30 / 53
No.30
しおりを挟むポルターマウスは十年程で寿命を向かえ勝手に死んでしまうのだが、希に十年過ぎても生き続けるポルターマウスがいる。
十年を越えて生き続けたポルターマウスは獰猛さが増し、家畜や小動物時には魔物すら襲って食べてしまう。
そしてどんどん巨大化したポルターマウスはデビルマウスに姿を変え危険度が羽上がる。
デビルマウスは体長が十五メートルになりポルターマウスの面影は消え失せる。
その体はドス黒い先の鋭い毛が硬い皮膚を覆い赤い目が恐怖を掻き立てる。
動きはポルターマウスとは比べ物にならないほど速く、硬い皮膚とドス黒い毛が物理攻撃を阻み魔法は効かない。
最強のネズミがいたら面白いと思って考えた魔物だが、学生のラミラスが倒せる展開が浮かばず慌てて弱点を追加した。
デビルマウスの背中の真ん中に五百円程の大きさで毛が無い部分があり、そこだけ皮膚が柔らかくなっている。
そこに物理攻撃で傷を付け魔法を打ち込めば倒せる。
しかしそれが本当に大変だった。
ポルターマウスの討伐依頼を受けた時に俺は一度デビルマウスと戦った事がある。
弱点を狙って攻撃をしても動きが速すぎるし、自分の弱点を隠すように動くから中々攻撃が当たらなかった。
戦いの最中に「俺のバカ!」と何度叫んだだろうか。
傷を負ってボロボロになりながら何とか倒したが、本当に死ぬかと思った。
「それにしてもコイツはデカ過ぎる」
声に出してしまう程俺の目の前にいるデビルマウスは大きかった。
俺が倒したデビルマウスより一回りぐらい大きくて恐ろしい程の殺気を放っている。
パメラ様が震えて動けなくなるのも分かる。
デビルマウスは狙った獲物は逃さない。
だから逃げる事は不可能だろう。
ならば戦う以外の道は無い。
俺はゴグリと唾を飲んで覚悟を決めた。
「パメラ様はそこの岩陰に隠れて僕の合図でアイツに向けて魔法を放って下さい!」
「ラ、ラグーはどうするの?」
「俺はアイツを引き付けて弱点に攻撃を仕掛けます」
「そんな…、ラグーが、ラグーが死んじゃう……」
涙を浮かべるパメラ様に俺は笑顔を向けた。
「大丈夫です。僕は死にませんから、必ず生きて帰ります。それにまだパメラ様からのキスを頂いていないので死ねませんよ」
「バババババカ!ラグーのバカ!こんな時にななな何言ってるのよ!」
顔を真っ赤にしたパメラ様は本当に可愛いかった。パメラ様の為にも死ぬ訳にはいかない。
「よし、それではパメラ様行ってきます!」
「ラグー気を着けて…生きて帰れたらキス……しよ」
「約束ですよ、では!」
恥ずかしそうにするパメラ様に俺は笑顔で答えた。
最後の方はすごく小さな声だったがちゃんと聞こえた。
これで本当に死ぬ訳にはいかなくなった。
美女からのキスは最高の報酬だ。
俺は体に魔力を循環させ身体強化をしてデビルマウスに向かって駆け出した。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
裏アカ男子
やまいし
ファンタジー
ここは男女の貞操観念が逆転、そして人類すべてが美形になった世界。
転生した主人公にとってこの世界の女性は誰でも美少女、そして女性は元の世界の男性のように性欲が強いと気付く。
そこで彼は都合の良い(体の)関係を求めて裏アカを使用することにした。
―—これはそんな彼祐樹が好き勝手に生きる物語。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる