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No.10
しおりを挟むハリスside~
「ハリス様、紅茶をご用意しましょうか?」
「頼む」
図書館から帰ってきた私は自室にこもり書類整理をしている。
領内から集まってくる書類は膨大で父一人では処理しきれない。
デリー公爵領内の書類整理を通して内情を把握し、早急に対応しなくてはいけない物とそうでない物に分け、印を押していく。
処理する書類は膨大だが、いずれ受け継ぐデリー公爵領主になるための勉強と思えば辛くはない。
気を聞かせてメイドが入れてくれた紅茶を口にして窓を開けた。
冷たい夜風がいい気分転換になる。
窓を閉め、机に戻ると背伸びをした。
そして、羽ペンにインクをつける。
(それにしても、図書館で出逢ったラグーさんは……)
ラグーさんの顔を思い出して笑顔になってしまう。
たまたま図書館での仕事があった為、図書館に行ったのが幸運だった。
閑散とした図書館のテーブルで本を読むラグーさんは夕日に照らされてキラキラと輝いていた。
私はその姿を見た途端に雷に打たれた感覚がしてラグーさんに目を奪われた。
平民に貴族が声を掛けてしまうのは驚かせてしまうとは思ったが声を掛けずにはいられなかった。
私が声を掛けると案の定驚いてラグーさんが本を落としてしまったのには申し訳ない気持ちになったがきちんとフォローしたので大丈夫だろう。
何故なら、一ヶ月後にもう一度会う約束をしたのだから……
見たところ私よりも年下で、妹のパメラと同じぐらいの年齢のラグーさんは年相応で可憐で可愛らしかった。
(私も人の事は言えないな……)
平民に骨抜きにされた友人を思い出す。
婚約者のいなかった友人はたまたま出逢った平民の女性と恋に落ちた。
友人に平民との恋を相談された時は何故?と思ったが今なら友人の気持ちがわかるきがする。
「今度友人に相談してみるか」
私は呟き、一ヶ月後を楽しみに机に山積みになった書類を片付けていった。
◇◇◇
「ラグーどうしたの?」
急にブルブルと体を震わせた俺に声をかけたマリアお姉ちゃん
「いや、なんか背中に悪寒が……」
「大丈夫?風邪?明日も仕事だよね?体調管理はしっかりしなきゃダメだよ」
「うん、わかってるよ、うっ、また悪寒が……」
「もぉ、今日は早く寝なさい」
「わかったよ、マリアお姉ちゃんおやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
俺は部屋に戻りそのままベッドに入った。
本当に風邪なら明日の仕事に支障が出る。
(今日の魔力操作は中止にしよう)
魔力操作をせずに寝ると決めた俺は目を閉じた。
「うっ、また悪寒が……」
目を閉じたまま呟くと俺は夢の世界へダイブした。
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