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最終章 精霊界
40、精霊たちと下界へ
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精霊樹では数日かけて真剣な話し合いが行われ……まずは私と一緒に数人の精霊が下界へと向かうことになり、私は精霊の存在を下界の王に伝える役目を任されることになった。
陛下にどうやって伝えれば良いのかはかなり難しい問題だけど……何とかノエルさんや騎士団長に頼めば、できるんじゃないかと思っている。
精霊の存在を伝えれば、緊急事態だと騒ぎになるだろうし。
『よしっ、じゃあ下界に行こうぜ!』
『ついに行けるわ!』
『楽しみ~』
『騒ぐんじゃないぞ』
ちなみに一緒に下界へ行く精霊は精霊王様とアンシュ、ロデア、ランセの三人だ。私が慣れてる精霊が良いだろうと、精霊王様が配慮してくれた。
まあ、三人がどうしても行きたいとアピールしたというのも理由の一つだけど。
『では泉から行くかのぉ』
「あの泉以外に出入り口はないんですか?」
『他にも数ヶ所あるが、今はかなり少なくなっておる。また増やさなければいけないの』
そんな話をしつつ精霊王様の魔法によって三人と一緒に運ばれると、数時間で泉に到着した。さすが精霊王様、魔法の精度も威力も段違いだ。
しかも風魔法で私たちを浮かせて、圧が掛からないように上手く調節しつつ運んでくれた。
『よしっ、皆で泉に触れるぞ』
『はーい!』
『俺が一番だぜっ』
『僕も~』
「ちょっと待って、私を置いていかないで!」
慌ただしくピンク色の泉に手で触れると……またしても目の前が真っ白に染まり、私は下界に戻ってきていた。
辺りを見回すと時間は昼間みたいだ。精霊王様と三人がいて、遠くに見えるのは――フェリスだ。
「フェリス!」
嬉しくて思わず遠くから名前を呼ぶと、フェリスがこちらをガバッと振り返ったのが視界に映った。
『レ、レイラぁぁ~……!!』
フェリスは私の姿を認識した瞬間に両目から涙を溢れさせ、私の胸に飛び込んでくる。
『うぅ……っ、ひっ……お、遅い、よ……っ』
「ごめんね。心配かけちゃった?」
『何か、あったのかとっ、もう、会えないんじゃないかって……思っ、て……』
「大丈夫だよ。無事に戻ってきたから。それにね、下界を崩壊から救えるかもしれないの」
私のその言葉にやっと泣き止んだフェリスは顔を上げ、そこで私たちを興味深そうに覗き込む三人の精霊に気付いたようだ。
『え……精霊?』
『見たことない顔だな!』
『名前はなんて言うの?』
『僕らより年上だよね~。僕はランセ~』
フェリスは一気に話しかけられて混乱しているのか、それとも下界に落とされたことを思い出して他の精霊が怖いのか、私の服をギュッと握りしめた。
そんなフェリスを見て、私は両手で優しくフェリスを包み込む。
「フェリス、大丈夫だよ」
『レイラ……うん、ありがとう』
フェリスは私の手の中でニコッと微笑むと、ふわりと浮かび上がって三人の下に向かった。しかしその途中で精霊王様の存在に気づき、驚愕の表情でその場に固まる。
『え、な、なんで、え……精霊王、様?』
『お主が下界に落とされたのか……フェリスだったか?』
『は、はい』
『今まで気づいてやれなくて申し訳なかった。辛い思いをさせたな』
精霊王様の謝罪にフェリスはわたわたと両手を動かしながら慌てふためき、しかし私の顔をチラッと見てから嬉しそうに微笑んだ。
『僕はレイラと出会えたので、下界に来て良かったです。なのでその……気にしないでください』
『仲が良いんじゃな』
『はい!』
満面の笑みを浮かべて頷いたフェリスに、私は嬉しくて思わずフェリスに手を伸ばした。そしてフェリスを抱きしめていると、三人の精霊たちも羨ましそうにこちらへ寄ってくる。
『私もぎゅってしてみて良い?』
