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03.さらに利用してやる
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自室にて、レイチェルは蘇ってきた記憶を整理する。
前世の自分は、日本で暮らしていたという記憶がある。
そして、この世界は前世で自分が書いていた小説の世界だというのも思い出せた。
どうやら前世の妹は、今世でも妹として転生してきたらしい。
「まさか、小説のキャラにそっくりそのまま生まれ変わるとはね……」
苦笑しながら呟いてみる。
本当に不思議な気分だ。
しかも、本来の主人公であるレイチェルになったのだから、運命というものを感じずにはいられない。
「これからどうすればいいのかしら……」
前世の記憶を取り戻したといっても、レイチェルにとって今世は現実なのだ。
小説の中のキャラクターとして生きているわけではない。
ただ、ケイティはそう思ってはいないようだった。
「創造主気取りで、調子に乗っているみたいだったけど……」
思い返すだけで、腹が立ってくる。
何でも自分の思いどおりになると勘違いしているようだが、それは大きな間違いだ。
妹は小説を完結させたと思っているようだけれど、まだ終わっていない。
あの話には、続きがあるのだ。
しかも、まだ出てきていない設定もあり、妹が知らない情報もある。
「あんたの思いどおりにはならないわよ」
誰にともなく宣言すると、レイチェルはペンを手に取った。
思い出した小説のストーリーや設定を紙に書き出していく。
「……きっと、お父さまやお兄さまの態度が変わったのは、ケイティが魅了の腕輪を身に着けているせいだと思う」
レイチェルは独り言のように呟いた。
小説では、レイチェルが商人から献上された腕輪だったが、身に着けることはなかった。
それをケイティが奪い取って、身に着けてしまう。
そのときは誰も魅了の効果を知らず、後から知ることになるのだ。
だが、今は違う。
ケイティはすでに腕輪を身に着けていて、それがどんな力を持っているのか知っている。
小説のストーリーよりも早く手に入れているので、使い方も心得ているというわけだ。
おそらく、自分から商人に接触したのだろう。
「馬鹿ね……これが後々、糾弾される原因になるというのに」
いずれケイティは自分で蒔いた種によって窮地に陥ることになる。
しかし、今の本人はそれに気づくことなく、得意になっていることだろう。
「そもそも、グリフィン殿下との婚約なんて、こっちから破棄してやりたいくらいだわ。あんな浮気者と結婚するのはごめんだもの」
レイチェルは眉根を寄せながら、ため息をつく。
記憶が蘇った今、グリフィンと結ばれたいなどという気持ちはまったくない。
むしろ、妹のケイティとくっついてくれたほうが、すっきりするというものだ。
「まあ、それだと国が大変なことになるんだけど……」
小説の展開を思い出し、レイチェルはまたため息をついた。
この国を守る結界を強化する儀式が毎年行われているのだが、それには王家の血が必要とされている。
そのため、王となる者は血を保つよう、四大公爵家の娘を妻にする決まりとなっているのだ。
だからこそ、レイチェルが王太子の婚約者として選ばれたのである。
しかし、小説の続きではグリフィンとケイティが臨んだ儀式が失敗して、王国に災いが起こることになっていた。
「だって、グリフィン殿下は本当は……」
そこまで言いかけて、レイチェルは口をつぐんだ。
「いけない、これは誰にも言えないことだったわ」
前世の記憶を取り戻して、つい口走ってしまったが、言ってはならないことだ。
小説の設定を知っているのは、作者であるレイチェルだけなのである。
「……そういえば、前世ではあの後どうなったのかしら?」
ふと疑問に思う。
前世では盗作を問い詰めて姉妹喧嘩になったはずだが、それが思い出せる最後の記憶なのだ。
生まれ変わっているのだから、亡くなっているのだろう。だが、それがいつどこでなのかわからない。
もしかしたら、その後すぐ事故か何かで亡くなったのかもしれないし、天寿を全うしていた可能性もある。
「うーん……よく考えたら、小説周りのことしか覚えていないわね」
前世での生活がどうだったとか、家族関係がどうだったという記憶は曖昧だ。
妹のことははっきり思い出せたが、他の人たちについてはぼんやりとしたイメージしかない。
「……考えても仕方がないわ。とりあえず、小説どおりにならないようにしないとね……」
レイチェルは自分に言い聞かせるように呟く。
このまま放っておいたら、小説のストーリーのとおりになりかねない。
ケイティは自分の都合の良い展開になるように進めているつもりだろう。レイチェルを悪役令嬢にして、自分はヒロイン気取りだ。
だが、このまま話が進めば、彼女こそ破滅へ向かって一直線となる。
「でも、どうすればいいのかしら……」
レイチェルは考え込む。
小説のストーリーそのままになれば、婚約破棄の後に色々あって、ケイティは処刑されてレイチェルが再びグリフィンの婚約者となる。
そう決まってはいたが、気に入らなくて筆が進まなかった展開でもある。
「あの子に本当のストーリーを教えて、改心させる? ううん……自分に都合の悪いことなんて信じようとしないでしょうね……」
妹の性格を思い出し、レイチェルは頭を抱えた。
自分が書いたと思っている小説のストーリーを信じ込んでいる上に、傲慢で自己中心的だ。
そんな人間が素直に話を聞くとは思えない。
「やっぱり、私が頑張るしかないのよね。グリフィン殿下と結婚せず、災いも防ぐのよ。この国のためにも……。ストーリーを利用しようとするあの子を、さらに利用してやるんだから!」
