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31話
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「ちょっとよくわからないけど、どうしてそう思ったの?」
目を逸らす僕に羽山は笑いかけた。
「ふっふっふっ、それは簡単だよ。私がこの学校に来た時から大輔君お様子がおかしかったから。それが、3階に来てから確信に変わった。私たちが3階に足を踏み入れたタイミングで鳴り出したピアノ、前回とは打って変わって怖がる様子のない大輔君。つまり、このピアノを弾いているのは大輔君の知っている人。大輔君の知っている人でピアノを弾ける人は、音楽の先生か真壁さんだけ。音楽の先生はいつも車で学校に来ているんだよ。家が遠いから車じゃないと来られないんだよ。その先生の車がないから、音楽の先生は来ていない。となると、あとは真壁さんだけ。でも、大輔君が誘っただけで真壁さんがきてくれるとは思えないんだよね。2人って仲が悪いわけじゃないけど、接点ってほとんどないよね。そこがずっと謎だったの。でも、真壁さん以外に協力者がいるって仮定で話を進めたら、納得できる答えに辿り着いたんだよ。真壁さんの他に曽田君が協力者としているでしょ」
もうお終いだ。裕介のことがバレた時点で、僕らの計画は破綻する。
裕介よ、1人で羽山の相手をするのは僕には無理だったようだ。
「答え合わせの時間はまだ先だけど、どうする?」
「真壁さんが可哀想だから、少しは驚いてあげる」
羽山はようやく歩みを始めた。
音楽室の扉の窓から中を覗く。ピアノの演奏は相変わらず聞こえているが、そこに人の姿はなかった。誰もいないのに、ピアノの音だけが聞こえていた。
僕の知っている話では、真壁が弾いているってことになっていたけど誰もいないとはどう言うことだ。裕介目何を仕組んだ。そんな話聞いていないぞ。
僕は裕介の仕業だと信じ込んでいるから、初めは驚いていたけど、羽山は、誰もいない音楽室に体を振るわせ驚いていた。
「……あ、あれ、ま、真壁さんは……?」
「い、いないね……」
「そ、そうか、死角に隠れているんだ。だから、私たちが見る場所を変えれば、姿が見えるってこと」
羽山は音楽室の後ろの扉からまた中を覗いた。
「あ、あれ、真壁さんいないね……」
羽山は頭が混乱しているようだった。そこに関しては僕だって同じだ。ただ、裕介の仕業だって分かっているから、怖くはないけど。でも、実際どうやって僕らから見えないところでピアノを弾いているんだ。ここは裕介を褒めるしかないな。喜べ裕介、羽山を出し抜けているぞ。
「羽山、中には入らないの?」
裕介がどんな手を使ってこのピアノを鳴らしているのか見てみたい。それはつまり羽山に答えを教えることになるけど、どうやっているのか気になる。
「ピ、ピアノの音が聞こえるって分かったからそれでいいよ。さあ、次に進もう」
羽山は相当怖がっているようだ。
まあ、羽山がいいって言うのなら、僕もそれでいいけど。あとで裕介にどんな仕掛けを使ったのか尋ねてみよう。
「次はトイレだね」
「トイレはもういいかな。前回に試して何も起きなかったし」
羽山はかなり消極的になっていた。
前回の威勢はどこに行った。あれだけ我先にと足を進めていたのに。
僕らの教室の横を通り過ぎている途中、ゆっくりと椅子を引く音が聞こえていた。羽山はその音に驚いて、まるでコアラのように僕の腕を全身で掴んでいた。
「羽山、力強いって」
「あ、ご、ごめん……」
僕もこんなことが起こるとは知らなかったけど、これは怖い。よく考えたものだ。他にもこんな仕掛けがあるのか。これから先、さっきのような裕介の仕掛けがたくさんあると考えれば、どんな仕掛けをしているのか楽しみになってきた。羽山も、驚いて考えることができなくなっているし、なんせ、普段は表情が豊かじゃない羽山のいろんな顔を見えるのが楽しみだ。羽山も普通に人間なんだなって実感できるから。
僕らが階段に差し掛かったところで、僕はトイレの方向に、羽山は階段を上がろうと左に曲がろうとしていた。
「本当に行かないの?」
「うん。だって、トイレは1人になるから」
絶対に行かないという強い意志を羽山から感じた。
「そっか。それじゃあ、屋上に行こうか」
羽山が階段を上がり始めた瞬間だった。ほぼ物置と化している屋上への入り口付近で、何かが倒れるような大きな物音がした。
階段を上がっていた羽山の足は、置物のように微動だにせず止まっていた。立て続けにこんなことが起きたら怖いよな。
羽山は階段から降りて、踊り場で立ち止まった。
「今日はもう帰ろうか」
「何で!」
幽霊がそこまで怖いか。
前の職員室でのことを考えると、そうなのかも知れないけど、物音がしたくらいで諦める羽山か。
仕方ないな。場所が悪いけどネタバラシをしてやるか。
「羽山。ちょっといい?」
この場所から人がいないく、不自然じゃない教室は、多目的室。あの場所には誰もいないだろうし、壁に防音が施されているから話をしていても、そこら辺の教室よりは聞かれる心配はないとお思う。