『俺も俺も!』
『僕も~』
「ふふっ、もちろん良いよ」
それから私は四人の精霊にくっつかれて幸せな時間を過ごし、少ししてから私たちがやろうとしていることをフェリスに説明し、皆で一緒に王都へ戻ることになった。
王都に戻る方法は、もちろん精霊王様の魔法だ。
「精霊王様、場所は分かるのですか?」
『分からんな。レイラに道案内を頼みたい』
「それなら速度を落としてくださいね。それから他の人に私が飛んでるところを見られると大変なので、バレないほどの上空を飛んで、街の近くの目立たないところに降りましょう」
『そうじゃな。ではいくぞ』
精霊王様が右手を上げると、私たち全員が一斉に上空へと飛び上がった。
『うわっ、凄いね……』
「精霊王様の魔法はやっぱり凄いよね」
『僕もこんなふうに魔法を使えるようになりたいな……』
「フェリスも練習すればいつかは使えるようになるよ」
『うん。頑張るよ!』
そんな話をしながらしばらく精霊王様の魔法に身を預けていると、十分ほどで王都までの道中を半分ほど進んだようだ。
「さすが精霊王様、本当に早いですね」
『このぐらいは当然じゃ。それよりもどこに降りれば良い?』
「そうですね……王都近くの森の中にしましょう。西側の森にはあまり人が寄り付きませんので、そこにお願いします」
『森じゃな』
それからさらに十分間の空の旅を楽しみ、私たちは王都近くの西の森に到着した。
『ここからはどこに行くんだ?』
「まずは私が暮らしている家に行くよ。そこで一緒に住んでる人に皆のことを相談して、それから王宮かな」
『レイラの家に行くのね!』
『楽しみ~』
「皆はとりあえず、人間にバレないようにしてね。今バレちゃうと騒ぎになるから」
『は~い』
私は賑やかな皆の声を聞きながら、側から見たら一人で王都に向けて足を進めた。
それから特に問題はなく王都内に入ることができ、ヴァレリア薬屋まで戻ってくることができた。ここを出発してからすでに二週間以上が経っている。
随分と久しぶりな気がするね……
薬屋のドアに手をかけて開こうとした瞬間、中から大きな声が聞こえてきた。
「まだ帰って来ないんですか!?」
「……ああ、もう少し時間が掛かるだろう」
「そろそろレイラさんがどこに向かったのか教えてください! なぜこんな時に一人で街の外へなんて……」
「ヴァレリア、私にもまだ言えないのか?」
「これは誰にも言うことはできない」
この声は、ノエルさんとアルベールさん?
『なんか揉めてないか?』
『大丈夫~?』
「……とりあえず、中に入ろうか」
中の険悪な様子に不安になりつつドアを開けると……中にいた三人が、一斉にこちらを振り返った。
「「レイラ!」」
「レイラさん!!」
ヴァレリアさんとアルベールさんは私の姿を見て安心したように頬を緩め、ノエルさんは私の下に慌てて駆け寄ってきてくれた。
「レイラさん! お怪我は!?」
私の肩を掴んで顔を覗き込んでくるノエルさんは、心配そうに眉を寄せている。
「大丈夫です。あの……なぜこちらに?」
「レイラさんがこんな危ない時に一人で街の外へ行ったと聞いて、心配で心配で……危険なことはしないでください!」
ノエルさんが真剣な表情でかけてくれた言葉が嬉しくて、思わず頬が緩んでしまった。
「心配してくださってありがとうございます」
そう感謝を伝えると、ノエルさんは私の顔を見て気が抜けたのか、大きく息を吐き出して笑みを浮かべてくれる。
「はぁ……とりあえず、無事で良かったです」
「はい。私は全然大丈夫です。……というかノエルさん! お仕事は大丈夫なんですか?」
「今日は休みなので大丈夫です」
「お休みの日にここに来てくださっていたのですね……お忙しいのにすみません」
「そんなことは別に良いんです。それよりもレイラさん、なぜ街の外に行っていたのですか?」
