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学園祭一日目が始まった件①
しおりを挟む学園祭当日──
僕は余り集中的できず、やっと仕上げた最後の小道具をクラスの委員長に手渡した。
「染谷君、お疲れ様でした」
委員長が労いの言葉をかけるが僕の心はここには無い。
手に持つチラシが原因だ。
『後夜祭スペシャルゲスト篠田愛弓スペシャルライブ』
自作のチラシの通り、学園祭の後にある後夜祭でこの高校に篠田愛弓ことあゆたんがやってくるのだ!
高校最後の夏にあゆたんに会えなかった悲しみに僕がオファーした。
僕の熱意と情熱があゆたんと事務所を動かしたのだ!
勿論ただではない。
ちゃんとギャランティーが発生する。
それは僕の貯金とオタク仲間の宏と浩司が喜んで協力してくれた。
それでも足りない分は頭を下げて出世払いで親から借りた。
宏は「我の貯金がー」と騒いでいたけど大丈夫?だろう。
あゆたんがこの高校にやってくるのが決まって僕の日々は慌ただしくなった。
勝手にオファーを出して決めてしまったのでこの事を学園祭実行委員に直談判しに行った。
実行委員の皆さんも最初は困惑していたけど僕の熱意と情熱に心動かされたのだろう、最後は納得してくれた。
実行委員長は僕の去り際に「大人しいと思っていたけど、こんな性格だったんだね。正直君が怖い」と言っていたけど首を縦に振っていたので納得?してると思う。
僕の頭はあゆたんの事でいっぱいで小道具作り処ではなかったけど北澤さんも協力してくれたのでギリギリ間に合った。
「賢がおかしくなった」としきりに言っていた北澤さんだけどちゃんと小道具は仕上げられて安心した表情を浮かべていた。
北澤さんには本当に感謝しかない。
北澤さんがいなければ間に合わなかっただろう……
「よーし!あゆたんの控え室の準備でもするかー!」
僕は喜びを表現するように大声を出して走り出した。
◇◇◇
「本当にギリギリ……」
疲れきった私は小道具作りをしていた教室で項垂れていた。
タメ息を吐き、賢の出ていった方を見つめる。
小道具作りを半分ぐらい仕上げたところで「あゆたんはー、あゆたんはー」と煩くなった賢に振り回されて本当に疲れた。
しまいにはあの自作した笑顔のあゆたんTシャツを着だして、私にも薦めてくる始末。
賢は心ここに有らずで全く手を動かさないからもう間に合わないと思ってしまた。
学園祭は賢と回ろうと思っていたのに、賢は「あゆたんの準備があるから」と言ってさっさと何処かへ行ってしまった。
私はこれからそんな賢にずっと付き合って行くのかと思ったら不安になったけど、
『私に夢中にさせてしまえばいい』
そう思えばあゆたんの事が少しだけ気にならなくなった。
(久しぶりに化粧でもしようかな)
そして私は誰もいない教室を出て行った。
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