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第2章 世界的な異変
27、フェリスからの知らせ
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『レイラ! 大変だよ!』
今までは厨房に行っていたのか姿が見えなかったフェリスが、私の目の前に飛んできて焦ったように口を開いた。
私はフェリスに向けそうになる視線をなんとか抑えて、料理に視線を向けながら小さな小さな声を出す。
「……どうしたの?」
『厨房になんだか怪しい動きをしてた女がいたから気にしてたら、ポケットから出した粉みたいなやつをヴァレリアの皿にかけてたよ!』
怪しい動きをしてた女の人が粉を掛けてたって……調味料なわけないよね。もしかして毒、とか?
どうしよう、ヴァレリアさんに伝えないと。でもここで毒が入ってるかもしれませんなんて言うことはできない。
どこかでヴァレリアさんと話をしたいけど……トイレ、ぐらいしかないかな。
「あ、あの、少し席を外してもよろしいでしょうか?」
動揺を必死に隠して席を立つとサッと使用人が私の近くに来てくれて、食堂の出口に誘導してくれた。私はそれに従いながら、ヴァレリアさんに視線を向ける。
お願いヴァレリアさん。何かあることに気づいて。
そう願っているとヴァレリアさんが私に視線向けてくれたけど、立ち上がってくれることはなく、一人で食堂を出ることになった。
それからすぐトイレに案内されて、中に入ったところでフェリスに視線を向ける。
「フェリス、ヴァレリアさんをなんとかトイレに連れてきて欲しいの。頬に触れたり手に文字を書いたり、どうにかして知らせてくれない?」
『触れても良いんだね。分かった、任せて!』
フェリスが頼もしく頷いてくれてトイレを出て行ったので、私は祈りながら永遠にも感じられる時間をじっと待った。
まだ毒が入ってるかもしれない料理は給仕されてないよね……うぅ、心配すぎて胃が痛い。
「……レイラ?」
しばらく待っていると、ヴァレリアさんが心配そうな表情でトイレに入ってきた。
「ヴァレリアさん!」
嬉しさと安堵感で思わず大きな声を出してしまい、ヴァレリアさんに手で口を塞がれる。
「しっ、トイレの前に案内の使用人がいるんだ。それで、フェリスが何かを訴えてるようだから来てみたんだがどうした? 体調が悪くなったか?」
「……違うんです。フェリスが厨房で、女の人がヴァレリアさんの料理に何かを入れるところを見たって言ってて」
私がその言葉を発したその瞬間、ヴァレリアさんの眉間にギュッと皺が寄った。
「それは、毒ということか? ……フェリスに詳細を聞いてくれ」
『小さな瓶に入ってて、ちょっとだけ紫っぽい赤色の粉だったよ。料理に掛かると溶けちゃって分からなくなったんだ。掛けてた女の人はピンク色の髪の毛を後ろで丸く纏めてて、背が低い人だったかな。料理人の服を着てた。他の人の目を盗んでこっそりやってたよ』
フェリスの説明を伝えると、ヴァレリアさんは粉の正体がいくつか思い浮かんだのか顎に手を当てて考え込んだ。
「腹を下す程度の毒か、数日寝込む程度の毒、即死級の毒も考えられるな。とりあえず、その色は何かしら害があるものであることは確実だ」
「そうなのですね……これからどうしますか? 気づいたのはフェリスなので、それをそのまま伝えるわけにはいかないですし」
「そうだな――私が料理の異常に気付いたことにしよう。薬師は毒薬にも詳しいから匂いで分かる……ということにする。実際には料理に溶け込んだものは分からないがな」
ヴァレリアさんはしばらく悩んだ後にそう言って、パチっと片目を瞑った。そんなヴァレリアさんの様子に、緊張して強張っていた体から少し力が抜けた。
「ふふっ、それってありなんですか?」
「まあ、別に良いだろう。毒なんて紛れ込まされる侯爵家が悪い」
「……確かにそれもそうですね。その女の人ってなんで毒を入れたんでしょうか。歓迎してくれているように見えて、実は侯爵家の人たちがヴァレリアさんを疎ましく思ってるとか?」
そうだったら嫌だなと思いつつその可能性に言及すると、ヴァレリアさんは首を横に振った。
「その可能性はかなり低いだろう。貴族が自分の屋敷で毒殺が起きたなんて醜聞を作り出すことは考えられないからな。多分どこかから間者が紛れ込んだんだ」
「……貴族って大変なんですね」
「面倒だろう? だから嫌なんだ。はぁぁ……憂鬱だがそろそろ戻るか。フェリス、毒が入ってる皿が来たら私の頬を触ってくれ」
『分かった。任せて!』
それから私たちは少し時間をずらして食堂に戻り、それからすぐに問題の皿が運ばれてきた。デザートのプレートに毒を仕込まれたみたいだ。
「ヴァレリア嬢は甘いものがお好きか?」
「そうですね……特別に好むことはないですが、こうしていただいた時には素直に美味しいと思えます」
ヴァレリアさんは全く動揺を見せず、アルベール様の質問に答えている。こういうところを見ると、ヴァレリアさんも貴族だったんだなと納得できるよね。
「このプリンは我が家の料理人手製のもので、私の好物なのだ。気に入ってもらえたら嬉しい」
アルベール様のその言葉に頷いたヴァレリアさんは、スプーンでプリンを掬って口に運んだ。
え、まさか食べないよね?
