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第三章 愛の形
ランは逃走を試みる2
しおりを挟むせっかくなのでランの使命も書いてみた。
ここに書いてある通りランはPCです。何故かお助けNPCとなっている兄とは違いPCです。
PC2の使命:アナタは双子の姉(PC1)と共にVRでゲームを楽しんでいた。そして都市に帰ったはずなのだがそこから記憶が無い、状況を見るにアナタは誘拐されたようだ。アナタの使命はこの状況から脱する事だ。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
◇
ランが歩き続けていると広間に出た。
ーーそこには人の死体が転がっていた、それも一つだけでは無く数えきれぬ程に、どの死体も男性と思わしきもので体中に傷が付いていたことが分かる。そしてどの死体の表情も苦痛に満ちていた。
そんな光景を見てしまったランは言葉が出て来なかった、幾らVRとは言えこのゲームは現実を最大まで再現したもの、つまりリアル過ぎるが故の支障がある。
「ッ!? ひ、人の死体、なんでこんなに……」
ランが正気を取り戻したと同時に恐怖のせいか、今まで音を立てないように気を付けていたのを忘れて後ずさってしまった。その音が静かな広間に響き渡る。
その時微かに何かが動く音がランの耳に聞こえた。
ランは先程の恐怖を心の奥に押し込めて気持ちを引き締めると“初心の太刀”の柄を握っていつでも抜刀出来るようにする。
どうやら音は男達の死体の中から聞こえるようだった。
ランが警戒する中で足音が聞こえた。まるで体を引きずるような重い足取りで、ランがそちらを見ると暗くて分かりにくいが人影がこちらに歩いてきているのが見えた。
警戒心を高めつつ接近すると、そこには………腐敗してしまった皮膚がドロドロと崩れ落ちている男の死体だった。
いわゆるゾンビを見たランは顔を顰める、何せただでさえこの広間には腐臭が漂っているというのにその原因から近寄られたらたまったものではない
あまりの醜さと腐敗臭に精神を揺さぶられたはずのランだったがあまり驚く事もなく近づいてきたゾンビに向かって抜刀した。
その一閃は光が無いはずの広間でも爛々と輝いていた、まるで一筋の流星の如き刃は脆いゾンビの皮膚を容易く斬り裂いてゾンビを倒した。そのゾンビを皮切りにどんどん死体が立ち上がっていくそれを見てランは
「ふぅ、やっぱり出てきたか死体があったから薄々勘付いてたけどテンプレすぎな気がするな」
兄に似たのか辛辣な事を呟きながら、刀を構える。
ゾンビの動きは鈍い為逃げるのは簡単なのだがこの脳筋はその事に気がついているはずなのだが戦っていた、やはり兄と同じように戦闘狂なのだろうか?
