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第20幕 過去
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武と話をした次の日に、土曜日休めると連絡があった。
まずは2人でお昼過ぎに、学の家へ行こうという話になった。
この2日間は学のことで頭がいっぱいになり、仕事に集中できなかった。
職場はあまり変わらない。
俺に対してスカンクはぶつぶつと愚痴をこぼし、他の社員はほとんど無視だ。
多少声をかけてくれるのは蝿川さんぐらい。
だが、蝿川さんが声をかけてくれるのは、邪魔だった木原を俺が殺したと思っているからだ。
正直嬉しくない。
そんな中で2日間過ごし、朝の電車で大久保へ向かった。
俺は外の景色を見ながら思う。
俺の人生ダメなことばかりだ。
生まれたときから身体が弱くて、激しい運動が出来なかった。
運動音痴で何か上手くなろうって思っても、それが原因でダメだった。
それでも小さいときから近くに住んでいた学がいた。
学がいたからこそ孤独じゃなかった。
学は中学のときにバスケ部に入っていたが、趣味でギターをやってて、よく聴かせてくれた。
「高校でバンド組もうぜ。」って言われたのがきっかけだったな。
元々音楽を聴くのは好きだった。
軽音楽部に学と一緒に入部し、ベースをはじめたんだ。
ドラムは激しそうだし、ギターは弦が6弦あるから、4弦のベースならできるだろうと単純な理由だ。
今思えば甘い考えだったが…。
やってみるとベースもかなり難しい。
綾葉と武は入部届けを出した時に出会ったんだ。
武は変わらず金髪のロン毛。
綾葉は……。
何色だったけ……?
髪色も髪の長さもコロコロ変わるから覚えてない。
それに比べて、学は優等生って感じだった。
俺はどこにでもいそうな細身の根暗。
でも、みんな見た目や性格は違えど、自然に馬があった。
4人でバンドを組んで、いろんな曲を演奏した。
ロック、ハードロック、メタル、アニソン。
ただ、上手かった他3人と比べて俺はあまり上達しなかった。
いくら練習しても、素人に毛が生えたレベル。
そんな俺でもクラスの女の子と付き合えた。
女の子の方から告白されたのだ。
こんな俺でも、彼女はできるんだなって嬉しく思ってた。
しかし、その女の子には他校の彼氏がいた。
二股だ。
たまたまそれを綾葉が腕を組んでるところを見かけて、教えてくれたんだ。
それを問い詰めたら、「あんたは用済み」って言われて別れた。
それから、仲のよかった綾葉以外の女性を信用出来なくなった。
高校3年の時、2つ下の後輩と帰りの電車が一緒でよく話してた。
前のこともあったが、その子はとても優しい性格で、人を裏切るようなことをしない子だと思っていた。
そのうち段々と好きになり、告白をした結果、付き合った。
この子なら前みたいなことにはならないだろう。
いい子で大人しい子だし…。
そう思っていたが……。
丁度クリスマスの1ヶ月前……。
突然別れ話をされた。
好きな人がいると…。
それで別れた。
その子は同い年のやつと付き合った。
俺と付き合ったときにそいつに彼女がいて、丁度別れたタイミングだった。
俺はただの繋ぎにされてしまったわけだ。
恋愛で二度失敗して落ち込む俺に、よくメンバーは励ましてくれてたっけ。
綾葉もいい男と付き合えなかったから、よく2人で不幸自慢をしてたなぁ。
友和を傷つけるやつ許せない、キモいんだけどって。
口は悪いが心配してくれた。
女友達は綾葉しかいなく、仲もとても良かったと思う。
2人で遊ぶことも多かった。
実際綾葉のことは少し気になってはいた。
派手だけど、顔立ちが良くてドラムも上手い。
綾葉は俺には釣り合わないだろうと諦めていた。
ただ、一緒にいて楽しいし話も合う、長い間メンバーとして信頼できると思ってた。
段々と意識し始めていたんだ。
