12 / 16
(三)‐6
しおりを挟む
「ところで絵は、段ボールの中ですか?」
「いえ、今日来た新人に渡しました」
大橋の問いに上原が答えた。
「そういえば、あいつはどこに行った」
鉢山が上原に聞いた。
「さあ。さっきまでいましたけど」
上原はコンテナの扉の所まで来て左右を見回した。鉢山も上原の所まで来て見回した。
「どこにもいないぞ」
「こちらに来るときにすれ違ったりしませんでしたか?」
鉢山は大橋に聞いた。
「いや。この倉庫に入ってからは誰ともすれ違っていない。敷地に入ってこの倉庫に来るまでの間には何人かすれ違ったが」
「ちなみに、その新人って、どんな格好をしていました?」
小柄な東山が聞いた。
「グレーのスーツ姿の若い女性です。持ち物はハンドバッグを肩に掛けていた程度だったので、絵を持っていたらすぐにわかりそうですが」
「すれ違っていないぞ、そんな人間には。フォークリフトに乗った初老の作業員と、スーツ姿の中年男性の二人くらいだな」
「じゃあ、須賀とやらは一体どこへ行っちまったんだ」
「それで、絵は?」
鉢山の言葉を遮るように、大橋が語気を強めて尋ねてきた。
「その新人が持ってます」
上原がそう言うと、大橋は「すぐに探せ!」と怒鳴った。「恐らくそいつが広尾だ!」
鉢山たち四人はすぐさまコンテナから出た。
「お二人は倉庫の中を頼みます、自分らは外を見てきます」
大橋が指示を出すと、県警の二人は倉庫の外へ駆けて行った。鉢山と上原は同時に「了解」と答えてから左右に分かれて倉庫の中の捜索にとりかかった。
(続く)
「いえ、今日来た新人に渡しました」
大橋の問いに上原が答えた。
「そういえば、あいつはどこに行った」
鉢山が上原に聞いた。
「さあ。さっきまでいましたけど」
上原はコンテナの扉の所まで来て左右を見回した。鉢山も上原の所まで来て見回した。
「どこにもいないぞ」
「こちらに来るときにすれ違ったりしませんでしたか?」
鉢山は大橋に聞いた。
「いや。この倉庫に入ってからは誰ともすれ違っていない。敷地に入ってこの倉庫に来るまでの間には何人かすれ違ったが」
「ちなみに、その新人って、どんな格好をしていました?」
小柄な東山が聞いた。
「グレーのスーツ姿の若い女性です。持ち物はハンドバッグを肩に掛けていた程度だったので、絵を持っていたらすぐにわかりそうですが」
「すれ違っていないぞ、そんな人間には。フォークリフトに乗った初老の作業員と、スーツ姿の中年男性の二人くらいだな」
「じゃあ、須賀とやらは一体どこへ行っちまったんだ」
「それで、絵は?」
鉢山の言葉を遮るように、大橋が語気を強めて尋ねてきた。
「その新人が持ってます」
上原がそう言うと、大橋は「すぐに探せ!」と怒鳴った。「恐らくそいつが広尾だ!」
鉢山たち四人はすぐさまコンテナから出た。
「お二人は倉庫の中を頼みます、自分らは外を見てきます」
大橋が指示を出すと、県警の二人は倉庫の外へ駆けて行った。鉢山と上原は同時に「了解」と答えてから左右に分かれて倉庫の中の捜索にとりかかった。
(続く)
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
影の多重奏:神藤葉羽と消えた記憶の螺旋
葉羽
ミステリー
天才高校生・神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に平穏な日常を送っていた。しかし、ある日を境に、葉羽の周囲で不可解な出来事が起こり始める。それは、まるで悪夢のような、現実と虚構の境界が曖昧になる恐怖の連鎖だった。記憶の断片、多重人格、そして暗示。葉羽は、消えた記憶の螺旋を辿り、幼馴染と共に惨劇の真相へと迫る。だが、その先には、想像を絶する真実が待ち受けていた。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
ファクト ~真実~
華ノ月
ミステリー
主人公、水無月 奏(みなづき かなで)はひょんな事件から警察の特殊捜査官に任命される。
そして、同じ特殊捜査班である、透(とおる)、紅蓮(ぐれん)、槙(しん)、そして、室長の冴子(さえこ)と共に、事件の「真実」を暴き出す。
その事件がなぜ起こったのか?
本当の「悪」は誰なのか?
そして、その事件と別で最終章に繋がるある真実……。
こちらは全部で第七章で構成されています。第七章が最終章となりますので、どうぞ、最後までお読みいただけると嬉しいです!
よろしくお願いいたしますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる