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14.身代わり侍女

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「そうよ! 私の姉だった、あの醜い豚! 王女殿下に追い出されて野垂れ死ににしたから、死に際に呪いをかけたに決まっているわ!」

「そうだ、あの豚……せっかく下女に産ませたというのに……役立たずの恩知らずが……」

「使えるからと我慢して優しくしてやれば、付け上がって……恩知らずめ」

 中年の男女も、太った少女に同調するように言う。

「だから! あんたが王女殿下と結婚していればこんなことにならなかったのよ!」

「そうだ! 責任を取りやがれ!」

 太った少女と中年男性は叫ぶ。

「なるほど……そういうことか……」

 ベルトランは静かに呟く。口元には冷たい笑みが浮かんでいた。

「な、何? なんで笑っているのよ!?」

 ベルトランの表情を見た少女は、怯えたような声を上げる。
 しかし彼は意に介さず言葉を続けた。

「つまり、お前たちは、王女の身代わり侍女として娘を差し出したというわけだな」

 ベルトランは冷たい視線で三人を睨む。

「身代わり侍女?」

 太った少女は首を傾げる。
 しかし中年の男女はハッとした表情を浮かべた。

「……そんな、まさかこれが身代わりのせいだというのか? 王女が生まれたとき、死んでも構わない侍女を密かに募集しているという話を聞き、下女に産ませたのに……」

 中年男性は愕然としたように呟く。

「そんな……八つ当たりで殺されるというわけではなかったの……? まさか、そんなことが……」

 中年女性も呆然とした様子で呻く。

「まさか、知らなかったのか。王家に伝わる呪術で、身代わりの侍女や従者に王族の受けた災難を肩代わりさせる。そのために、身代わりの侍女や従者を密かに募集していたんだ」

 ベルトランはそう言ってため息をつく。

「そ、そんな……まさか、これも王女の身代わりのせい……?」

 太った少女は己の身体を眺めながら、震える。

「だろうな。よかったな、お前がさっさと王女を見限って逃げてきたから、まだ生きていられるんだ。もしお前が王女の傍に残っていたら、今頃は死んでいただろうな」

「そんな……だったら、どうしてあの豚……お姉さまは何年も平気だったのよ! お姉さまの時は何もなかったなんて、ずるい! ずるいわ!」

 地団太を踏みながら、太った少女は叫ぶ。

「はっ、本当に愚かだな。前任者が平気だったわけではない。ただ、彼女には聖女の素質があったために、無意識に浄化していたのだろう。何年も積もっていったため、浄化しきれず表面に出てきていたようだったが……」
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