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第一章 始まり

これまでの俺 【3】

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 そして現在、大学入学して、俺は今年で十九になる。
 大学に入ってからも男女問わずモテることは変わらず。

 生まれてこの方、両親以外の奴は俺の見た目やステータスなどばかりみて、俺自身の中身と面と向かって向き合ってくれる奴は現れなかったし。
 両親は両親で俺を嫌い家を出ていったし、本当に俺の人生において人に恵まれるということがなかったのは、これまでの話で大体わかってもらえただろう。

 ただ、世話役のばあやと護衛兼運転手だけは俺に比較的普通に接してくれていたと思う。

 ばあやは俺が聞いたわけでもないのに、これまでの俺の生い立ちや両親のことなどをぺらぺらと話して、お喋りと噂好きで口が軽いのが玉に瑕だなのだが。
 そこを見ないふりをすれば、俺の代わりに家のことを尽くしてくれていたし、嫌悪の目などは向けたりしてこなかった。

 護衛兼運転手はとても無口で無愛想だったが、俺に護身術を教えてくれた先生でもあるし、これまたばあやのように嫌悪の目や好色の目など向けてきたことはなかった。

 俺にとってそれだけが救いだったと言える。










「……まだかな」


 大学の門前でいつもの迎えを待っていると、一人二人には声をかけらるのが常なので、声をかけられないように護衛兼運転手にはいつも帰宅時間前には迎えに来てくれるよう頼んでいるのだが……。
 今日は珍しく、いつも待ってくれている車の姿がなかったので俺は門前で待ちぼうけをしていた。
 時計を見ると約束の時間はだいぶ過ぎていて。

 何かあったのだろうか?

 珍しい事態に心配して、内心そわそわしているとそれは聞こえてきた。











 ――――――みつけた。











「……ぇ」











 ――私わたくしの愛しい子。











 聞いたことがない、美しい楽器のような声が聞こえたと思ったら、突然目の前に光の粒が降ってきた。
 突然の眩しさに思わず目をつぶったが、瞼を震わせてゆっくりと目を開いてみると、そこにいたのはとても言葉では言い表せられないほど綺麗な人が浮かんでたのだ。

 そう、たのだ。





「はい?」





 浮いている人なんて見たことがないので、とりあえず頭が真っ白になるしかなかった。
 そんな呆けてる俺をとても慈愛のこもった瞳で見つめる綺麗な人は、口元に弧を浮かべてゆっくりと口を開いて川の流れのように語りだす。













 ――帰りましょう。愛しい子。













 そう言うと、綺麗な人は大きく広げた腕で俺を優しく包み込んだ。
 その腕の暖かさに何故か、すでに枯れたと思っていた涙が出そうになったが、そのことに気づいた時には俺の目の前はぐるりと渦を巻き世界が反転していた。











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