Daddy Killer

リョウタ

文字の大きさ
上 下
20 / 25

第二十話 「悔いの残らない人生」

しおりを挟む
ハアハア。

やっぱり少し息が切れる。

動揺してる?

僕もどこにでもいるただの人だっててことなのかな?

とりあえず、井戸沢を殺すことには成功した。

あとは冷静にこの場から離れるのみ。

家も燃やしたし、井戸沢が死んだことは間違いない。

現場に戻ってはいけない。

放火犯は現場に戻るとお父さんが言っていた。

だから、ゆっくり静かにこの場から離れるんだ。

電車に乗って、河原町まで行こう。

電車で大阪に帰れるが、今日は帰らない。

交通公共機関には常に防犯カメラが作動している。

今日はマンガ喫茶に泊まろう。

明日以降、ゆっくり家に帰ろう。

僕は河原町のマンガ喫茶に入った。

個室にしてもらい、一晩眠ろうと思う。

あれだけのことをしたんだ。

疲れていないわけがない。

でも普通の神経じゃ興奮し過ぎて寝れないんじゃないか?

てか人を一人殺しといて、穏やかに眠れるものなのか?

とかなんとか考えているうちにいつの間にか眠ってしまっていた。

一つ目的を達成したことによる満足感なのだろうか。

夢の中。

人を殺すと罪悪感から一生うなされるという。

僕はどうなのか。

人の影が見える。

誰かな?

恰幅の良い体格。

優しい顔。

大きい目。

濁った目をした。

井戸沢だ。

夢の中で化けて出やがったのか!!

違う。

井戸沢が誰かとやっている。

僕とは違う。

若い男とだ!!

とても気持ち良さそうに。

激しく。

ついたり。

なめたり。

二人は愛し合っていた。
「うわっ。」

僕は堪らず、目を覚ました。

朝か。

寝れたけど、嫌な夢だな。

井戸沢本人を殺したのに、こんな夢をみるってどうなんだ?

井戸沢の呪い?

いや。

僕の嫉妬がまだ抜けていない。

本人がいないからどうしようもないのに。

スッキリしたのは、昨日の井戸沢を殺したときだけ?

井戸沢が僕を嘲笑って、他の男の子とやりまくっていたと思うと、もっと惨殺してやれば良かった。

いやいや。

それはダメだ。

証拠が残り過ぎる。

今回の井戸沢の殺人は完全犯罪にする。

家族に迷惑をかけるわけにはいかないからだ。

昨日、すぐに大阪に帰らなかったのは、防犯カメラにうつる僕を警察に見せたくなかったからだ。
だから、今日はゆっくり大阪に帰る。

まず、タクシーで高槻まで行く。

そこから、僕の住んでいる大阪市まで歩く。

何となく、それがいいと思っている。

明日は仕事だから、夜までに着けばいい。

今後について、いろいろ考えなければならないことが山のようにある。

それを長い時間かけて、歩きながら考えればいい。

まずは井戸沢から唯一奪ってきたスマホ。

井戸沢のスマホを現場に残すのは絶対ダメ。

電源入れるのもダメ。

GPSで探索されちゃうから。

このスマホの処分の仕方だ。

どこに捨てようか。

コンビニのゴミ箱に捨ててもバレないと思うけど、なんでだろう?

