつもりなのか知らないけど、早くきてくれないかなって思っていた。
そんな時だった。教室の扉が開く音がした。やっとみんなが来たのかと思ったが、やけに静かだし、足音は1人だった。覗き窓のようなものがあれば、外の様子を少しでも見られるのに、そう言う類のものは一切付いていなく、僕の視界には暗闇しか映っていなかった。それに様子がおかしかった。来て何かをしているようだった。机や椅子を動かす音が聞こえていた。その音が聞こえなくなった瞬間くらいに、僕がいる掃除道具入れにも聞こえるくらい大きな悲鳴が聞こえてきたのだった。それと、廊下を走るパタパタとした足音も。近づいたり遠くなったりして、最後にはこの教室にみんなが集まっていた。声で何人かは判断できた。まだ集まっていない人もいるかもしれないけど、羽山のことだから抜かりなくしているんだろうな。
教室に集まっている人は混乱しているようで、「何がどうなっているの!」「何が起きているの!」と口々に言っていた。誰も答えを持ち合わせていないから、話がまとまることなく、同じようなことを延々と聞かされていた。そう言えば、この混乱をまとまられそうな祐介の声がしない。羽山に囚われてでもいるのだろうか。こんなことを考えるから。
そんな僕も、羽山の指示で掃除道具入れに隠れているから、言ってしまえば羽山に囚われている。と言うか、みんなこれだけ集まっているのだから、そろそろ掃除道具入れから出してくれてもいいんじゃないか。この場所くさいから早く出たい。
そんな僕には目もくれず、新たな悲鳴が教室中に響きわたる。
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