上 下
3 / 18

かけおち悪女、提案をされる

しおりを挟む
しかし、わたくしはまた、ケンゴと会うことになります。

それは、エルネストから、全く予想もできないようなことを提案されたからです。

『僕には、好きな女性が別にいる。その女性…マーガレットも、君と同じ国の人間だ。しかし、僕の婚約者にするためにはいささか爵位が低すぎる。しかし、君にも好きな男がいるらしいな?



どうだろう、僕達が好きな人と結ばれるために、協力し合う気はあるか?』



それが、わたくしが異世界追放された……いえ、してもらった理由です。 



わたくしは、隣国の王子という婚約者がいながらも、平民と浮気をする『悪女』になる。

そして、異世界追放される…。

しかし、この国では一般的に、異世界追放=死を意味します。

1億もある異世界のうち、人間が生きられるような世界は10ほどしかないという考えがあったからです。

よほどの運が無い限り、人間が生きられないような世界へ飛ばされ、たどり着いた瞬間に死んでしまうということでした。

しかし、隣国ができあがってから1番の魔力保有者であり、異世界についての研究をしているエルネストいわく、それは全くのデタラメらしいのです。

ただ、確かに、人間が生きられない世界もあります。

けれど、研究の結果、安全な世界だけ…もっと言えば、ある特定の世界へとワープできる調節方法が見つかったそうです。



この調節方法で、わたくしとケンゴが同じ世界へと飛ばされ、結ばれます。

つまり、異世界追放という名の『かけおち』です。

そして、残ったエルネストは、浮気をしたわたくし達に激怒するフリをして、裏切ったこの国への戦争を仄めかせ…しかし、マーガレットと結婚ができるならば許す、という対応をとるのです。

隣国の王と王妃や、こちらの国の王が、どういった対応を取るかは分かりません。

けれど、そういった細かい部分は僕がなんとかするから任せてくれ…とエルネストは言いました。



これでわたくしたちの恋が叶います。

しかし、これらの話が終わった後、エルネストは真剣な顔で問いました。

『ワープする世界は、特定できる。だが今の所…辿り着く時代までは、調整できない。2人を同じ世界へ飛ばしても、バラバラの時代へ辿り着いてしまう可能性も高い。それでも……この案に乗るか?できれば、君だけの気持ちを聞きたい。』



これを聞いた私は、けれどどうしても1人で決めきれず、ケンゴへ相談したのです。

自分は不安である、けれど、この世界にいて、アナタと会えないのも辛い、と。

泣きながらそう話したわたくしに、ケンゴは言いました。



『僕は、たとえ1%でもカトリアと結ばれる可能性があるなら、それに賭けるよ。だって、君と結ばれない世界なんて……僕にはいらないから。』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。

アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。 いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。 だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・ 「いつわたしが婚約破棄すると言った?」 私に飽きたんじゃなかったんですか!? …………………………… たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

処理中です...