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4話 頭の中も筋肉でできている男

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「名前、えっちゃん、本当の名前は?えっちゃんでいいんですか?」
「さちこです。」
「あーさっちゃんね。」
「はい。」

店に入った。

「いらっしゃいませ。2人席のお好きな席にどうぞ。」

「ここに座ろっか。」
「うん。」

(店員が2人席にって言ってたけどここ座っていいのかな。)

そう思いながら3人がけのテーブルに座りかけると店員が慌てて寄ってきた。

「すみません。そちらは3人用のお席ですのでこちらでお願いします。」
「わかりました。」

二人掛けのテーブルに向かい合わせに座った。
彼はすぐにマスクを外した。
さちこはマスクを外しつつハンカチタオルで汗を拭った。

「えっちゃん、あれ、名前なんでしたっけ?」
「え?もう忘れたの?やばくない?
プロテイン飲み過ぎで頭いかれてんじゃない?笑」
「ごめんなさい。もっかい教えて。」
「さちこ。」
「あーまちこね。まっちゃん。」
「さ、ち、こ。信じらんない。ほんとに忘れてんだね。」
「ごめんごめん。さっちゃん。もう2度と忘れないよ。」
「だって、さっきも辛いもの苦手ってラインのやりとり全部忘れてんじゃん。」
「うん。笑」
「自分から質問しといて答え全部忘れてるの?
私のが覚えてるじゃん。
いろんな女とおんなじやりとりしてるからじゃないの?」
「違うよ~。運動したら全部忘れちゃうからさ。
今日もジム行って他からそこで全部忘れたの。」
「ふーん。」
「でも一個言い訳させてもらうとしたらライン全部消してるから、
奥さんに見られたらダメだから。」
「ふーん、そうなんだ。」
「だから読み返せないからさ。
さっちゃんが記憶力いいことはよくわかったよ。」
「うん、私、記憶力いいとはよく言われる。
でもこれぐらいは普通じゃない?笑」
「やっぱりね。すごい覚えてるもんね。」
「興味のあることはね。」

そうこう話しているうちに彼は心理学や哲学に興味があるといい、
持論を展開し始めた。
しかも彼の大学専攻は理系で
今の職業からてっきり文系かと思っていたさちこは
少しテンションが上がった。

「え?理系なの?」
「うん。」
「なんで今の仕事してんの?めっちゃ文系じゃん。」
「ちょうどさ、バブル崩壊があってさ、理系の子はメーカー離れしたの。
給料のいい文系の仕事に転職するブームみたいなのがあってさ。
「ふーん。じゃあ保険屋さんって給料いいんだ?」
「うん、1200くらい。」
「へえ。」
「保険って景気が悪くなっても左右されないから
悪い時は業績は変わってなくても他業種より上回ってる時期もあるの。
さっき言った通り変化がないわけ。
安定って面では保険業は最高。」
「ふーん。」
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