The Energy World

リョウタ

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第二十一エナジー 「愛と加賀美と入間の戦い方」

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「Bブロックの一回戦。地球人の『鈴中愛』対プテラノドンの『ワスター』。集合だ。」

「次は私の出番。竜牙。私の技の多彩さに小便ちびるんじゃないわよ?」

「へいへい。」

「ちょっと愛ちゃん。はしたないわよ?」

「私としたことが。決勝戦で楽しみにしているわ。竜牙。」

愛は高慢な態度で出ていった。

「ホントうるせー女。」

「ああ見えて、愛ちゃんはすごく努力家なのよ。たぶん次の試合で見せるわ。愛ちゃんが夏休みにずっと研究していたエナジー能力を。って唯竜牙と話ししちゃった。勘違いしないでよね。あんたはエナジー部隊の敵なんだからね。」

「女ってめんどくせーやつばっか。」

愛はBブロックの舞台にやってきた。

プテラノドンのワスターは上空から現れた。

「あっ。確かあなたって昨日、この星に来た時、竜牙を乗せていたプテラノドンよね?」

「覚えていたか。地球人。あの時は、アルデランス様の命で手出しできなかったが、今は違う。ズタズタにしてやる。」

「ヤダヤダ。どいつもこいつも野蛮な奴らばっか。」

「地球人の『鈴中愛』対プテラノドンの『ワスター』はじめ!!」

開始早々に上空に飛んでいくワスター。

「ホントわかりやすいわね。プテラノドン。うふ。」

「フン。エナジーマジックで体中風穴だらけにしてやるぜ。人間!!」

上空に飛んだワスター。

「ん?」

しかし、地上の闘技場舞台には愛の姿がなかった。

「あいつ、どこ行った?」

「ここよ。」

ドカッ。

愛はワスターのさらに上空に移動していた。

愛は蹴りをワスターにかまし、吹っ飛ばした。

「グフッ。」

「んもう。スピードが大したことないのよ。空飛ぶ生き物なんだからもっとちゃんとしなさいな。」

愛のウガンドロン。

シールド高速移動術は、ワスターの空飛ぶスピードより遥かに速かった。

だてに通学で、町田から横須賀まで空を飛んで移動しているだけはある。

「後悔させてやる!!人間!!『ハバ』(風)!!」

ワスターはエナジーマジックで風を発生させた。

ワスターのシールド全体を風が覆っている。

ワスターの身体能力の一つである翼。

自身の力で飛ぶ力と、シールド高速移動術ウガンドロン、そこに風の力を合わせると、やすやすと愛のスピード以上になってしまった。

シュン!!

ワスターはそのスピードを活かし、爪を強化させ、愛に切りかかってきた。

「ちょっと速い!!わっ。」

なんとかかわした愛。

「次はない。もっと力をあげる。」

さらに強力な風を纏い始めた。

まるで竜巻のようだ。

さっきよりもスピードがさらに速い。

愛のウガンドロンでは逃げようがない。

「死ね!!人間!!」

ズガン!!

竜巻のようなワスターは愛を貫いたようにみえた。

「やったか。」

「なわけないでしょ。そんな痛そうな攻撃お断り。」

「バカな。人間。お前に俺の攻撃を避けられるスピードなんかあるはずないのに。」

「確かにスピードでは分が悪いわね。だけど私には、『シャナティック・アンドラン』空間移動術よ。」

愛は消えて、もうワスターの後ろにいた。

「は?そんな高等なエナジー術、なんでミクロのお前ごときが使える!?」

「失礼しちゃう。たしかに大移動はできないわ。星から星ってさこ様ほどの強大なエナジープランじゃなきゃできないでしょ。だから、私は考えたの。私なりの移動術の研究を。」

「へー。愛のやつなんかやるじゃん。つまり瞬間移動ってことだろ?」

「そうなんだ。愛のやつずっとその研究がしたいって言ってたんだ。だからエナジー部隊の高等部に飛級したんだぜ。」

「この技、すっごい難しいのよ。空間内の位置情報を全て把握しなきゃいけないの。だから愛ちゃんは目に見える範囲だけという誓約を能力に付与したの。すると、あの通りよ。あの子は中西くんとは別の天才よ。」