「ん?」
ゾンビを斬り殺した後、また物音がした。
それは何かの咀嚼音のようなものでその音は死体の山の向こう側から聞こえてくる。
またゾンビかと思っていると、どうやら違うようだ
ーーその肉体はまるでゴムのような弾力のある皮膚に犬のような顔を持っており注視するとヒヅメ状に割れた足が見えた。何よりも恐ろしいのは鋭いかぎ爪だろう、鋭くどんな物も引き裂きそうなかぎ爪はランに恐怖を与える。
「!?」
はずなのだがランは少し動揺した程度で再び刀を構える、少しすると食屍鬼の背後からさらに1匹追加で現れた。どちらも血のようなものが付いておりランはもしかしたら人を喰べていたのでは?と考えついてしまう。ランが警戒を高めて見ていると食屍鬼はランに視線を少し向けると興味が無いのかそのまま死体を食べ始める。
「(何だ?この化物は……俺に興味が無いみたいだし素通りできないかなー)」
ランの思惑通り、死体の向こう側に辿り着くとそこには鉄扉があった。いかにも頑丈そうな扉で力尽くでは壊さないだろう。ランが扉に近付くと何かを蹴飛ばす感触がして足元を見るとそこには……
「何でこんな所に鍵が?」
簡素な作りの鍵が落ちていた、まるで開けて下さいと言わんばかりに落ちていた鍵に警戒心を抱きつつ鉄扉にあった鍵穴に差し込むとあっさりと開いてしまった。
「脱出、楽勝だったな」
そう呟く彼の前には地上へ上がるであろう階段があった、早く地下室から出ようと足を踏み出した瞬間。
目に捕らえ切れないほどに速くランの横を走って目の前に来たのは先程まで人の死体を食べていたであろう食屍鬼だった、その証拠に口周りに食べかすだと思われるものが付いているのだがそんな事はどうでも良い、その食屍鬼は目が妖しく光っておりまるで糸で操られている人形かのようにふらふらしている。
ランが後ろに少し目を向けるともう片方の食屍鬼はまだ食事中のようだ。
と言うことは敵対しているのは目の前の食屍鬼のみとなる。
「(後ろの化物はまだ死体を食ってる、隣を通った時は微動だにしなかったはず……それにさっきより目が虚な気が……)」
そんなランの思考など知ったことかと食屍鬼が鋭いかぎ爪で攻撃を仕掛ける、ランは何とか避けるといつでも刀を抜けるように構える。
「(あぁ!もうコイツを倒さないと出れなさそうだしやるしか無い)」
ランはもう片方の手で自分を斬り裂こうとしている食屍鬼に接近すると刀術アビリティを発動させる。
「壱の太刀“刹那”」
この刀術アビリティは抜刀技で目にも止まらぬ速さで相手を斬るというもの、ただでさえ強いアビリティに抜刀術の効果【納刀している状態で抜刀した最初の攻撃威力上昇】により強化された刃が食屍鬼の腕を斬り付ける。
その刃は食屍鬼の腕を斬り飛ばすその事に狼狽えずに食屍鬼は噛み付いてくるが片腕が無くなった事で体を支えるのが難しくなったのかよろめいて噛みつけなかった。
「勝機!」
そう叫ぶと再び攻撃を仕掛ける、刀術アビリティ“落陽”を発動させる。これはいわゆる兜割と呼ばれる技でその一閃はよろめいている食屍鬼の脳天を見事に斬り裂き一刀両断してしまった。
「何となったか……取り敢えず上がって見ますか」
安堵の息を吐きつつランは階段を昇り始めた。
【Tips】ランの戦った食屍鬼は弱体化している。弱体化はしているのだがゲーム補正によって強化されていたランの敵では無かったらしい。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
何でコイツ変な所でクリってんの(困惑)
そのせいで鍵を見つける探索パートが吹き飛んだじゃん……この状況でSAN値回復でもさせようにも周り死体だらけで安心出来る要素ないし鍵拾わせるくらいしかないというね。ファンブル出てくれないかな、と不幸を祈っていたのがいけなかったのか!?
人の死体を見た時のSANチェック(1/1D3)
ランのSAN値:75
結果:58 成功 SAN-1
醜悪なるゾンビを見た時のSANチェック(0/1D2)
ランのSAN値:74
結果:36 成功 SAN減少無し
日本刀の判定
成功値:60
結果:42
ダメージ:1D4+DB=6
聞き耳の判定
成功値:75
結果:47 成功
食屍鬼を見た時のSANチェック(0/1D3)
ランのSAN値:74
結果:75 失敗 SAN-1
食屍鬼に興味を抱かれないか幸運判定
成功値:75
結果:4 クリティカル
日本刀の判定
成功値:60
結果:28 成功
ダメージ:1D10+DB+3=10
初心の太刀の威力1D4
抜刀威力+3
刹那威力1D6
食屍鬼の噛み付き判定
成功値:30
結果:74 失敗
日本刀の判定
成功値:60
結果:17
ダメージ:1D8+DB=11
落陽威力1D4
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