誤魔化すのは許さないというようなノエルさんの視線に、私はまずここで三人に精霊のことを伝えようと心に決めて、ノエルさんの瞳をしっかりと見返した。
「全てを話します。実は……精霊界に、行っていました」
陛下にどうやって伝えれば良いのかはかなり難しい問題だけど……何とかノエルさんや騎士団長に頼めば、できるんじゃないかと思っている。
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『ついに行けるわ!』
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『騒ぐんじゃないぞ』
ちなみに一緒に下界へ行く精霊は精霊王様とアンシュ、ロデア、ランセの三人だ。私が慣れてる精霊が良いだろうと、精霊王様が配慮してくれた。
まあ、三人がどうしても行きたいとアピールしたというのも理由の一つだけど。
『では泉から行くかのぉ』
「あの泉以外に出入り口はないんですか?」
『他にも数ヶ所あるが、今はかなり少なくなっておる。また増やさなければいけないの』
そんな話をしつつ精霊王様の魔法によって三人と一緒に運ばれると、数時間で泉に到着した。さすが精霊王様、魔法の精度も威力も段違いだ。
しかも風魔法で私たちを浮かせて、圧が掛からないように上手く調節しつつ運んでくれた。
『よしっ、皆で泉に触れるぞ』
『はーい!』
『俺が一番だぜっ』
『僕も~』
「ちょっと待って、私を置いていかないで!」
慌ただしくピンク色の泉に手で触れると……またしても目の前が真っ白に染まり、私は下界に戻ってきていた。
辺りを見回すと時間は昼間みたいだ。精霊王様と三人がいて、遠くに見えるのは――フェリスだ。
「フェリス!」
嬉しくて思わず遠くから名前を呼ぶと、フェリスがこちらをガバッと振り返ったのが視界に映った。
『レ、レイラぁぁ~……!!』
フェリスは私の姿を認識した瞬間に両目から涙を溢れさせ、私の胸に飛び込んでくる。
『うぅ……っ、ひっ……お、遅い、よ……っ』
「ごめんね。心配かけちゃった?」
『何か、あったのかとっ、もう、会えないんじゃないかって……思っ、て……』
「大丈夫だよ。無事に戻ってきたから。それにね、下界を崩壊から救えるかもしれないの」
私のその言葉にやっと泣き止んだフェリスは顔を上げ、そこで私たちを興味深そうに覗き込む三人の精霊に気付いたようだ。
『え……精霊?』
『見たことない顔だな!』
『名前はなんて言うの?』
『僕らより年上だよね~。僕はランセ~』
フェリスは一気に話しかけられて混乱しているのか、それとも下界に落とされたことを思い出して他の精霊が怖いのか、私の服をギュッと握りしめた。
そんなフェリスを見て、私は両手で優しくフェリスを包み込む。
「フェリス、大丈夫だよ」
『レイラ……うん、ありがとう』
フェリスは私の手の中でニコッと微笑むと、ふわりと浮かび上がって三人の下に向かった。しかしその途中で精霊王様の存在に気づき、驚愕の表情でその場に固まる。
『え、な、なんで、え……精霊王、様?』
『お主が下界に落とされたのか……フェリスだったか?』
『は、はい』
『今まで気づいてやれなくて申し訳なかった。辛い思いをさせたな』
精霊王様の謝罪にフェリスはわたわたと両手を動かしながら慌てふためき、しかし私の顔をチラッと見てから嬉しそうに微笑んだ。
『僕はレイラと出会えたので、下界に来て良かったです。なのでその……気にしないでください』
『仲が良いんじゃな』
『はい!』
満面の笑みを浮かべて頷いたフェリスに、私は嬉しくて思わずフェリスに手を伸ばした。そしてフェリスを抱きしめていると、三人の精霊たちも羨ましそうにこちらへ寄ってくる。
『私もぎゅってしてみて良い?』
『俺も俺も!』
『僕も~』
「ふふっ、もちろん良いよ」
それから私は四人の精霊にくっつかれて幸せな時間を過ごし、少ししてから私たちがやろうとしていることをフェリスに説明し、皆で一緒に王都へ戻ることになった。