大学生になった俺は、特に部活には入らずコンビニでバイトをする日々。
友達もおらず、東京に移った綾葉や千葉に帰って学と遊びに行くぐらいだった。
それでもなんだかんだで楽しかったのだ。
仕事の内定が決まった日、綾葉と2人で飲みに行った。
酔いながら2人で笑いながら話をしたが、その時に束縛が酷い同棲中の彼氏と別れることになったとか。
散財してしまって貯金が無く、実家に戻らざるを得ない状態だった。
本人は笑っていたが、以前からの家庭環境を聞いてたから心配だった。
飲んだ後の帰り道もその話になった。
その時に
「あたし………実家に戻りたくないなぁ。」
と綾葉が悲しそうな声で呟いたのだ。
その時に俺は
「俺のところ来なよ。」
「俺は……嫌な思いはさせない。」
「幸せにするから。」
「綾葉のこと好きだよ。」
と告白したのだ。
そして
「ありがとう。」
「あたしも友和のことが好きだよ。」
今まで友達としての関係が長かったから、そう見られてないかもしれないと思っていたが、綾葉も同じ気持ちだったと知ってすごく嬉しかった。
前の彼氏に内緒で水商売もやってたことは知っていた。
でも、俺と付き合ったときは足を洗って普通のバイト始めるって言ってたんだよな。
学は祝福してくれて、3人で飲みにも行った。
仕事を始めて俺は頑張ろうと思った。
綾葉を幸せにしてあげたい、そう思いながら仕事をした。
仕事はキツかったが、一生懸命働いた。
だが、日が経つごとにギクシャクしだした。
綾葉は元々派手だったが、余計に派手になり、身につけるものは高価なものでクローゼットの中は服いっぱいだった。
それに加えてホストにまで行くようになった。
あまり喧嘩もしたくないし、今まで不自由だった分、自由にさせてあげたいと甘く見てしまった。
そして………。
あの夜の出来事だ。
綾葉は俺が今まで付き合った子を批判してたが、それよりもっと酷いことをしたのだ。
2人が寝てたベッドは捨てて、布団で寝ることにした。
土日は何もすることなく、適当に映画を見る日々。
金が少し溜まっていくだけだった。
嫌な上司からぞんざいに扱われ、もう死にたくなってきたと思ってたときにこの猟奇殺人事件だ。
そして学は行方不明。
なんでこんな事ばかり……。
もう嫌だ……。
こんな人生。
もし学に何かあったら、俺はどうすればいい?
俺は観客の立場でみんなの幸せを見るだけでいいのに、なんで見せられるのが悲劇なんだ。
早く学を探し出したい。
駅に着いた。
タバコに火をつけ、待ち合わせの公園に向かう。
まずは2人でお昼過ぎに、学の家へ行こうという話になった。
この2日間は学のことで頭がいっぱいになり、仕事に集中できなかった。
職場はあまり変わらない。
俺に対してスカンクはぶつぶつと愚痴をこぼし、他の社員はほとんど無視だ。
多少声をかけてくれるのは蝿川さんぐらい。
だが、蝿川さんが声をかけてくれるのは、邪魔だった木原を俺が殺したと思っているからだ。
正直嬉しくない。
そんな中で2日間過ごし、朝の電車で大久保へ向かった。
俺は外の景色を見ながら思う。
俺の人生ダメなことばかりだ。
生まれたときから身体が弱くて、激しい運動が出来なかった。
運動音痴で何か上手くなろうって思っても、それが原因でダメだった。
それでも小さいときから近くに住んでいた学がいた。
学がいたからこそ孤独じゃなかった。
学は中学のときにバスケ部に入っていたが、趣味でギターをやってて、よく聴かせてくれた。
「高校でバンド組もうぜ。」って言われたのがきっかけだったな。
元々音楽を聴くのは好きだった。
軽音楽部に学と一緒に入部し、ベースをはじめたんだ。
ドラムは激しそうだし、ギターは弦が6弦あるから、4弦のベースならできるだろうと単純な理由だ。
今思えば甘い考えだったが…。
やってみるとベースもかなり難しい。
綾葉と武は入部届けを出した時に出会ったんだ。
武は変わらず金髪のロン毛。
綾葉は……。
何色だったけ……?
