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第50幕 残された光
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あれから5日経った。
沙和子はその後の仕事を休み、そのままお盆休みに入った。
2人の会話は少なく、必要最低限の会話だけ。
テレビはつけないようにしてる。
両親のことが流れるかもしれないからだ。
俺らにとっては苦痛でしかない。
どこで知ったかわからないが、何回もマスコミが来て質問された。
「今のお気持ちはどうですか?」
「どうしてあの場所へ行こうと思ったんですか?」
「ご両親は虫だらけで発見されたと聞きましたが、虫がお好きだったんですか?」
「お父さんの頭を持った時どう思いました?」
「犯人に心当たりは?」
「ご両親とは上手くいっていましたか?」
「あの場所は思い出の場所だったんですか?」
「あなた方が犯人だったりします?」
無神経な質問ばかりだ。
俺は何も答えず、扉を閉めている。
不定期にチャイムが鳴るが、全て無視。
窓を開けると何人ものマスコミが待機していて外にも出れない。
これが人間なのだ。
人の不幸を喜び、飯を食らう。
まるで寄生虫のように。
報道の自由とか言ってやりたい放題だ。
都合よく編集したものをテレビに放送、事件に関係する遺族や家族への苛烈な質問攻め。
逆に自分達が賭け事等の悪事をしていても、他は叩かれたが自分達は逃れたり、地位の高い人物が事件を起こしても敬称を用いたりといつもやってるような苛烈な報道はしない。
相手に非があるからと囲んで辛辣な質問責めをして、炎上した時は言い訳を繰り返して責任逃れ。
全員が全員そういうわけではない。
それはもちろんわかっている。
だが、本来は国民に事実を伝える立場なのに都合よく放送したり、まるでいじめのようなことをして何かあったら逃げる。
俺は今のニュースですら信用できない。
少し前に武から連絡があった。
大丈夫か?と言われ、
家に行っていいか聞かれた。
今の状況で頼れるのは武しかいない。
巻き込みたくはないが、俺はいいよと答えた。
前に住所は教えているが、大丈夫だろうか?
10時に着くと言ってもう11時だが……。
外が少し騒しいな……。
何かあったのか?
俺は少しだけ扉を開けると
「人の不幸がそんなに美味いのかよ!」
「このマスゴミども!」
武だ。
「なんだね君は?」
「訴えるぞ!」
「やれるもんならやってみろ!」
「おまえらのやってる行為なんて立派な迷惑行為だ!」
武………。
俺は扉を開けた。
「お!とも。大丈夫か?」
「あ、小田さん。やはりいらっしゃったんですね。」
「いくつか質問を……。」
「散れって言ってんだろ!」
武が怒鳴る。
心配してくれて嬉しいが、流石にまずい。
「武……中に入って。」
俺は武を中に入れ、扉を閉めた。
何回か扉を叩かれたが、武が扉を開いて睨みをきかせた。
ようやくマスコミ達は諦めて帰ったようだ。
「ったく、あのマスゴミどもがよ。」
「武。来てくれてありがとう。」
「友達の一大事なんだ。マグマにでも飛び込むさ。」
「とももさわちゃんも大丈夫か?」
「あまり大丈夫じゃないかな……。」
「…………。」
沙和子は黙ったまんまだった。
「そうか……。」
「何か助けになればって思ってよ。」
「ありがとう。」
「でも色々とめちゃくちゃだよ…。」
「なんで父さんと母さんが殺されなきゃいけないんだ……。」
「つらかったな……。」
「ニュース見たよ……。」
「そうか……。」
「また面白おかしく報道されてるんだろうな……。」
今までもそうだった。
あの観客達は上から見て楽しむのだ。
また新しいパズルが手に入ったと。
俺の両親だって……。
きっと……。
「なあ、とも……。」
「どうした?」
深刻そうな雰囲気だ。
「前も話したと思うけど…。」
「俺らでもう一度考えてみないか?」
「犯人が誰かを……。」
「無理だよ……。」
「こんな状態じゃ。」
「そうだよな。ごめん。」
「でもよ……。」
「今ネットでもニュースでともが犯人扱いされてるんだ。」
「え?」
「誰が流したかはわからない。」
「綾葉、学、木原さん、草尾さんとの関係性全て……。」
「流されているんだ。」
「だから……家庭環境が良くなかったから両親も……。」
「俺は大事に育てられてきたし、何もやってない!」
俺は怒鳴った。
「あ、ああ。それはわかってる。」
「だが最悪の事態だ。」
「このまま犯人扱いじゃ、世間でずっと冷たい目で見られる。」
「職にも就けなくなるかもしれない。」
両親が殺されてるのに……。
「ほんとは俺が言うべきことじゃないかもしれねぇがよ。」
「犯人の手かがり見つけておふくろさんや親父さんの仇取らねぇか?」
「………。」
「俺は知りたい。」
「あんなに優しかった父さんと母さんが殺さなければならなかったのを……。」
「犯人を………見つけ出したい。」
「…………。」
「私も……一緒に探したい。」
沙和子が立ち上がる。
「沙和子……。」
「お前は……。」
「危険だからやめろって言われても嫌だからね!」
「よし決まりだな!」
「俺ら3人で手かがり探そうぜ!」
武が肩を組む。
「ああ。」
