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第一章 始まり

破壊神【1】

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 人間ではなくなってしまったかもしれない事実から現実逃避したいところだが、人生そんな甘くはない。
 とりあえず俺の種族は鑑定しなくては、はっきりしないこの話。
 今後の予定の一部に入れなくてはいけなくなった。


「それにしても、リンタロウ様の香りも凄いですが、この草花も凄いですねえ。これも最初の種族の影響でしょうか?」
「それは俺もよくわからない。最初の種族が生命を司るとは言うからその影響だとは思うが、その実際はどういう力を持っているかはカルバーアでも極秘にされていて詳しい内容は王や教会の教皇と神子くらいしか知らない」


 おぉう…………。
 なんか、俺ってもしかしたら凄くやばい種族になっちゃったかもしれない……?


「「リーン……」」
「ん?」
「これ……」
「やる……」
「これは」


 なんだか大人しいと思ってた双子お兄ちゃんズがなんと、俺が咲かせたであろう花で冠を作ってくれていた。
 急いで作ったのであろう。
 ちょっとあちこちほつれかけてるが、立派な花冠だ。


「「元気でる……?」」
「あぁ……元気でる。ありがとな! のせてくれるか?」
「俺がのせる!」
「俺ものせる!」


 こんなの嬉しくないはずがない。
 さっき気落ちした俺を気遣ってくれるその優しさが。

 優しさとはこんなにもあたたかいのか……。
 今まで感じたことがない感覚なので少し、くすぐったさもあるが、とても良い。


 俺は頭を差し出し、双子お兄ちゃんズに花冠をのせてもらうのだが。


 ズル! ぽすん……。


「「っは!!!」」
「あ……あ、ははははは! ちょっと大きかったな!」
「やっぱり多いっていったじゃないかあ!」
「シャルルが大きなのばっかり集めるからだあ!」
「あー、はいはい。喧嘩しない、喧嘩しない!」


 俺は喧嘩を始めてしまそうな双子お兄ちゃんズを抱き寄せて喧嘩しないよう抑えた。
 というより抱き着いただけだけど。
 もちろん寝ているプティ君は起こさないように注意したけどね。

 傍で見ているイケメンとベルトラン君はなんだかすごーくあたたかーい目で見てくる。
 なんだよ。
 仲間に入りたいなら入れてやるぞ。
 今だけだからな。

 そんなこと思っていたら…………。












「ねえ! この香りはどーしたのー!?」


 再びパルフェット様の降臨だ。















「へぇー、なるほどねー」


 屋敷の中で執務を再開しようとしていたパルフェット様は突然強烈な、身に覚えのある香りが香ったことで、その原因が不思議になり再び登場した次第であった。
 ついでにパルフェット様のお仕事を手伝っていたセリューさんまでも登場。

 もちろん。
 俺達はパルフェット様達にこの香りは俺の魔力が原因であることを説明した。


「びっくりしたよ。突然世界樹の果実の香りがするんだもの。――――で、いつまでこの香りを放っているつもりだい? この香りが世界樹の果実と同じなら、あまり香らせておくのはおすすめしないけど」
「え、まだ匂います??」


 俺の言葉に全員が頷く。

 うそー。
 ていうか、匂ってちゃまずいの?


「母上、この香りって香っていたら駄目なのですか?」


 俺が思ったことを代わりに聞いてくれるベルトラン君。
 さすが。


「まあ、あくまで世界樹の果実と同じならって話だけど、あの香りには生物、特に私たちのように魔力のある生物を引き寄せるんだよ。魔力を持っていないモノも引き寄せるらしいけど魔力ありほどではない」
「まあ、所謂フェロモンみたいなモノだな」
「え゛……」
「なるほど!」
「ふぇろもん……?」
「なにそれ?」


 さっきのごろにゃん事件には理由があった。
 パルフェット様の説明にイケメンが分かりやすい単語で簡潔にまとめる。
 どうやらイケメンもパルフェット様と同じことを思っていたらしい。
 それを聞いたベルトラン君は納得のいった顔をしたけど、双子お兄ちゃんズはまだその言葉自体知らないっぽい。


「うん。どうやら心当たりあるみたいだね」


 これまた俺達は先程のごろにゃん事件の事を、パルフェット様達に説明することになったのだ。


「皆様、強い香りを直撃されたので正気を失ってしまったのでしょうな」


 状況を把握したセリューさんは納得のいった顔で頷くとパルフェット様に目配せをする。
 それを受けたパルフェット様も頷いているが…………なんだろう?


「屋敷の中まで強く香ってきたもの。そんな強い香り、食べたことある私でも経験ないよ。それに、この草花。この牧草地には生息しないはずの花まである 私の性質特化の再生に似ているようで似てない。
 世界樹の果実と同じ香りがするだけでなく、この再生にも似た力。そして、リン君の種族。これは公にしない方がいいよ。
 リン君の身のため、知る人は限られた人物でないと」
「俺のため…………」


 うん。
 …………理由は分かる。
 だって、人魚伝説みたいな理由で《最初の種族》は絶滅したって噂流して身を隠すくらいだろ?

 そんなのが現実に目の前にいたら……百パーセントマズイだろう。
 死亡フラグしか立たん。


「リン君は賢いから、理由は分かるみたいだね。ゼン君とベルトランは言わずともわかるだろうけど、問題は………………。お前達!」
「「ほっ!! 俺?」」


 パルフェット様は俺の顔を見て俺が理解できているのを把握し、イケメンとベルトラン君は俺よりも前に思っていたことなのか承知済みといった顔をしていたので何も言わなかったが。

 問題は双子お兄ちゃんズらしい。






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