踊れば楽し。

紫月花おり

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第一章

第24話 不安要素満載!!?

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 考えすぎて眠れなくなった俺が縁側で風にあたっていると、篝がやってきた。
 そしてそのまま縁側にて、成り行きで設けられたのは質疑応答の場──。

 ……なのだが、当たり障りのないような質問を探り探りするくらいしか許されない雰囲気?
 おそらく、深掘りしたことを訊いても答えてはもらえないだろう。

 それに…どう考えても、俺の中での最大の謎といえば──
 “ 宗一郎の存在理由と存在意味”
 であることは間違いない。
 いや、敢えて知りたいかと問われれば……知りたくない、触れたくないというのが現在の本音。
 ──…正直、怖い。
 一度揺らいでしまった、自分の存在……それを再確認するなんて…怖くて出来ない。少なくとも、今は。

 それでも、せっかくの質疑の場は大事にしなければ。
 俺は気持ちを切り替えて、別の質問を懸命に探してみることにした。

「じゃあさ、篝から見た紅牙って…どんな感じだった?」

 そんなことを聞いて、俺自身どうすればいいかも分からないけど……やっぱり仲間から見たってのも気になるところで──。
 すると、篝は一瞬、遠い記憶を辿るような表情を見せてから……

「そうだねぇ…あくまでボクから見て、て前提で言うなら……なんか不器用な生き方してるような感じ、かな?」

 そう言って苦笑をうかべた。

「……不器用…か」

 ……まぁ、そう言われてみると、今までの感じというか…俺からの印象でも、そんな気がしないでもない。
 それに…言動が素直で率直な篝の感想なら……確かかも!?

「……心当たりある?」

 クスッと小さく笑い、俺の顔を覗き込んできた篝に、 

「…う…うん、そんな気がした。それに……俺もそうな気がするし…な」

 俺的には真面目に答えたのだが、篝はそんな俺を見て再びクスクスと楽しそうに笑った。
 その様子に、俺はもう…苦笑いで答えるしかなかった。 

 結局、その後もろくな質問をすることが出来ないまま……。
 篝の気遣いにも、励まし(?)にも大して不安を拭いきれないまま、俺はモヤモヤしながらも床につくことになった──。

 夜が明ければ、彼方の提案で決まった…俺が夢で見た場所“紅い荒野”に向かわなければならない。 
 それでなくとも、妖怪の世界なだけに何が起こるか分からない──!
 そう考えると、とりあえずは少しでも寝て、体力…気力を回復させなければ……!!

 そう自分に言い聞かせ目を閉じる──…と、そのまま眠ってしまった。
 そして次に気づいたのは、部屋に明るい陽が差し込み……その明るさを閉じている瞼に感じた瞬間、 

「はい! 宗一郎~! 起きてーーっ!!」

 元気な篝の声で起こされた。

 ……朝から元気だなぁ。
 たぶん寝たのは俺より後のはずなのに──。

 そんなことをボンヤリ考えながらも、まだ眠さとだるさの残る体を無理やり起こす……。
 ふと周りを見る…と、今まで寝てたのは俺だけだったことに軽く驚きを覚えた。

「さ、朝ごはん出来てるよっ」

 篝に急かされ、囲炉裏の部屋への襖を開けると……そこには、いつの間にか戻って来ていた幻夜も含めて、みんなで囲炉裏を囲んでの朝ごはん風景──!?
 朝からテンション高めの篝と天音、いつもどおりの幻夜、そして…まだ半分寝ている彼方──?
 そんな中で、各自がしっかり朝食をとっていた。
 とりあえず、俺も席につき…用意された朝食──ご飯、味噌汁、漬け物と生卵(?)に箸をつけ始める。
 
 それにしても。
 夕飯時よりはマシだが、相変わらず賑やかな朝食風景──。

「なぁ、篝! なんでおかずがタマゴと漬け物だけなんだよッ! しかも、なんで生なんだよ!?」

 天音が文句を言う横で、ご飯に…ではなく、に生卵を割入れながら(!?)

「おかずがあるだけマシでしょ? 食材なんて昨日のうちにみんな食べきっちゃったんだからっ」

 篝の言葉に、自然と皆の視線が彼方の方へ……

「ぅん…? 何??」

 寝起き…というか、まだ起ききってないまま、丼で(おそらく一、二杯で済まない)大盛ご飯を食べている彼方──は、一応皆の視線には気付いたようだが、その意味までは理解出来てないようだった。
 まぁ……仮にちゃんと起きてたとしても、解ってもらえるかはあやしいが。 

「……とりあえず、文句言うなら食べないでよっ! お米だって昨日のうちに確保しといたからあるんだし、タマゴだって幻夜くんが取りに行ってきてくれたんだからね!?」

 そうまるでお母さんみたいな篝の言い様に、

「え? タマゴ取りに…って??」

 思わず幻夜に視線を移すと、 

「……あぁ、昨夜に篝から頼まれてね」

 小さく苦笑をうかべて答えた幻夜。
 ……ということは、夜居なかったのはそのせいか。
 ん? まてよ……?

「タマゴ取りに…って、コレはもしや野鳥の??」

 俺の脳裏に、幻夜が野鳥の巣からタマゴを拝借している様子がよぎった……が、

「いや、一度人界に戻って、市販の玉子を買ってきたんだよ」

 ──…えぇッ!? 一度人界に!??
 そんな…! 何で俺を連れて帰ってくれなかったんだよ……ッ!!!

