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3話 顔がタイプだと言ってくる男

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暖簾をくぐると着物を着た店員さんたちが 
ずらりと並び会釈した。 

彼は入り口で予約したことを告げた。 

店内は料亭のような造りで 
高そうな店ということは一目瞭然だった。 

全てが個室になっていて、 
廊下を歩いて行き、奥の個室に案内された。 

ベテランの仲居さん風の店員が 
コースのお品書きを渡してくれた。 

「お飲み物は何にされますか?」 
「アルコールは今ダメなんですか?」 
「申し訳ございません。今はおいてませんが、 
ノンアルコールビールでしたら 
こちらにございます。」 
「あ、じゃあ僕はこれにします。 
どうされますか?」 
「じゃあ私はリンゴジュースお願いします。」 
「かしこまりました。」 
「これ外してもいいですか?」 

彼は6人掛けのテーブルに置いてあった 
仕切りのアクリル板を持ち上げた。 

「はい。かしこまりました。」 

着物を着た店員が重そうな大きなアクリル板を 
か細い腕で持ち上げて横によけてくれた。 

「ありがとう。」 

店員さんは、嫌な顔せず笑顔で部屋を出て行った。 

マスクを外し、二人はしばらく見つめ合った。 
彼は写真よりは人間味のあるいい表情をしていた。 

しかし元々無表情なのか、三白眼のせいで 
真剣な顔つきでこちらを見るので 
さちこは少し緊張した。 
場の空気を和ませるため 
得意のハニカミ笑顔で応戦した。 

「こんなこと言ったら 
失礼と思われるかもしれないけど。。。」 
「なんですか?」 
「すごく顔がタイプで。」 
「あー、そうですか。全然失礼じゃないですよ。 
ありがとうございます。 
写真と違ってない?大丈夫ですか?」 
「うん。写真よりずっといい。」 
「良かった。」 
「目と目の間の離れ具合が絶妙で超タイプです。」 
「ほお~。目と目が離れてるって 
キャリーぱみゅぱみゅしか思いつかないけど。笑」 
「あそこまでじゃないけど、 
僕、目と目が離れてる人が好きなの。 
ほら、狭い人もいるでしょ?」 
「あー確かに。」 
「そっち系は苦手なの。」 
「へえ~。面白い。初めて言われた。」 

どんな理由であれ、顔がタイプと言ってくれる男には 
テンションが上がる。 
しかも具体的に理由まで説明してくれるので 
信憑性が高い。 
彼の人間性に信頼感を寄せた。 
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