あまりにも迷いなく口に運ばれていくプリンを思わず凝視してしまい、この光景がスローに思えてきた瞬間、スプーンがピタッと止まった。
口までほんの少しの距離だ。
はぁ……心臓に悪い。
「……ん?」
ヴァレリアさんは眉間に皺を寄せると、スプーンの上のプリンを凝視した。
「何かあっただろうか」
「……アルベール様、貴家は客人へこのようなもてなしをするのが通例なのでしょうか? もしそうなのであれば、私はあなたと友人にはなれません」
「なっ、ど、どういうことでしょうか。そのプリンに何か……」
「こちらのプリンから僅かに私が見知った香りがします。体に害があるものだと思われます」
ヴァレリアさんがその言葉を発した瞬間に、アルベール様が凄い勢いで立ち上がって料理人や給仕たちの方を睨んだ。
「お前たち、どういうことだ?」
威圧感のある低い声で発された言葉に、使用人たちはビクッと震えて小さく縮こまる。
「わ、私は、体に害があるものなど、誓って入れておりません!」
「私もです!」
「勘違い、ということは……」
使用人たちが次々と身の潔白を表明していると、一人の給仕が震えながらその言葉を発した。
するとヴァレリアさんは、その意見も一考の余地があるとでも言うように顎に手を当てて考え込み、一人の料理人の女性を示す。
その女性は、フェリスが毒を入れたところを見たと言っていた女の人だ。
今までは厨房に行っていたのか姿が見えなかったフェリスが、私の目の前に飛んできて焦ったように口を開いた。
私はフェリスに向けそうになる視線をなんとか抑えて、料理に視線を向けながら小さな小さな声を出す。
「……どうしたの?」
『厨房になんだか怪しい動きをしてた女がいたから気にしてたら、ポケットから出した粉みたいなやつをヴァレリアの皿にかけてたよ!』
怪しい動きをしてた女の人が粉を掛けてたって……調味料なわけないよね。もしかして毒、とか?
どうしよう、ヴァレリアさんに伝えないと。でもここで毒が入ってるかもしれませんなんて言うことはできない。
どこかでヴァレリアさんと話をしたいけど……トイレ、ぐらいしかないかな。
「あ、あの、少し席を外してもよろしいでしょうか?」
動揺を必死に隠して席を立つとサッと使用人が私の近くに来てくれて、食堂の出口に誘導してくれた。私はそれに従いながら、ヴァレリアさんに視線を向ける。
お願いヴァレリアさん。何かあることに気づいて。
そう願っているとヴァレリアさんが私に視線向けてくれたけど、立ち上がってくれることはなく、一人で食堂を出ることになった。
それからすぐトイレに案内されて、中に入ったところでフェリスに視線を向ける。
「フェリス、ヴァレリアさんをなんとかトイレに連れてきて欲しいの。頬に触れたり手に文字を書いたり、どうにかして知らせてくれない?」
『触れても良いんだね。分かった、任せて!』
フェリスが頼もしく頷いてくれてトイレを出て行ったので、私は祈りながら永遠にも感じられる時間をじっと待った。
まだ毒が入ってるかもしれない料理は給仕されてないよね……うぅ、心配すぎて胃が痛い。
「……レイラ?」
しばらく待っていると、ヴァレリアさんが心配そうな表情でトイレに入ってきた。
「ヴァレリアさん!」
嬉しさと安堵感で思わず大きな声を出してしまい、ヴァレリアさんに手で口を塞がれる。
「しっ、トイレの前に案内の使用人がいるんだ。それで、フェリスが何かを訴えてるようだから来てみたんだがどうした? 体調が悪くなったか?」
「……違うんです。フェリスが厨房で、女の人がヴァレリアさんの料理に何かを入れるところを見たって言ってて」
私がその言葉を発したその瞬間、ヴァレリアさんの眉間にギュッと皺が寄った。
「それは、毒ということか? ……フェリスに詳細を聞いてくれ」
『小さな瓶に入ってて、ちょっとだけ紫っぽい赤色の粉だったよ。料理に掛かると溶けちゃって分からなくなったんだ。掛けてた女の人はピンク色の髪の毛を後ろで丸く纏めてて、背が低い人だったかな。料理人の服を着てた。他の人の目を盗んでこっそりやってたよ』