 思わずそう声に出してしまいそうだったところを、ぐっと我慢した……。
 俺のために皆でわざわざココから遠いという場所まで行こうって言ってるんだ……俺が“帰る”だなんて、少なくとも昨夜…いや、今だって言えない。
 俺は黙って、幻夜が人界から買って来てくれた新鮮玉子をご飯にかけ…有り難く頂くことにした──。 

 ……そんな朝食も、おひつのご飯が尽きたところで必然的に終了。
 俺たちは目的地である“紅い荒野”を目指し、隠れ家を出て森を歩き始めた──。

 幻夜を先頭に、彼方、俺、篝、天音で昼間でも暗い森の中を…道なき道を進む。
 一応、皆は俺を気にしながら進んでくれているようなので、歩きやすく草をかき分けながら……だいぶ速度も遅めで。 

 ──といっても。
 道でも獣道でもないところを、普通に歩くペースで進んでいるのだが。

 来る時もそうだったけど……
 やっぱり、こいつらに着いて行くのは……結構キツい。
 尚且つ、今度は五パーティ状態なだけにものすごく賑やかだ…! 

「おいっ! 幻夜! もっと歩きやすくて近道を選べよ!!」

 最後尾から天音が文句を言えば、

「僕はあくまでも、宗一郎が歩きやすくて近道を選んでるよ。それに……道の出来上がったところを歩く最後尾が文句言わないでくれないかい?」

 振り返りもせず、そう軽くあしらわれ(嫌味含)、天音が言葉に詰まっていると……

「ちょ…ッ!? 彼方ちゃん! おにぎり、もうそれで最後だよ!? せめて宗一郎に残しておいてあげて!!」

「え~……わかったぁ」

「ていうかっ、彼方! 歩きながら食うな!!」

 篝がかろうじて確保して作ったおにぎりを出発して数分後から手をつけている彼方に、お母さん発言の篝と天音……。
 最後と言われて、寂しそうな雰囲気を醸す彼方に思わず、

「いや、俺はいいから……食べな?」

 精一杯優しく言おうとしたが……自然と呆れの混じる溜め息が同時に出てしまった俺。それでも、

「そう? ありがとうっ」

 嬉しそうな笑顔で振り返り、お礼を言われた。

 そしてその後も、俺を挟んで飛び交い続ける会話は……どうも俺を疲れさせる。 
 それは、余計に俺の疲労感が増すほどだった。ただでさえ、着いて歩くのもしんどいのに…!
 無駄に賑やかな状態。
 この五人パーティで本当にこの先大丈夫なんだろうか…!??

 でも…一応、仲間なわけだし、皆強そうだし…… ?
 元々、このメンバーで昔はいろいろ(悪さ?)やってきたみたいだし、仲間的には大丈夫なんだろうけど…不安がないわけでは──いや、むしろ、不安だらけだ!!

 紅牙がいた時と…きっと変わってないのだろうけど──…
 俺的には、寝起きから今現在までの間に、すでに疲れがでてるぞ?

 紅牙がどうしてたとか、どう考えてたかを考えるのも…もうどうでもいいくらいだった……。そんな中…

「ほら、宗一郎! ちゃんと足元見て歩いて!?」

 後ろから篝に注意され、

「う…うん」

 ……そうだった!
 俺は余計な事を考えず、今はただこいつらに着いていくことを…頑張って歩くことだけに集中しなければッ!

 ──そもそも隠れ家を出発してからどのくらい経って、どのくらい進んでいるのかも俺には分からない。
 相変わらず、距離感と時間感覚がマヒする……。 
 どちらにしても、俺の疲労感は増していく一方で……

「な…なぁ、あとどの位かかるんだ……?」

 とりあえず、この森を抜けるまでどのくらいなのかくらいは知りたい…!
 せめて一つでも未確認部分は潰そうと尋ねてみれば、 

「森はもうすぐ抜けるよ その先は……まぁ、ゆっくりだし少なくとも二、三日ってとこかなぁ?」

 ちょうど最後のおにぎりを食べ終えたところの彼方が答えれば、

「……もっと急げるならその方が助かるけど…──無理だろう?」

 困ったように…いや、むしろ意地悪そうに幻夜が俺を振り返った……!

 もちろん……当然無理だッ!!
 ゆっくりだと言う今ですらキツいのだから、無理に決まっている…!

「ぜ…ぜひ……ゆっくりで」

 そう答えるしかない俺。
 むしろ、もう少しペースダウンしてほしいところだが……そんなことを言える雰囲気でもなく、頑張って歩き続けるしかない。
 
 ──まぁ、もう覚悟はできている。
 こいつらと一緒に、ついていくと決めたときから。 

 少なくとも、幻夜一人なら…俺らが長時間かけて入ったこの森を一晩の間に隠れ家から人界(森経由、買い物付)を軽く往復出来るんだから……俺は足手まとい以外の何者でもない。

 だいたい、皆個性バラバラで、仲が良いんだか悪いんだか分からないし、無駄に賑やかなことにも不安だけど……
 何よりも、俺自身が着いていけるのか──いろんな意味で不安いっぱいだった。 
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