羽山と多目的室に入って、中から鍵を閉める。
「それで話って何?」
目を逸らす僕に羽山は笑いかけた。
「ふっふっふっ、それは簡単だよ。私がこの学校に来た時から大輔君お様子がおかしかったから。それが、3階に来てから確信に変わった。私たちが3階に足を踏み入れたタイミングで鳴り出したピアノ、前回とは打って変わって怖がる様子のない大輔君。つまり、このピアノを弾いているのは大輔君の知っている人。大輔君の知っている人でピアノを弾ける人は、音楽の先生か真壁さんだけ。音楽の先生はいつも車で学校に来ているんだよ。家が遠いから車じゃないと来られないんだよ。その先生の車がないから、音楽の先生は来ていない。となると、あとは真壁さんだけ。でも、大輔君が誘っただけで真壁さんがきてくれるとは思えないんだよね。2人って仲が悪いわけじゃないけど、接点ってほとんどないよね。そこがずっと謎だったの。でも、真壁さん以外に協力者がいるって仮定で話を進めたら、納得できる答えに辿り着いたんだよ。真壁さんの他に曽田君が協力者としているでしょ」
もうお終いだ。裕介のことがバレた時点で、僕らの計画は破綻する。
裕介よ、1人で羽山の相手をするのは僕には無理だったようだ。
「答え合わせの時間はまだ先だけど、どうする?」
「真壁さんが可哀想だから、少しは驚いてあげる」
羽山はようやく歩みを始めた。
音楽室の扉の窓から中を覗く。ピアノの演奏は相変わらず聞こえているが、そこに人の姿はなかった。誰もいないのに、ピアノの音だけが聞こえていた。
僕の知っている話では、真壁が弾いているってことになっていたけど誰もいないとはどう言うことだ。裕介目何を仕組んだ。そんな話聞いていないぞ。
僕は裕介の仕業だと信じ込んでいるから、初めは驚いていたけど、羽山は、誰もいない音楽室に体を振るわせ驚いていた。
「……あ、あれ、ま、真壁さんは……?」
「い、いないね……」
「そ、そうか、死角に隠れているんだ。だから、私たちが見る場所を変えれば、姿が見えるってこと」
羽山は音楽室の後ろの扉からまた中を覗いた。
「あ、あれ、真壁さんいないね……」
羽山は頭が混乱しているようだった。そこに関しては僕だって同じだ。ただ、裕介の仕業だって分かっているから、怖くはないけど。でも、実際どうやって僕らから見えないところでピアノを弾いているんだ。ここは裕介を褒めるしかないな。喜べ裕介、羽山を出し抜けているぞ。
「羽山、中には入らないの?」
裕介がどんな手を使ってこのピアノを鳴らしているのか見てみたい。それはつまり羽山に答えを教えることになるけど、どうやっているのか気になる。
「ピ、ピアノの音が聞こえるって分かったからそれでいいよ。さあ、次に進もう」
羽山は相当怖がっているようだ。
まあ、羽山がいいって言うのなら、僕もそれでいいけど。あとで裕介にどんな仕掛けを使ったのか尋ねてみよう。
「次はトイレだね」
「トイレはもういいかな。前回に試して何も起きなかったし」
羽山はかなり消極的になっていた。
前回の威勢はどこに行った。あれだけ我先にと足を進めていたのに。
僕らの教室の横を通り過ぎている途中、ゆっくりと椅子を引く音が聞こえていた。羽山はその音に驚いて、まるでコアラのように僕の腕を全身で掴んでいた。
「羽山、力強いって」
「あ、ご、ごめん……」
僕もこんなことが起こるとは知らなかったけど、これは怖い。よく考えたものだ。他にもこんな仕掛けがあるのか。これから先、さっきのような裕介の仕掛けがたくさんあると考えれば、どんな仕掛けをしているのか楽しみになってきた。羽山も、驚いて考えることができなくなっているし、なんせ、普段は表情が豊かじゃない羽山のいろんな顔を見えるのが楽しみだ。羽山も普通に人間なんだなって実感できるから。
僕らが階段に差し掛かったところで、僕はトイレの方向に、羽山は階段を上がろうと左に曲がろうとしていた。
「本当に行かないの?」
「うん。だって、トイレは1人になるから」
絶対に行かないという強い意志を羽山から感じた。
「そっか。それじゃあ、屋上に行こうか」
羽山が階段を上がり始めた瞬間だった。ほぼ物置と化している屋上への入り口付近で、何かが倒れるような大きな物音がした。
階段を上がっていた羽山の足は、置物のように微動だにせず止まっていた。立て続けにこんなことが起きたら怖いよな。
羽山は階段から降りて、踊り場で立ち止まった。
「今日はもう帰ろうか」
「何で!」
幽霊がそこまで怖いか。
前の職員室でのことを考えると、そうなのかも知れないけど、物音がしたくらいで諦める羽山か。
仕方ないな。場所が悪いけどネタバラシをしてやるか。
「羽山。ちょっといい?」
この場所から人がいないく、不自然じゃない教室は、多目的室。あの場所には誰もいないだろうし、壁に防音が施されているから話をしていても、そこら辺の教室よりは聞かれる心配はないとお思う。
羽山と多目的室に入って、中から鍵を閉める。
「それで話って何?」
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