髪色も髪の長さもコロコロ変わるから覚えてない。
それに比べて、学は優等生って感じだった。
俺はどこにでもいそうな細身の根暗。
でも、みんな見た目や性格は違えど、自然に馬があった。
4人でバンドを組んで、いろんな曲を演奏した。
ロック、ハードロック、メタル、アニソン。
ただ、上手かった他3人と比べて俺はあまり上達しなかった。
いくら練習しても、素人に毛が生えたレベル。
そんな俺でもクラスの女の子と付き合えた。
女の子の方から告白されたのだ。
こんな俺でも、彼女はできるんだなって嬉しく思ってた。
しかし、その女の子には他校の彼氏がいた。
二股だ。
たまたまそれを綾葉が腕を組んでるところを見かけて、教えてくれたんだ。
それを問い詰めたら、「あんたは用済み」って言われて別れた。
それから、仲のよかった綾葉以外の女性を信用出来なくなった。
高校3年の時、2つ下の後輩と帰りの電車が一緒でよく話してた。
前のこともあったが、その子はとても優しい性格で、人を裏切るようなことをしない子だと思っていた。
そのうち段々と好きになり、告白をした結果、付き合った。
この子なら前みたいなことにはならないだろう。
いい子で大人しい子だし…。
そう思っていたが……。
丁度クリスマスの1ヶ月前……。
突然別れ話をされた。
好きな人がいると…。
それで別れた。
その子は同い年のやつと付き合った。
俺と付き合ったときにそいつに彼女がいて、丁度別れたタイミングだった。
俺はただの繋ぎにされてしまったわけだ。
恋愛で二度失敗して落ち込む俺に、よくメンバーは励ましてくれてたっけ。
綾葉もいい男と付き合えなかったから、よく2人で不幸自慢をしてたなぁ。
友和を傷つけるやつ許せない、キモいんだけどって。
口は悪いが心配してくれた。
女友達は綾葉しかいなく、仲もとても良かったと思う。
2人で遊ぶことも多かった。
実際綾葉のことは少し気になってはいた。
派手だけど、顔立ちが良くてドラムも上手い。
綾葉は俺には釣り合わないだろうと諦めていた。
ただ、一緒にいて楽しいし話も合う、長い間メンバーとして信頼できると思ってた。
段々と意識し始めていたんだ。
大学生になった俺は、特に部活には入らずコンビニでバイトをする日々。
友達もおらず、東京に移った綾葉や千葉に帰って学と遊びに行くぐらいだった。
それでもなんだかんだで楽しかったのだ。
仕事の内定が決まった日、綾葉と2人で飲みに行った。
酔いながら2人で笑いながら話をしたが、その時に束縛が酷い同棲中の彼氏と別れることになったとか。
散財してしまって貯金が無く、実家に戻らざるを得ない状態だった。
本人は笑っていたが、以前からの家庭環境を聞いてたから心配だった。
飲んだ後の帰り道もその話になった。
その時に
「あたし………実家に戻りたくないなぁ。」
と綾葉が悲しそうな声で呟いたのだ。
その時に俺は
「俺のところ来なよ。」
「俺は……嫌な思いはさせない。」
「幸せにするから。」
「綾葉のこと好きだよ。」
と告白したのだ。
そして
「ありがとう。」
「あたしも友和のことが好きだよ。」
今まで友達としての関係が長かったから、そう見られてないかもしれないと思っていたが、綾葉も同じ気持ちだったと知ってすごく嬉しかった。
前の彼氏に内緒で水商売もやってたことは知っていた。
でも、俺と付き合ったときは足を洗って普通のバイト始めるって言ってたんだよな。
学は祝福してくれて、3人で飲みにも行った。
仕事を始めて俺は頑張ろうと思った。
綾葉を幸せにしてあげたい、そう思いながら仕事をした。
仕事はキツかったが、一生懸命働いた。
だが、日が経つごとにギクシャクしだした。
綾葉は元々派手だったが、余計に派手になり、身につけるものは高価なものでクローゼットの中は服いっぱいだった。
それに加えてホストにまで行くようになった。
あまり喧嘩もしたくないし、今まで不自由だった分、自由にさせてあげたいと甘く見てしまった。
そして………。
あの夜の出来事だ。
綾葉は俺が今まで付き合った子を批判してたが、それよりもっと酷いことをしたのだ。
2人が寝てたベッドは捨てて、布団で寝ることにした。
土日は何もすることなく、適当に映画を見る日々。
金が少し溜まっていくだけだった。
嫌な上司からぞんざいに扱われ、もう死にたくなってきたと思ってたときにこの猟奇殺人事件だ。
そして学は行方不明。
なんでこんな事ばかり……。
もう嫌だ……。
こんな人生。
もし学に何かあったら、俺はどうすればいい?
俺は観客の立場でみんなの幸せを見るだけでいいのに、なんで見せられるのが悲劇なんだ。
早く学を探し出したい。
駅に着いた。
タバコに火をつけ、待ち合わせの公園に向かう。
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