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様々な団員たちと美しい衣装

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  テントの中へと入ればそこは一変して仄暗いのかと思いきや、とても明るい空間で。
 今はお客様も居ないので、明かりはフル展開されており、中央のステージでは楽器隊が楽器のチューニングなどを行っているところであった。
 その他にもちらほらと、柔軟をして身体を解す者や筋肉トレーニングを行っている者の姿も見える。


「あ!ちょうどいいところに来たわねドール! 今度の衣装合わせしたいの! こっちに来てくれるかしら?」
「はーい! またね、マルク!」
「おろろーん。また後でなぁ」


 ドールはちょうどステージ上で他の役者達を衣装合わせをしていた、衣装係のリーダーであるエメリアに声をかけられてそちらへと向かう。
 エメリアは身長が二十センチもない小さい物作り妖精なのだ。
 彼女は常に首に小さな拡声器をぶら下げて、針を剣の様に腰に差しては美しい羽で飛び回り仕事をひゅんひゅんとこなしていくのだ。


「うーんちょっと腰回りのデザインが重すぎるわね……、あなたのはもう少し改良してみるわ!」
「了解。ありがとよエメリア」
「おはよう! エメリア、コウガ」


 今、ちょうどエメリアが作った衣装を着て見てもらっていたのは、猛獣使いのコウガ。
 コウガは黒くまっすぐと流れる長い髪と、キリっとした強さが見えるまつ毛の長い黒曜石のような瞳が美しい女性だ。話し方も、男性のようなのがまたカッコ良く、彼女の美しさを引き立てていた。
 ドールはそんなコウガに、憧れている大勢の中の一人でもある。


「おはよう! ドール。来たばかりで呼び出してごめんね」
「平気だよ! むしろコウガの衣装合わせ見れて嬉しい! 今回のもカッコ良いね!」
「おはよう、ドール。今日もよく通る良い声だ。エメリアがカッコ良く作ってくれているからな。そのおかげでカッコ良くさせてもらっているよ」
「いやいや、それほどでもー! あはは! あ、ドールの衣装は奥にあるのよ。ついて来てくれる? コウガはその衣装はもう脱いでもらって大丈夫。また調整しておくわ」
「わかった。よろしく頼む」
「じゃあ、ドール。ついて来てちょうだい」
「はーい!」


 コウガと別れ、エメリアとドールはステージ裏のテントへと入っていく。
 裏側のテントも、今は客入りではないので明かりがともされて明るい。
 そして、裏側にはもっと多くの人で溢れており、その中には先程までドールと共にいたジャックの姿もある。そのジャックの傍には、ジャックの指導役であるジョーカーの姿も。
 ジョーカーはスマートにスーツを着こなし、顔上半分をマスクで隠しているので素顔は分からないはずなのに眉目秀麗なのが醸し出ている青年だ。
 どうやら、ジャックはジョーカーより遅れてきたことを注意されている様子。


「全く、見習いの身でありながら……ん?おや、ドール。おはようございます」
「おはよう、ジョーカー。あまりジャックを責めないで上げて。途中で僕が寄り道しそうなところを注意して時間に遅れないように助けてくれたんだ」
「そうだったのですか。そうであればそうと言えばいいものを」
「…………言い訳するみたいで嫌だっただけだ」
「ふむ、今度からはもう少し素直になるように指導するのも加えなければ」
「余計なお世話だ!!」
「ジャックのその素直じゃないところも、うちの名物になってきてるからそのままでいいんじゃない? そんなことより! ドール! 早くこっちに来て衣装を着てみてちょうだい! 今回のは自信作なんだから」


 やはり、ここでもジャックの素直でない所が話題に。
 これは、このサーカス団の中ではジャックの存在が無くてはならないものになってきているからで。
 そんなジャック、実はこのサーカス団に入ったのは半年前というごく最近の出来事。それ故、ジャックはまだまだ、ステージに立ったことのない見習い。しかし、今回のステージでピエロとして出演できることになっているのである。
 だから、ジョーカーは自分より遅れてきたジャックに厳しい言葉をかけていた。だがちょうどその時にドールが見かねて仲立ちに入った事により、険悪な雰囲気は一掃されたので周りも一安心。
 事情を知ったジョーカーはそれ以上、ジャックに言い含めることをやめて衣装を試着しに行ったドールを見送り、さっそくジャックの指導へと入るのであった。

 裏のテントのさらに奥。
 そこにエメリアの作業場がある。

 
「ささ! 見てちょうだい! 今回の力作を!」


 エメリアはそう言うと、一つのトルソーに布がかけてあったのを勢い良く取り払った。
 すると、見えたのは美しい純白で仕上げられている一着の衣装であった。
 細部も純白や透明、七色に輝くビジューで仕上げられていてとても美しい。


「わぁ! 綺麗!! こんなに素敵な衣装、僕が着るの?」
「そうよ! 今回のステージのイメージとあなたに合うようにピッタリとこだわって作ったんだから!」


 ドールの顔前を飛びながら、えっへんと興奮気味に話すエメリア。
 そんなエメリアにつられて、ドールも素敵な衣装を見て大興奮。
 しかし、こんな素敵な衣装を自分が着て見劣りしないかも不安である。


「さあ! 早速来てみてちょうだい!」
「う、うん! 着こなせるか分からないけど、エメリアが作ってくれたんだもん。着てみるよ!」


 こうして美しい純白の衣装を手に取ってドールは試着室へと入っていくのであった。





 
 
 

 
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