俺に残された2つだけの光。
たった2つだけの光だが、とても眩しく見えた。
沙和子はその後の仕事を休み、そのままお盆休みに入った。
2人の会話は少なく、必要最低限の会話だけ。
テレビはつけないようにしてる。
両親のことが流れるかもしれないからだ。
俺らにとっては苦痛でしかない。
どこで知ったかわからないが、何回もマスコミが来て質問された。
「今のお気持ちはどうですか?」
「どうしてあの場所へ行こうと思ったんですか?」
「ご両親は虫だらけで発見されたと聞きましたが、虫がお好きだったんですか?」
「お父さんの頭を持った時どう思いました?」
「犯人に心当たりは?」
「ご両親とは上手くいっていましたか?」
「あの場所は思い出の場所だったんですか?」
「あなた方が犯人だったりします?」
無神経な質問ばかりだ。
俺は何も答えず、扉を閉めている。
不定期にチャイムが鳴るが、全て無視。
窓を開けると何人ものマスコミが待機していて外にも出れない。
これが人間なのだ。
人の不幸を喜び、飯を食らう。
まるで寄生虫のように。
報道の自由とか言ってやりたい放題だ。
都合よく編集したものをテレビに放送、事件に関係する遺族や家族への苛烈な質問攻め。
逆に自分達が賭け事等の悪事をしていても、他は叩かれたが自分達は逃れたり、地位の高い人物が事件を起こしても敬称を用いたりといつもやってるような苛烈な報道はしない。
相手に非があるからと囲んで辛辣な質問責めをして、炎上した時は言い訳を繰り返して責任逃れ。
全員が全員そういうわけではない。
それはもちろんわかっている。
だが、本来は国民に事実を伝える立場なのに都合よく放送したり、まるでいじめのようなことをして何かあったら逃げる。
俺は今のニュースですら信用できない。
少し前に武から連絡があった。
大丈夫か?と言われ、
家に行っていいか聞かれた。
今の状況で頼れるのは武しかいない。
巻き込みたくはないが、俺はいいよと答えた。
前に住所は教えているが、大丈夫だろうか?
10時に着くと言ってもう11時だが……。
外が少し騒しいな……。
何かあったのか?
俺は少しだけ扉を開けると
「人の不幸がそんなに美味いのかよ!」
「このマスゴミども!」
武だ。
「なんだね君は?」
「訴えるぞ!」
「やれるもんならやってみろ!」
「おまえらのやってる行為なんて立派な迷惑行為だ!」
武………。
俺は扉を開けた。
「お!とも。大丈夫か?」
「あ、小田さん。やはりいらっしゃったんですね。」
「いくつか質問を……。」
「散れって言ってんだろ!」
武が怒鳴る。
心配してくれて嬉しいが、流石にまずい。
「武……中に入って。」
俺は武を中に入れ、扉を閉めた。
何回か扉を叩かれたが、武が扉を開いて睨みをきかせた。
ようやくマスコミ達は諦めて帰ったようだ。
「ったく、あのマスゴミどもがよ。」
「武。来てくれてありがとう。」
「友達の一大事なんだ。マグマにでも飛び込むさ。」
「とももさわちゃんも大丈夫か?」
「あまり大丈夫じゃないかな……。」
「…………。」
沙和子は黙ったまんまだった。
「そうか……。」
「何か助けになればって思ってよ。」
「ありがとう。」
「でも色々とめちゃくちゃだよ…。」
「なんで父さんと母さんが殺されなきゃいけないんだ……。」
「つらかったな……。」
「ニュース見たよ……。」
「そうか……。」
「また面白おかしく報道されてるんだろうな……。」
今までもそうだった。
あの観客達は上から見て楽しむのだ。
また新しいパズルが手に入ったと。
俺の両親だって……。
きっと……。
「なあ、とも……。」
「どうした?」
深刻そうな雰囲気だ。
「前も話したと思うけど…。」
「俺らでもう一度考えてみないか?」
「犯人が誰かを……。」
「無理だよ……。」
「こんな状態じゃ。」
「そうだよな。ごめん。」
「でもよ……。」
「今ネットでもニュースでともが犯人扱いされてるんだ。」
「え?」
「誰が流したかはわからない。」
「綾葉、学、木原さん、草尾さんとの関係性全て……。」
「流されているんだ。」
「だから……家庭環境が良くなかったから両親も……。」
「俺は大事に育てられてきたし、何もやってない!」
俺は怒鳴った。
「あ、ああ。それはわかってる。」
「だが最悪の事態だ。」
「このまま犯人扱いじゃ、世間でずっと冷たい目で見られる。」
「職にも就けなくなるかもしれない。」
両親が殺されてるのに……。
「ほんとは俺が言うべきことじゃないかもしれねぇがよ。」
「犯人の手かがり見つけておふくろさんや親父さんの仇取らねぇか?」
「………。」
「俺は知りたい。」
「あんなに優しかった父さんと母さんが殺さなければならなかったのを……。」
「犯人を………見つけ出したい。」
「…………。」
「私も……一緒に探したい。」
沙和子が立ち上がる。
「沙和子……。」
「お前は……。」
「危険だからやめろって言われても嫌だからね!」
「よし決まりだな!」
「俺ら3人で手かがり探そうぜ!」
武が肩を組む。
「ああ。」
俺に残された2つだけの光。
たった2つだけの光だが、とても眩しく見えた。
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