ビュンッ。

ワスターは愛とまた距離を取って離れた。

「おどかしやがって。だけど、その術じゃ逃げることはできるかもしれない。攻撃に転じることはできないだろ?」

「ご名答。あんたなかなか頭いいんじゃない?でもね。私もびっくりよ。あんた私とタイプが似ているわ。」

「は?キモ。」

「キモってプテラノドンのあんたに言われたくないっつーの!!『ヴュックジャガ』!!」

愛は電撃を発生させた。

電撃をワスターに放つかと思いきや、自身のシールドに電撃を纏った。

「まさか。」

「そのまさかよ。あなたも思っていたんでしょ?エナジーマジックとエナジーパワーの悩みを。攻守ともに優れているエナジーパワーが高い方がいいと思っていたんでしょ?私もそうよ。現に私、エナジーパワーは高くないし。そこにエナジーマジックの特性を活かすことでカバーできる。あなたは風。風本来の力を高め、エナジーパワーにプラスする。そうすると、通常以上のエナジーパワーが生み出せる。私もそうよ。このヴュックジャガを私のシールドにプラスすれば、どれほどのエナジーパワーが出るか。」

バリバリ。

シュッ。

愛の電撃を纏ったスピードは、ワスターの風を纏ったスピードを遥かに凌駕していた。

ボコッ!!

愛はワスターを殴りつけ、地面に叩き落とした。

ズドン!!

「ちょっとムキになりすぎちゃったかしら?プテラノドンの体の一部。どこを取ろうかしら?」

愛は地面に落ちた際にワスターの爪が折れたので、その爪を持って高々と空に掲げた。

「Bブロック一回戦、地球人の『鈴中愛』対プテラノドンの『ワスター』、『鈴中愛』勝者!!」


愛は余裕の表情で控室に戻った。

「愛。凄かったな。電撃纏った技と瞬間移動する技。」

「別に大したことないわ。一回戦で両方見せることになるとは思わなかったけど。」

「 Bブロック一回戦。地球人『加賀美麻里』対ステゴサウルスの『テルンパ』集合だ。」

「えっ。ほんとに私もやるの?もう困ったな。さっさと痛くないように負けなきゃ。」

加賀美はやる気がなさそうに闘技場の舞台に向かった。

「加賀美先輩の下の名前、初めて知ったわ。麻里って言うのね。」

相手の恐竜のステゴサウルス。

ジュラ紀後期に生息していたとされる。

体長は7mほど。

草食恐竜。

トサカが頭から尻尾に生えていて、尻尾には鋭いトゲのようなものが生えている。

加賀美はBブロックの闘技場の舞台に着いた。

「さて、どうやって負けようかな。」

「Bブロック一回戦、地球人『加賀美麻里』対ステゴサウルスの『テルンパ』はじめ!!」

ブオッ。

テルンパは、体中に体のトカサを生えさせた。

「てことはそういうこと!?」

テルンパのトカサが一斉に体から解き放たれ、一気に加賀美に襲いかかってきた。

「いけ。切り刻め。」

ズババババ!!

エナジーパワーでガードしていた加賀美だったが、制服はビリビリに破れた。

「まずいわ。加賀美先輩。」

「高校生の先輩弱っちいな。」

「そういうことじゃないのよ。加賀美先輩は家が貧乏だったから、物質に対する執着がすごいのよ。」

「は?」

加賀美の表情は、さっきまでのなよなよした面構えではなかった。

冷酷な表情、思いやりなど一切なさそうな雰囲気が出ている。

「おい。トカゲ。お前やっちまったな。この制服。私のお母さんが生活が苦しい中で買ってくれた大事な制服だ。それをここまでビリビリにしてしまったお前を許すわけないだろ?」

「ほざけ!!人間!!」

テルンパは同じようにトカサの連射攻撃を加賀美に仕掛けた。

バキバキガキガキ。

加賀美は手刀でトカサを迎撃している。

「なんだ!!コイツ。エナジーパワーがけっこう高い。」

「私が女だからエナジーパワーが低いとでも思ったか。お前は普通には殺さない。」

シュッ。

加賀美はテルンパの目の前まで接近した。

慌てたテルンパは長い尻尾を活かし、加賀美を退けようとした。

しかし加賀美は、テルンパのシールドを素手で無理やりこじ開けたのだ。

バリン。

「私、医術エナジーの使い手なの。治すことは得意よ。でもね。その反対もだーいすきなの。治療の逆をするとどうなると思う?『カビロン・イラージ』(反治療)。」

プワァ~。

加賀美はテルンパの生身の体を触りまくった。

「気色悪いな!!人間!!」

たまらず、テルンパは尻尾で加賀美を弾き飛ばした。

バシッ。

「こんなエナジーパワーが集中されていない攻撃が私に効くか。」

「俺を怒らせたな。俺のエナジーパワーはこんなもんじゃない。フンッ。」

テルンパはエナジーを高めようとした。

だが。

「グフッ。ガフッ。なんだこれは?」

テルンパは急に血反吐を吐き始めた。

「あら?気づかなかった。さっきおまえの体を触診したことを。その時に細工させてもらった。エナジーパワーを強く込めると、血流が逆流し、臓器に血液が運ばれなくなる。循環機能も弱り始め、死ぬようにした。」