王都に戻る方法は、もちろん精霊王様の魔法だ。
「精霊王様、場所は分かるのですか?」
『分からんな。レイラに道案内を頼みたい』
「それなら速度を落としてくださいね。それから他の人に私が飛んでるところを見られると大変なので、バレないほどの上空を飛んで、街の近くの目立たないところに降りましょう」
『そうじゃな。ではいくぞ』
精霊王様が右手を上げると、私たち全員が一斉に上空へと飛び上がった。
『うわっ、凄いね……』
「精霊王様の魔法はやっぱり凄いよね」
『僕もこんなふうに魔法を使えるようになりたいな……』
「フェリスも練習すればいつかは使えるようになるよ」
『うん。頑張るよ!』
そんな話をしながらしばらく精霊王様の魔法に身を預けていると、十分ほどで王都までの道中を半分ほど進んだようだ。
「さすが精霊王様、本当に早いですね」
『このぐらいは当然じゃ。それよりもどこに降りれば良い?』
「そうですね……王都近くの森の中にしましょう。西側の森にはあまり人が寄り付きませんので、そこにお願いします」
『森じゃな』
それからさらに十分間の空の旅を楽しみ、私たちは王都近くの西の森に到着した。
『ここからはどこに行くんだ?』
「まずは私が暮らしている家に行くよ。そこで一緒に住んでる人に皆のことを相談して、それから王宮かな」
『レイラの家に行くのね!』
『楽しみ~』
「皆はとりあえず、人間にバレないようにしてね。今バレちゃうと騒ぎになるから」
『は~い』
私は賑やかな皆の声を聞きながら、側から見たら一人で王都に向けて足を進めた。
それから特に問題はなく王都内に入ることができ、ヴァレリア薬屋まで戻ってくることができた。ここを出発してからすでに二週間以上が経っている。
随分と久しぶりな気がするね……
薬屋のドアに手をかけて開こうとした瞬間、中から大きな声が聞こえてきた。
「まだ帰って来ないんですか!?」
「……ああ、もう少し時間が掛かるだろう」
「そろそろレイラさんがどこに向かったのか教えてください! なぜこんな時に一人で街の外へなんて……」
「ヴァレリア、私にもまだ言えないのか?」
「これは誰にも言うことはできない」
この声は、ノエルさんとアルベールさん?
『なんか揉めてないか?』
『大丈夫~?』
「……とりあえず、中に入ろうか」
中の険悪な様子に不安になりつつドアを開けると……中にいた三人が、一斉にこちらを振り返った。
「「レイラ!」」
「レイラさん!!」
ヴァレリアさんとアルベールさんは私の姿を見て安心したように頬を緩め、ノエルさんは私の下に慌てて駆け寄ってきてくれた。
「レイラさん! お怪我は!?」
私の肩を掴んで顔を覗き込んでくるノエルさんは、心配そうに眉を寄せている。
「大丈夫です。あの……なぜこちらに?」
「レイラさんがこんな危ない時に一人で街の外へ行ったと聞いて、心配で心配で……危険なことはしないでください!」
ノエルさんが真剣な表情でかけてくれた言葉が嬉しくて、思わず頬が緩んでしまった。
「心配してくださってありがとうございます」
そう感謝を伝えると、ノエルさんは私の顔を見て気が抜けたのか、大きく息を吐き出して笑みを浮かべてくれる。
「はぁ……とりあえず、無事で良かったです」
「はい。私は全然大丈夫です。……というかノエルさん! お仕事は大丈夫なんですか?」
「今日は休みなので大丈夫です」
「お休みの日にここに来てくださっていたのですね……お忙しいのにすみません」
「そんなことは別に良いんです。それよりもレイラさん、なぜ街の外に行っていたのですか?」
誤魔化すのは許さないというようなノエルさんの視線に、私はまずここで三人に精霊のことを伝えようと心に決めて、ノエルさんの瞳をしっかりと見返した。
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