こわくてできない。

どっか遠くに行って捨てたいな。

僕は朝の9時まで、マンガ喫茶にいた。

今からタクシーで高槻に向かおうと思った。

でも、調べてみた。

高槻から大阪市まで歩いて何分かかるかを。

4時間~5時間ほどしかかからなかった。

これでは早く帰れてしまい過ぎると思った僕は、もういっそのこと歩いて大阪に帰ることにした。
大阪の標識を目指して歩き始めた。

「出発!!あっ。なんか楽しい。冒険みたいで。」

ホントに僕はサイコパスだ。

人一人殺しているのに、なんかピクニックしているみたいに楽しんでいる。

僕の手は汚れてしまった。

犯罪者だ。

なのに、前向きだ。

変だ。

今、一生懸命、人生をどう生きようか考えている。

考えながら、歩いている。

僕はどうすべきか。

そして、また頭に浮かんだ。

井戸沢さんが。

僕は井戸沢さんがたくさんの若い男の子を相手にするのが嫌だった。

だから聞いたことがあったんだ。

「井戸沢さんはどうしてたくさんの特定の男の子と付き合うの?一人じゃダメなの?」

「え~。若い男の子は次から次へと出てくるでしょ?その子たちと楽しいことができないなんて、もったいないよ~。」

「一人だけ愛することはできないの?」

「飽きちゃうもん。やっぱりいろんな若い子としたいよね。人生一度きりなんだから、楽しまなくちゃ。悔いの残らない人生を送ろうよ。」

そうだ。

井戸沢のこの言葉は好きかもしれない。

だから、僕は今回覚悟を決めた。

自分を後悔させないように。

精いっぱいやった結果だ。

後悔してはいけない。

これで良かったんだ。

僕か井戸沢が死ぬかどちらかの二択だったんだ。

自殺者になるか殺人者になるか。

よく考えたら、僕以外にも辛い思いをしている若い子たちがたくさんいるんだろうな。

おじさんから誘ってきたのに、捨てられる若い子たち。

これは男女関係ないんじゃないか?

お金目当てだったら話は違うと思うけど。

あっ。

お金。

そうか。

最初からパパ活だったら、こんなことにならなかったのかな。

パパを愛するんじゃなくて、お金を愛していれば。

僕にはできなかったかな。

結局、パパを愛して捨てられてしまうのかな。

なんて悲しいんだろう。

なんて虚しいんだろう。

憎むべきは誰なんだろう?

お金で好き勝手してるやつら?

井戸沢もやや小金持ち。

金を持っているジジイどもは敵かもしれない。

そうだ。

制裁を加えるべきだ。

調子にのって若い者たちをおもちゃのように弄ぶ外道どもに。

僕が制裁を加える。

井戸沢のようなやつらを殺す!!

本当の「Daddy Killer」になる。

地獄を見せてやるんだ。

ああ。

いい目的ができた。

近いうちに会社は辞めよう。

僕の職業は「Daddy Killer」だ。

そうこうと自分の今後のあり方を考えていたら、10時間くらい歩き続けていた。

京都から大阪市内の僕のアパートまでたどり着いた。

ふぅー。疲れた。

ポストに手紙が入っている。

愛加からだ。

「良太へ。良太に身に何が起こったかだいたいわかっている。良太の心に大きな傷を抱えていることもわかってる。今じゃなくていい。落ち着いたら、連絡ください。私、待ってるから。愛加。」

違うんだ。

愛加。

もう、僕は一人で考えたいんだ。

どうすべきか。

誰にも頼りたくない。

次郎にも井戸沢にも誰にも依存したくなかったんだ。

依存したから、関わったからこういうことになったんだ。

僕のような人間は誰にも関わっちゃいけない。

特に善良な方々とは。

もう悪を討つしかないんだ。

蛇の道は蛇。

井戸沢のようなやつらを討つのが、僕のさだめなんだ。

だから、愛加。

お別れだ。

僕なんかに気をかけてくれてありがとう。

幸せになってください。

僕は僕の道に行きます。

さようなら。

つづく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

不良少年達は体育教師を無慈悲に弄ぶ

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

愛され末っ子

西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。 リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。 (お知らせは本編で行います。) ******** 上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます! 上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、 上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。 上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的 上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン 上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。 てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。 (特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。 琉架の従者 遼(はる)琉架の10歳上 理斗の従者 蘭(らん)理斗の10歳上 その他の従者は後々出します。 虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。 前半、BL要素少なめです。 この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。 できないな、と悟ったらこの文は消します。 ※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。 皆様にとって最高の作品になりますように。 ※作者の近況状況欄は要チェックです! 西条ネア

処理中です...