「そんなやめてくれぇええええ~。助けて。」

「ダメよ。私の制服をあんな扱いにしたものは死あるのみよ。私のお母さんの苦労をわかって死ね。」

「グハァ~!!」

テルンパは闘技場の舞台中に血を撒き散らして息絶えた。

加賀美はその辺に落ちていたテルンパのトサカを拾って、空高く掲げた。

「Bブロック一回戦、地球人『加賀美麻里』勝者!!」

すました顔で控室に戻ってくる加賀美。

「ちょっとあの高校生こえーな。愛はあの先輩に入学戦闘で圧勝だったんじゃねーのか?」

「私知ってたもの。加賀美先輩、エナジーマジックに弱いって知ってたから。」

「接近戦はヤバイな。体を破壊されるな。」

「ねえ。中西くん。シリンティー(物質創造化)で私の服直してくれない?私も中西くんの傷治すから。」

「いいですよ。俺の傷は大したことないからいいです。」

そう言って良太は加賀美の制服の修理をした。

「みんなそれぞれ戦い方が違うから面白いな。そろそろ二回戦かな?」

「おいおい。俺の存在を忘れないでよ。竜牙。」

「長谷先輩。」

「陽気なお兄ちゃん。」

「イヤ。存在がセクハラの長谷先輩。」

「頑張りなさいよ。未来のエナジー部隊の隊長。隊長になったら、私を良いポストにつけなさいよ。」

「わかってるよ。」

「それではBブロック一回戦の最終戦、地球人『長谷入間』対前回優勝者ティラノサウルスの『ガキラ』集合だ!!」

長谷は先にBブロックの闘技場に着いた。

「ティラノサウルスやばそうじゃない。」

「パワータイプだろうな。長谷先輩ってパワータイプじゃないよな?」

「面白くなってきた。ティラノサウルス一番好きな恐竜だ。」

ティラノサウルス。

白亜紀末期に生息されていたとされる最大の肉食恐竜。

体高4~6m。

噛む力が地上最強クラス。

ティラノサウルスがBブロックの闘技場の舞台に上がった。

「ガハハハ。俺の相手がこんな小さな人間だとはな。笑わせる。」

「じゃあ笑ってくれていいよ。恐竜さん。」

「舐めている。前回の優勝者だぞ。俺は!!」

試合が始まっていないのに、エナジーパワーが全開になっているガキラ。

「Bブロック一回戦の最終戦、地球人『長谷入間』対ティラノサウルスの『ガキラ』はじめ!!」

ガキラは猛突進で長谷に向かっている。

大きな口を開けて、一気に食い殺す気だ。

「あのティラノサウルスなんてエナジーパワーだ。9020!?」

「どう考えても私たちじゃ敵わないじゃない。どうする気なの?長谷先輩。死ぬわよ?」

「もう。愛ちゃん。忘れんぼね。長谷には特殊能力があるでしょ。」

「あっ。」

ガキラは長谷の間合いに入った。

長谷の頭を噛みつこうとしたとき。

「死ねーーー!!!!」

ニヤ。

長谷は笑った。

シュッ。

ガキラのエナジーが消滅した。

シールドさえも。

「な?」

よく見ると、長谷の周りに光のサークルが出現している。

「『10セケネット・ラケットエナジー』。(10秒間強制無効エナジー)」

長谷が出現させたサークルの中にガキラが入ったことで、エナジーが強制的に練れなくなってしまった。

サークルの中から出れば、通常通りエナジーを練れる。

だが、エナジーパワーがなくなってしまった以上、肉体の力のみで移動しなければならない。

ガキラの肉体のみの力と長谷のエナジー全開の力では、明らかに長谷の方が上回っている。

長谷は右拳に渾身のエナジーを込め、ガキラのアゴ目掛けて、アッパーをお見舞いした。

ガゴン!!

「グブゥー!!」

エナジーなしの生身のガキラには、相当なダメージを受けた。

意識は飛び、口の中の牙はボキボキに折れた。

ピクピク。

かろうじて生きてはいるが、重傷だ。

とりあえず、長谷は落ちている牙を拾って、空高く掲げた。

「Bブロック一回戦最終戦地球人の『長谷入間』勝者!!」

観客の恐竜たちも最初はブーイングの連続だったが、前優勝者のガキラがあっけなく打ちのめされ、声も出なくなった。

「なんか恐竜たち静かになったな。まあいいか。」

一回戦は無事勝ち抜けた竜牙たち。

二回戦ではもちろんこんな展開にはならない。

なぜなら、現実社会は厳しいのだから。

つづく。
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