マッチングアプリの男 有吉似の男編

１６．粘る男

「え？既婚者なの？」 
「うん。そうなの。」 
「え～うそでしょ？断りたいからそう言ってるだけじゃないの？」 
「ほんとだよ。だから泊まったりできないし、 
クリスマスとか年末年始一緒に過ごしたいとか 
そういう関係を求めてる人には答えられないから、ごめんね。」 
「えーそうなのー？」 
「会う前に言おうかなとも思ったんだけど、
な んか言いそびれちゃって、遅くなっちゃってごめんね。 
彼氏を探してるのは本気だけど、
でも悪いからちゃんと言った方がいいかなと思って。」 
「いいよ。言うの遅くなったのは仕方ないから、それはいいよ。」 
「通報しないでね。笑」 
「通報？」 
「マッチングアプリに。笑」 
「ああ、そんなのしないよ。」 
「良かった。笑」 
「え、旦那とはどういう関係なの？」 
「家庭内別居みたいな感じかな。お互いに興味がないし干渉しない。 
先にむこうの浮気が発覚したからね、それから私の貞操観念も崩壊したの。」 
「え、一緒に住んでんの？旦那も浮気してんの？」 
「わかんない。怪しい行動してるけどね。興味ないから探らないの。 
お互いそんな感じ。別居しようと思っててね。」 
「いつ？」 
「来年中にはしたいと思ってる。」 
「まだその話してないの？」 
「うん。」 
「そっか。」 
「だから、もしつきあうことになって変に期待持たせて 
ズルズルとかいうのもしたくないし、 
会うたびにそういう急かされる質問されるのも嫌だし、 
だからと言って、 
じゃあそっちは旦那いるんだから俺も二股かけてもいいでしょ 
みたいに開き直られるのも嫌なの。 
意味わかるかなあ？」 
「わかる。わかる。それはそうだよね。旦那は別だもんね。」 
「そう。」 
「じゃあ何回か不倫したことあるの？」 
「まあね。」 
「昼顔なんだ。」 
「昼顔見てないからどんなのかわかんない。 
そういう不倫する女は嫌いとかない？」 
「それはない。」 
「でもさ、自分の妻がそうだったから恨みというか、そういうのないの？」 
「自分の妻が不倫するのは嫌、でも他所の妻が不倫するのは逆に大歓迎。 
そこは別だから。」 
「そーいうもんなんだ。笑」 
「でも俺そーいうのしたことないからさー。」 
「夫がいる人とつきあったことないってこと？」 
「そう。」 
「逆はあるのにね？笑」 
「まあね。リスクが違うからさ。 
だってさ、つつもたせとかそういうのではないと思うけど、 
損害賠償とかこっちにまで請求されたらね。」 
「うん、そうだね。
確かにリスクがあるからそう思う人は無理にしない方がいいよ。」 
「そういう話周りでいっぱい聞くからさー。
ばれたら200万くらいはとられるよ。」 
「そーなんだ。」 
「えーどうしようかなー。でもさ、友達はいいでしょ？」 

（どうしようかなーって、やめとけって言ってるじゃん。）

「そりゃ友達はね、いろんな定義があるから。人それぞれじゃん。」 
「じゃあ、今度カラオケ行こうよ。カラオケだったらいいでしょ？」 
「うん、いいよ。」 
「カラオケでちょっとくらいはキスするかもしれないけど。 
一線越えなければいいわけだし。キスは好き？」 
 
（どないやねん！結局カラオケでやりたいだけやろ。
キスだって人によっては一線超えてるって思うよ。） 
 
「うんまあね。カラオケ屋でしたことあんの？」 
「カラオケ屋で？ないよ。だってカラオケ屋でしょ！」 
急にものすごい怪訝な顔した。 
 
（こりゃ絶対カラオケ屋の椅子が対面座位に適した硬さとは言えない。笑）