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第一章 始まり
メタモルフォーゼしたらしい【3】
しおりを挟むなんでこんなにショックを受けるのか。
それはきっとこちらの世界に来てから、触れ合っている人達が、このイケメンも含めて、今まで自分が経験した事のない温かさと優しさで俺に接してくれていたからだ。
こんなちょっとした隠し事なんて大したことないはずなのに。
前の世界ではそれこそ、嘘をつかれたり、騙そうとする奴なんて腐るほど居たんだ。
今さらちょっと優しくされたからってこんなに傷つく必要なんて…………。
って…………、俺。
今傷ついてるのか?
そんなの随分と前に忘れ去った感情だと、思ってた…………。
「一気に話してしまうと混乱するだろうしと思って気を使ったつもりなんだが……いらない気遣いだったみたいだ。そんなに悲しい顔をするなリンタロウ。可愛い顔が台無しだ」
「「リン? どこか痛いのか?」」
「リンタロウ様?」
あぁ、いけない。
こんなに優しい人達に出会ったことないから、感傷的になってしまった。
「大丈夫どこも痛くない」
「「本当か?」」
「本当」
不安な顔にさせてしまった双子お兄ちゃんズの頭を撫でながら俺は笑みを作る。
ちゃんと笑えてるか自信ないけどね、こんなにも優しい人達にこんな不安な顔をさせちゃいけないよな。
「それで? 俺に何したんだよ」
俺は雰囲気を入れ替えていつも通りの話し方でイケメンに問う。
イケメンは俺がちょっと無理矢理に空気を戻そうとしているのが分かっているから、あえて何も言わないで俺に答えをくれた。
「…………俺がリンタロウにしたのは、この世界に適応できるようにリンタロウの身体を、君自身本来の魂の形に見合った然るべき本来の身体に創り変えるよう魔力で促したんだ」
「…………ほう?」
「異世界で一度創られた偽りの身体では魔力が発動できないまま、この世界に適応できないからこれは絶対にしなくてはいけないことだったんだ。身体が変わっていくせいで君は高熱を出したし、このことを言わなかったことで悲しい顔をさせてしまった。申し訳ないことをした。すまない」
んー、思っていたより大事だった。
じゃあ、俺が激痛に襲われてぶっ倒れ、寝込んだ理由はそれで、俺の身体は以前と同じ身体ではない別物に変わってしまったってことか。
身体が変わったと言われても俺自身変わったと感じるところは魔力が出せたくらいで、他は実感湧かないから何とも言えないけど。
イケメンは謝罪しながら俺の頬を撫でてくる。
とても優しい手つきだ。
ちょっと前なら、止めろ! と振り払うところだが…………。
これを振り払うと逆に俺が悪者になりそうだから、振り払わないでおいてやる。
今だけだからな。
「ふぅ、じゃあ俺は本来の魂に見合った身体に今は創り変わっていて? もしかしたら人間ではなく、その……最初の種族? の身体に変わってしまっているかもしれないってことか?」
「あくまで俺の推測だが……おそらくそうだと思われる。今までの異世界転移者はこの身体の創り変えが終わると、まず魔力に見合った外見の色に変わる者がほとんど。中にはリンタロウのように人族ではなく別種族に変わった者は多数いる。その場合は見た目の変化が大体分かりやすくあって、耳が長くなったり身長が変わったりなどするんだが、リンタロウは見た目が変わらなかったから違うと初めは思っていた。…………けど、今回は詳しく鑑定をしなければいけないと思う。しかし、種族まで鑑定できるほどの実力を持った者はなかなかいない」
「それほどの鑑定レベルを持った方でしたら、やはり都心部まで行かなくてはいけないと思います」
なるほどねー…………。
ベルトラン君が言う都心部にはどうせ行かなければいけないので、そこで鑑定してもらえるならちょどいいと思う。
けど…………。
……………………あぁー。
俺、人間じゃあないかもしれないのか―……。
何ともまあ、前の世界で俺の世話をしてくれていた噂好きのばあやが好きそうな展開だ。
京 凛太郎、今年十九歳。
どうやら人間じゃなくなったかもしれないです。
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