フェリスの説明を伝えると、ヴァレリアさんは粉の正体がいくつか思い浮かんだのか顎に手を当てて考え込んだ。
「腹を下す程度の毒か、数日寝込む程度の毒、即死級の毒も考えられるな。とりあえず、その色は何かしら害があるものであることは確実だ」
「そうなのですね……これからどうしますか? 気づいたのはフェリスなので、それをそのまま伝えるわけにはいかないですし」
「そうだな――私が料理の異常に気付いたことにしよう。薬師は毒薬にも詳しいから匂いで分かる……ということにする。実際には料理に溶け込んだものは分からないがな」
ヴァレリアさんはしばらく悩んだ後にそう言って、パチっと片目を瞑った。そんなヴァレリアさんの様子に、緊張して強張っていた体から少し力が抜けた。
「ふふっ、それってありなんですか?」
「まあ、別に良いだろう。毒なんて紛れ込まされる侯爵家が悪い」
「……確かにそれもそうですね。その女の人ってなんで毒を入れたんでしょうか。歓迎してくれているように見えて、実は侯爵家の人たちがヴァレリアさんを疎ましく思ってるとか?」
そうだったら嫌だなと思いつつその可能性に言及すると、ヴァレリアさんは首を横に振った。
「その可能性はかなり低いだろう。貴族が自分の屋敷で毒殺が起きたなんて醜聞を作り出すことは考えられないからな。多分どこかから間者が紛れ込んだんだ」
「……貴族って大変なんですね」
「面倒だろう? だから嫌なんだ。はぁぁ……憂鬱だがそろそろ戻るか。フェリス、毒が入ってる皿が来たら私の頬を触ってくれ」
『分かった。任せて!』
それから私たちは少し時間をずらして食堂に戻り、それからすぐに問題の皿が運ばれてきた。デザートのプレートに毒を仕込まれたみたいだ。
「ヴァレリア嬢は甘いものがお好きか?」
「そうですね……特別に好むことはないですが、こうしていただいた時には素直に美味しいと思えます」
ヴァレリアさんは全く動揺を見せず、アルベール様の質問に答えている。こういうところを見ると、ヴァレリアさんも貴族だったんだなと納得できるよね。
「このプリンは我が家の料理人手製のもので、私の好物なのだ。気に入ってもらえたら嬉しい」
アルベール様のその言葉に頷いたヴァレリアさんは、スプーンでプリンを掬って口に運んだ。
え、まさか食べないよね?
あまりにも迷いなく口に運ばれていくプリンを思わず凝視してしまい、この光景がスローに思えてきた瞬間、スプーンがピタッと止まった。
口までほんの少しの距離だ。
はぁ……心臓に悪い。
「……ん?」
ヴァレリアさんは眉間に皺を寄せると、スプーンの上のプリンを凝視した。
「何かあっただろうか」
「……アルベール様、貴家は客人へこのようなもてなしをするのが通例なのでしょうか? もしそうなのであれば、私はあなたと友人にはなれません」
「なっ、ど、どういうことでしょうか。そのプリンに何か……」
「こちらのプリンから僅かに私が見知った香りがします。体に害があるものだと思われます」
ヴァレリアさんがその言葉を発した瞬間に、アルベール様が凄い勢いで立ち上がって料理人や給仕たちの方を睨んだ。
「お前たち、どういうことだ?」
威圧感のある低い声で発された言葉に、使用人たちはビクッと震えて小さく縮こまる。
「わ、私は、体に害があるものなど、誓って入れておりません!」
「私もです!」
「勘違い、ということは……」
使用人たちが次々と身の潔白を表明していると、一人の給仕が震えながらその言葉を発した。
するとヴァレリアさんは、その意見も一考の余地があるとでも言うように顎に手を当てて考え込み、一人の料理人の女性を示す。
その女性は、フェリスが毒を入れたところを見たと言っていた女の人だ。
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