拳を握り締めると、レイチェルは力強く宣言した。
前世の自分は、日本で暮らしていたという記憶がある。
そして、この世界は前世で自分が書いていた小説の世界だというのも思い出せた。
どうやら前世の妹は、今世でも妹として転生してきたらしい。
「まさか、小説のキャラにそっくりそのまま生まれ変わるとはね……」
苦笑しながら呟いてみる。
本当に不思議な気分だ。
しかも、本来の主人公であるレイチェルになったのだから、運命というものを感じずにはいられない。
「これからどうすればいいのかしら……」
前世の記憶を取り戻したといっても、レイチェルにとって今世は現実なのだ。
小説の中のキャラクターとして生きているわけではない。
ただ、ケイティはそう思ってはいないようだった。
「創造主気取りで、調子に乗っているみたいだったけど……」
思い返すだけで、腹が立ってくる。
何でも自分の思いどおりになると勘違いしているようだが、それは大きな間違いだ。
妹は小説を完結させたと思っているようだけれど、まだ終わっていない。
あの話には、続きがあるのだ。
しかも、まだ出てきていない設定もあり、妹が知らない情報もある。
「あんたの思いどおりにはならないわよ」
誰にともなく宣言すると、レイチェルはペンを手に取った。
思い出した小説のストーリーや設定を紙に書き出していく。
「……きっと、お父さまやお兄さまの態度が変わったのは、ケイティが魅了の腕輪を身に着けているせいだと思う」
レイチェルは独り言のように呟いた。
小説では、レイチェルが商人から献上された腕輪だったが、身に着けることはなかった。
それをケイティが奪い取って、身に着けてしまう。
そのときは誰も魅了の効果を知らず、後から知ることになるのだ。
だが、今は違う。
ケイティはすでに腕輪を身に着けていて、それがどんな力を持っているのか知っている。
小説のストーリーよりも早く手に入れているので、使い方も心得ているというわけだ。
おそらく、自分から商人に接触したのだろう。
「馬鹿ね……これが後々、糾弾される原因になるというのに」
いずれケイティは自分で蒔いた種によって窮地に陥ることになる。
しかし、今の本人はそれに気づくことなく、得意になっていることだろう。
「そもそも、グリフィン殿下との婚約なんて、こっちから破棄してやりたいくらいだわ。あんな浮気者と結婚するのはごめんだもの」
レイチェルは眉根を寄せながら、ため息をつく。
記憶が蘇った今、グリフィンと結ばれたいなどという気持ちはまったくない。
むしろ、妹のケイティとくっついてくれたほうが、すっきりするというものだ。
「まあ、それだと国が大変なことになるんだけど……」
小説の展開を思い出し、レイチェルはまたため息をついた。
この国を守る結界を強化する儀式が毎年行われているのだが、それには王家の血が必要とされている。
そのため、王となる者は血を保つよう、四大公爵家の娘を妻にする決まりとなっているのだ。
だからこそ、レイチェルが王太子の婚約者として選ばれたのである。
しかし、小説の続きではグリフィンとケイティが臨んだ儀式が失敗して、王国に災いが起こることになっていた。
「だって、グリフィン殿下は本当は……」
そこまで言いかけて、レイチェルは口をつぐんだ。
「いけない、これは誰にも言えないことだったわ」
前世の記憶を取り戻して、つい口走ってしまったが、言ってはならないことだ。
小説の設定を知っているのは、作者であるレイチェルだけなのである。
「……そういえば、前世ではあの後どうなったのかしら?」
ふと疑問に思う。
前世では盗作を問い詰めて姉妹喧嘩になったはずだが、それが思い出せる最後の記憶なのだ。
生まれ変わっているのだから、亡くなっているのだろう。だが、それがいつどこでなのかわからない。
もしかしたら、その後すぐ事故か何かで亡くなったのかもしれないし、天寿を全うしていた可能性もある。
「うーん……よく考えたら、小説周りのことしか覚えていないわね」
前世での生活がどうだったとか、家族関係がどうだったという記憶は曖昧だ。
妹のことははっきり思い出せたが、他の人たちについてはぼんやりとしたイメージしかない。
「……考えても仕方がないわ。とりあえず、小説どおりにならないようにしないとね……」
レイチェルは自分に言い聞かせるように呟く。
このまま放っておいたら、小説のストーリーのとおりになりかねない。
ケイティは自分の都合の良い展開になるように進めているつもりだろう。レイチェルを悪役令嬢にして、自分はヒロイン気取りだ。
だが、このまま話が進めば、彼女こそ破滅へ向かって一直線となる。
「でも、どうすればいいのかしら……」
レイチェルは考え込む。
小説のストーリーそのままになれば、婚約破棄の後に色々あって、ケイティは処刑されてレイチェルが再びグリフィンの婚約者となる。
そう決まってはいたが、気に入らなくて筆が進まなかった展開でもある。
「あの子に本当のストーリーを教えて、改心させる? ううん……自分に都合の悪いことなんて信じようとしないでしょうね……」
妹の性格を思い出し、レイチェルは頭を抱えた。
自分が書いたと思っている小説のストーリーを信じ込んでいる上に、傲慢で自己中心的だ。
そんな人間が素直に話を聞くとは思えない。
「やっぱり、私が頑張るしかないのよね。グリフィン殿下と結婚せず、災いも防ぐのよ。この国のためにも……。ストーリーを利用しようとするあの子を、さらに利用してやるんだから!」
拳を握り締めると、レイチェルは力強く宣言した。
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