23 / 54
転校生とお昼ご飯を食べた件①
しおりを挟む中庭の木の下にやってきた僕達はお弁当を食べる準備を始めた。
いつもと違うのは、有坂くんが一緒にいる事で周りにいる女子達のひそひそ話が聞こえている事だ。
男子の呪いのこもった視線は慣れたらけど女子の視線は慣れない。
僕はタメ息を吐いて帰りたいと思った。
◇◇◇
私達がここに着くとベンチが埋まっていたので私はいつものように地面に敷くシートをお弁当の入った袋から取りだそうとした時、有坂くんが私にハンカチを手渡す。
「あ、ありがとう」
なぜハンカチを渡してきたのかわからない私はとりあえずお礼を言ったけど、ハンカチを持ったまま立っていた。
このハンカチはなに?
私にどうしろと……
◇◇◇
すでにベンチは埋まっていて木の下で準備をしている彼女はそのまま地べたに座るのだろうか?
それだと彼女が汚れてしまうので、俺は彼女にハンカチを差し出した。
彼女は俺の差し出したハンカチを手にして固まっているけど……
「それを敷いて座ったら汚れないから」
「はぁ…」
固まる彼女に俺がそう言うと彼女はそんな返事をした。
◇◇◇
シートを出しそびれた私はハンカチを持ったまま作ってきた弁当を取り出して地べたに並べた。
弁当を並べ終えた私はとりあえずハンカチを敷くとそれに座った。
「そうだ!自己紹介がまだったね、有坂尚輝です。皆の名前を聞いてもいいかな?」
有坂くんの言葉にそれぞれが自己紹介をした後に有坂くんは私の作ったお弁当を見た。
「凄い、これ手作り?」
「そうだけど?」
並べられた私の作った弁当を見た有坂くん。
「食べてもいい?」
そんな事を言う有坂くんよりも先に賢に食べてほしんと思うけど首を縦に振った。
有坂くんはほうれん草のお浸しに箸を伸ばし口に運ぶと「ウマイ!」と叫んだ。
それから有坂くんは私の作ったおかずを食べながら私に話しかける。
「滝川さんは料理じょうずだね」
「ありがとう……」
そんな事は有坂くんよりも賢に言ってほしいんだけど
◇◇◇
杏と有坂くんのやり取りを私はじっと見ていた。
有坂くんは自己紹介の後、私達を見る事もなくずっと杏に話しかけている。
杏は嫌そうにしてるけど有坂くんには頑張ってほしい……
◇◇◇
お弁当も食べ終わり、私は「ちょっと離れるね」と皆に声をかけて立ち上がった。
そのままトイレに行き、出てくると美織ちゃんがいて、私に話しかけてきた。
「ねぇ紗枝ちゃん、どう思う?」
「えっと、なにが?」
いきなりそんな事を言われても何の事だかわからない私は首を傾げた。
「ごめん、ごめん杏の事だよ」
「杏ちゃんの事?何かあったの?」
「ほら、有坂くん…」
「有坂くん?」
「そうそう、有坂くん」
「有坂くんが何かあったの?」
突然有坂くんと言われても私はちんぷんかんぷんだよ……
「ご飯食べてる時、ずっと杏ばかりと喋って私達には話しかけてもこなかったでしょ?」
「確かに…」
美織ちゃんに言われて気がついたけどお弁当を食べている時、確かに有坂くんは私達に視線を向ける事も喋りかけることもなかった。
「でね、有坂くんは絶対、杏の事が好きだと思うの!」
「はぁ…」
「あの二人お似合いじゃない?」
「確かに二人とも美男美女だけど…」
「だよね、だよね」
美織ちゃんが何が言いたいのかわからない私が返答に悩む中、美織ちゃんは話を続ける。
「でね、二人をくっつけようと思うんだ」
「二人をくっつける?」
「そう!だから紗枝ちゃんも協力して!」
「そんな事言われてもお互いの気持ちもあるし協力っていっても何するかわからないし…」
私の曖昧な返事にハッとした表情を見せる美織ちゃん
「ごめん、今のは忘れて」
と言ってどこかに行ってしまった。
残された私は、美織ちゃんの言ってた事を少し考えて、美織ちゃんの気持ちはわかるなぁと思った。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】箱根戦士にラブコメ要素はいらない ~こんな大学、入るんじゃなかったぁ!~
テツみン
青春
高校陸上長距離部門で輝かしい成績を残してきた米原ハルトは、有力大学で箱根駅伝を走ると確信していた。
なのに、志望校の推薦入試が不合格となってしまう。疑心暗鬼になるハルトのもとに届いた一通の受験票。それは超エリート校、『ルドルフ学園大学』のモノだった――
学園理事長でもある学生会長の『思い付き』で箱根駅伝を目指すことになった寄せ集めの駅伝部員。『葛藤』、『反発』、『挫折』、『友情』、そして、ほのかな『恋心』を経験しながら、彼らが成長していく青春コメディ!
*この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件・他の作品も含めて、一切、全く、これっぽっちも関係ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
DECIDE
yuri
青春
中学生時代、イケメンで成績優秀、スポーツ万能という非の打ち所がない完璧な少年がいた。
少年はオタクだった。嫌いなキャラは『何でもできてイケメンでモテる主人公』
そしてある日気付く「これ…俺のことじゃね?」そして決心した。
『高校生活では、目立たないように過ごす!」と、思っていたのに…
おそらくその辺に転がっているラブコメ。
寝癖王子
青春
普遍をこよなく愛する高校生・神野郁はゲーム三昧の日々を過ごしていた。ルーティンの集積の中で時折混ざるスパイスこそが至高。そんな自論を掲げて生きる彼の元に謎多き転校生が現れた。某ラブコメアニメの様になぜか郁に執拗に絡んでくるご都合主義な展開。時折、見せる彼女の表情のわけとは……。
そして、孤高の美女と名高いが、その実口を開けば色々残念な宍戸伊澄。クラスの問題に気を配るクラス委員長。自信家の生徒会長……etc。個性的な登場人物で織りなされるおそらく大衆的なラブコメ。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
M性に目覚めた若かりしころの思い出
なかたにりえ
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる