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5話 トイレットペーパーで株を上げた男

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その日の晩、23時ごろ彼は現れた。 

両手にいっぱいコンビニで買ってきたビールとカクテルと焼き鳥、 
トイレットペーパーを抱えていた。 

「蛇口はもう処分して見つかりませんでしたわー。」 
「そうですか。」 

(やっぱりな。最初からないのわかってたくせに。笑) 

「ちょっとだけお話したいなと思って、いろいろ買ってきたんです。
上がってもいいですか?」 
「あら、そんなにいっぱい、ええ、じゃあちょっとだけなら。どうぞ。」 

さちこはあえて色気のない家着のスエット姿で彼を招き入れた。 
もちろん万が一を考えて風呂には入り、
薄化粧を施してブラジャーはつけておいた。

「一緒に飲もうと思って。これどうぞ。」 
「こんなにたくさんありがとうございます。 
せっかくなんですけど私、ビールもカクテルも飲まないので、
自前の日本酒飲みますね。一緒に飲みましょう。」 
「で、これトイレットペーパー、
俺しょっちゅう車でホームセンター行ってるから、
こないだたまたま売ってたから買ったやつあるからあげるわ。」 

トイレットペーパーは買い占め騒動で
巷にトイレットペーパーが売ってなくて
困っていると先日話をしていたからだった。
さちこはその心遣いがとてもうれしかった。

「え、そんな貴重なやついいですよ。 
お宅にも必要だったから買ったんでしょ⁈」
「俺はしょっちゅう車でホームセンター行くし
またどっかで買えるからいいよ。」
「えー優しい~!
でもまた買えるかわかんないし、箱ティッシュはあの後、最近買えたから
これで当分しのごうと思ってるねん。
だからお気持ちだけでほんといいよ。ありがとう。」 
「ええって。これ使い。ティッシュはトイレに流したらあかんで。 
詰まるで。俺何度もそういう現場見てきたから。」 
「えーそうなん?ティッシュ流したらあかんの?」
 「そやで。箱に流したらあかんってちゃんと書いてあるで。
ちゃんと見てみ。あれは水に溶けへんから。」
「でも時々流したりしてるけど今まで詰まったことないよ。」
「まあ繰り返してたらそのうち詰まるよ。ええからこれ使っとき。
またどっかで売ってるやろから。
俺は車でウロウロ田舎まで行ったりもしてるからまた手に入るし。」 
「そうなん?ティッシュあかんのか~
引越し前にまたつまっても困るしね。
じゃあお言葉に甘えて。。。
すごい助かります。ありがとうございます。
じゃあ、代わりにこの箱ティッシュ持って帰ってください。」 
「うん、ありがとう。」 

リビングで酒を呑みながら、彼についていろいろ質問した。 
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